夫が家出し、2子と暮らす妻が選ぶべきは「今すぐ離婚」か「とりあえず別居」か(下)
離婚の決断は「お金」だけではない
「娘、息子のことを考えると離婚した方がいいのでしょうか?」
そんなふうに智子さんは頭を悩ませますが、現在、「別居を続けて離婚しないか」「別居をやめて離婚するのか」の選択権は智子さんが持っています。私も智子さんの気持ちを尊重したいのですが、やはり言うべきことは言わなければなりません。「離婚しないならしないで、お金が回るようにしておかないと」。
私はそんなふうに智子さんを諭したのですが、優遇措置の有無という点で、別居中の母子は離婚後の母子よりもお金の面で厳しいのは確かです。だからこそ別居中の生活が成り立つよう、家計の収支を計算しておく必要があります。残念ながら、智子さんの収入だけで娘さん、息子さんを育てることは不可能だという現実から目を背けることは許されません。
「旦那さんに助けを求めるしか手はなさそうですね」
私は智子さんをいさめたのですが、とりあえず、毎月13万円の赤字を解消するのが先決です。もはや背に腹は代えられないので、夫に対して13万円の支払いを頼むよう智子さんの背中を押しました。
児童手当は名前の通り、子どものための手当なので、子どもを引き取っていない夫の口座に入り、夫が自由に使うことができるのはおかしいでしょう。確かに市町村から直接、智子さんの口座に振り込んでもらうことはできませんが、いったん市町村から夫の口座に振り込まれてきた手当を、夫が智子さんに対して渡すことは可能といえば可能です。
「日向、翼はこっちにいるんだから、児童手当はこっちに渡してよ!」
智子さんは決死の覚悟で伝えたのです。夫は最初のうち、「俺の金は俺の金、お前の金も俺の金」という感じでまじめに聞かなかったのですが、紆余曲折の末、夫が毎月15万円(生活費13万円+児童手当2万円)を支払うという約束を取り付け、智子さんは急場をしのぐことができたのです。
このように、母子家庭の優遇措置という点では別居よりも離婚の方が有利なので、智子さんのように、二者択一に揺れるケースは非常に多いのです。憎き夫に頭を下げなくても、児童手当の振り込みを妻の口座に変更した上で新たに児童扶養手当を手に入れ、さらに、医療費は免除されるのですが、何より大きいのは、離婚が成立すれば「どうやって離婚すればいいのか」という悩みから解放されることです。
ただ、離婚の決断を左右するのはお金だけではありません。智子さんの場合、娘さんは14歳、息子さんは9歳でまだまだ未熟です。何とか「離婚の意味」を理解できる程度の子どもから父親を奪ってもいいのかどうか、このような人生を二分する選択を母親の立場で行うことが許されるのか。
こうした心の葛藤が伴う以上、どうしても気持ちの整理がつかないのなら、別居のままやり過ごすのも一つの選択肢でしょう。ただし、将来のこと(離婚後)に気を取られて、現在のこと(別居中)がおざなりなるのでは本末転倒です。
(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)


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