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給食後も牛乳を飲まされ…学校の過剰な「完食指導」はなぜ起きる? 会食恐怖症に発展も…

完食指導が原因の会食恐怖症とは?

山口健太さんの著書「会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと」
山口健太さんの著書「会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと」

 過剰な完食指導の大きな問題点は、大人になって“後遺症”が出るケースがあることだ、と山口さんは指摘します。会食恐怖症です。

Q.会食恐怖症とは。

山口さん「人前でご飯を食べることへの不安や恐怖が大きく、『毎回の会食で吐き気がこみ上げる』『会食の機会を想像しただけで不安で眠れない』『友達同士でよく遊ぶのにご飯を一緒に食べるのだけは無理』などの症状が出る精神疾患です。症状の出方や程度は人によってさまざまで社交不安症の一つに分類されます。子どもの頃の過剰な完食指導がトラウマとなって発症する人が多いです」

Q.当事者の悩みは何ですか。

山口さん「一番の悩みは、周りの人たちに理解してもらえないことです。私自身もかつて当事者でしたが、『何で自分だけがこんなことに悩むんだろう』という絶望感が一番強かったです。

『全然食べないから一緒に居てもつまらない』と言われることもありましたが、こちらとしては、『みんなと一緒に楽しく食べたくても、身体が言うことを聞かずに食べられないから困っている』という状態で、悪気はないのです」

Q.会食恐怖症について、どのような人から、どんな相談が寄せられますか。

山口さん「当事者からの相談が一番多いですが、保護者やパートナー、保育園や学校の先生からも相談が届きます。当事者からの相談は、やはり、会食恐怖症の克服方法や『近々ある会食をどう乗り切ったらよいか』という内容がほとんどです。

保護者やパートナーの場合は『どのようにサポートしたらよいのか』という相談がメインですが、『学校の先生が給食を食べられないうちの子をのけ者にする』という相談が届くこともあります。

保育園や学校の先生は割合としては少ないのですが、『すぐに吐いてしまう子や食べない子がいるけど、どうしたらよいのか。これは会食恐怖症なのか』というものが多いです」

Q.会食恐怖症を克服・軽減するために、どのようなことをすればよいですか。

山口さん「会食で何が怖いのかをしっかり捉えて、その誤った考え方を正していくこと、段階的にハードルを上げて練習すること、この2つが大切です。

例えば、『残したら怒られるかもしれない』という怖さがある人の場合だと『人前でしっかり食べる練習』よりも『人前で食べ残しをする練習』の方が大切になります。つまり、この場合の練習のゴールは『残したら怒られるかもしれない』という考え方を改め、『食べ残しをしたとしても別に大丈夫なんだ』と思うことです。

この他、『前向きな考え方を身につけること』や『普段のストレス状態』が症状の出やすさにも関わってきます。協会の講座・カウンセリングでは、そのような部分もトータルでケアしながら克服に導いています」

 協会が実施したアンケートでは、会食恐怖症当事者の62.5%が「学校や家庭における『完食指導』が会食恐怖症の発症のきっかけとなった」と回答しています。あなたの周囲で「過剰な完食指導」が行われていませんか。

(オトナンサー編集部)

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