コーラまで登場 「透明飲料」で歯が汚れないのは本当? 目立たないだけ? 歯科医に聞く
「歯が汚れない」と人気の透明飲料ですが、口腔衛生への影響とはどのようなものでしょうか。歯科医に聞きました。
近年、透明なのに味がする「透明飲料」が増えています。桃やリンゴなどのフルーツフレーバーを筆頭に、最近では紅茶やカフェラテ、コーラなど濃い色味が特徴の飲料も「透明化」しています。こうした透明飲料の魅力の一つとして、「歯が汚れない」ことを挙げるメーカーや消費者は少なくありません。
ネット上では「色素沈着しないのはうれしい」「色が目立たないだけで、歯は汚れているのでは」「口臭への影響はあるの?」などの声が上がっていますが、実際はどうなのでしょうか。歯科医師の池浦一裕さんに聞きました。
無色透明でも歯垢は付く
Q.そもそも、飲み物で歯が汚れるのはなぜでしょうか。
池浦さん「歯の着色・変色の原因は、歯の内部から生じる内的要因(薬物の影響など)と、外的要因(歯の神経の治療後、歯の表面に外来性色素が付着する、など)に大別されます。飲み物で歯が汚れるのは、飲み物に含まれる色素が歯の表面に付着することで生じる外的要因によるものです」
Q.外的要因による着色のメカニズムについて教えてください。
池浦さん「歯の表面には、歯のカルシウムと、唾液に含まれるタンパク質の結合物『ペリクル』が形成されています。ペリクルは、細胞や細菌を含まない厚さ約0.3~1.0マイクロメートルの薄い膜状の沈着物です。
ペリクルには、酸や冷熱刺激から歯を守る働きがある一方で、汚れが付着する土台になってしまう有害作用があります。ペリクルに細菌が付着・凝集し、食材や飲み物に含まれる色素物質が引き込まれて何層にも重なると、強固に縮まった塊となり、歯ブラシではなかなか除去できない汚れとなります。この反応は『縮合』と言われ、茶碗やティーカップについた茶渋が洗っても落ちにくくなる現象もこれに該当します(※1)。
ちなみに、食物や飲み物から、砂糖の主成分となるスクロースが供給されると、口腔内細菌は粘着性のある『不溶性グルカン』というネバネバの物質を作り、増殖していきます。これが虫歯の発生にも関わる『プラーク(歯垢)』です。外来性色素もプラーク中に含まれることから、『正しく歯磨きをする』ことが着色除去の第一歩となります(※2)
Q.透明飲料のように、液体そのものが無色透明であれば歯は汚れないのでしょうか。
池浦さん「無色透明であっても、原材料に糖類(果糖・砂糖)を含む場合が多いため、この糖類を基として口腔内細菌が不溶性グルカンを合成することで、齲蝕(うしょく、虫歯)のリスクはあると考えられます。一方で、色素や着色料が含まれていなければ、他の飲み物と比較して外因性の着色は少ないと考えられますが、学術的な見解は得られていません」
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