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「百日ぜき」流行 “特徴的な症状”とは? 重症化で死の危険も 医師に聞く受診目安&有効な予防法

百日ぜきの主な症状や治療法などについて、医師に聞きました。

百日ぜきの特徴的な症状とは?(画像はイメージ)
百日ぜきの特徴的な症状とは?(画像はイメージ)

 激しいせきが出る「百日ぜき」が全国的に流行しています。主に乳幼児がかかる感染症で、重症化すると死亡する恐れがあるといわれています。百日ぜきに感染すると、どのような症状が出るのでしょうか。百日ぜきの症状の特徴や受診目安、予防法などについて、浅草橋西口クリニックMo(東京都台東区)院長の頴川博芸さんに聞きました。

せきの終わりに「ヒュー」という音が出る

Q.そもそも、百日ぜきとはどのような病気なのでしょうか。乳幼児だけでなく、大人もかかることがあるのでしょうか。

頴川さん「百日ぜきは、『百日咳菌』という細菌によって引き起こされる気道感染症です。感染後の経過によって症状が変わります。

感染後の経過は、発熱や鼻水など、風邪のような症状が出るカタル期(約1~2週間)、激しいせきが連続して起こり、せきの終わりに『ヒュー』という音(ウープ音)が見られる痙咳期(けいがいき、約2~8週間)、徐々にせきが治まる回復期(数週間~数カ月)の3つに分けられます。このように症状が長引くのが百日ぜきの特徴と言えます。

激しいせきで顔が赤くなったり、嘔吐(おうと)を伴ったりすることもあります。百日ぜきにかかりやすいのはワクチン未接種の乳幼児で、重症化リスクが高いです。また、高齢者も感染しやすく、合併症のリスクがあります。小学生以上の子どもや成人も感染しますが、症状は軽い傾向にあります」

Q.もしせきの症状が出たときに、百日ぜきかどうかを見分けることは可能なのでしょうか。また、医療機関を受診すべき目安はありますか。

頴川さん「せきだけで百日ぜきかどうかを見分けるのは困難です。受診の目安は『普段と違うせきが出る』『連続的に激しいせきが出る』『せきの後にヒューという音が出る』『せき込みで顔が赤くなる、または青くなる』『せきの後に嘔吐』『夜間にひどいせきが出る』『2週間以上せきが続く』などです。

特に乳幼児がせきをしている場合、せきの症状が出ている人が周囲にいる場合は速やかに医療機関を受診してください。せきがひどく、呼吸困難や哺乳不良、顔色不良が見られる場合はすぐに受診が必要です。医療機関で問診やPCR検査などで百日ぜきかどうかを診断します」

Q.百日ぜきになった場合、どのような方法で治療を行うのでしょうか。市販のせき止め薬は効果があるのでしょうか。

頴川さん「百日ぜきの基本的な治療方法は、抗菌薬の投与です。特に早期投与が重要です。最初に使われるのは、マクロライド系抗菌薬です。対症療法として安静や保温、水分補給、消化が良い飲食物の摂取が推奨されます。一般的なせき止め薬は効果がない、もしくは症状を悪化させる可能性があり、医師の指示がない限り、服用は避けてください。

重症化した場合は入院治療が必要となることもあります。治療期間は症状により異なり、抗菌薬投与は約1~2週間ですが、先述のようにせきが完全に治まるまで数週間から数カ月かかることもあります。百日ぜきといわれるのはこのためです」

Q.ちなみに、百日ぜきと症状が似ている病気はあるのでしょうか。例えば、ぜんそくとは何が違うのでしょうか。

頴川さん「百日ぜきと似た病気は、RSウイルス感染症やマイコプラズマ肺炎、アデノウイルス感染症、クループ症候群、ぜんそくなどです。百日ぜきとぜんそくの主な違いは、百日ぜきが『細菌感染』によって引き起こされるのに対し、ぜんそくはアレルギーもしくは気道炎症によって生じます。つまり、ぜんそくは感染症ではないため、周囲の人にうつることはありません。

また、百日ぜきは先述のように激しいせきが連続して起こり、せきの後にヒューという音(ウープ音)が出ることが多いのに対し、ぜんそくの場合は発作性のせきや、呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーという『喘鳴』(ぜんめい)が出るのが特徴です。

このほか、百日ぜきの場合は抗菌薬が使われますが、ぜんそくの場合は気管支拡張薬などで治療を行います。自己判断は危険なため、百日ぜきが疑われる場合は医療機関を受診してください」

Q.百日ぜきを予防するにはどのような対策が有効なのでしょうか。予防法について教えてください。

頴川さん「最も有効な予防法はワクチン接種です。乳幼児期の定期接種と追加接種を確実に受けることが重要です。成人や乳幼児と接する機会が多い人もワクチン接種を検討しましょう。

そのほか、『流行期の外出をできるだけ控える』『手洗いを徹底する』『せきエチケットを守る』『体調管理を心掛ける』『感染者との接触を避ける』ことも有効です。これらの対策で感染リスクを減らし、重症化を防ぐことができます」

(オトナンサー編集部)

【要注意】これが「百日ぜき」の受診目安&有効な予防法です(画像7枚)

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頴川博芸(えがわ・ひろき)

医師、浅草橋西口クリニックMo院長

静岡県沼津市出身。東海大学医学部卒業、順天堂大学大学院医学研究科修了。浅草橋西口クリニックMo(東京都台東区)院長、順天堂大学医学部附属順天堂医院食道・胃外科非常勤助手。資格は日本専門医機構外科専門医、日本温泉気候物理医学会温泉療法医、日本医師会認定産業医など。趣味は旅行。浅草橋西口クリニックMo(https://asakusabashi-mo.jp/)。

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