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「障害者は公園にでも行け!」 自閉症児を育てた識者が直面した“多様性の受容が進まない”社会の現実

自閉症児を育てていると、いい意味で感覚がまひしてくる――。自閉症児を育てた筆者が実際に体験したのは、多様性への理解が進んでいない現実を知らしめられるような出来事でした。

「インクルーシブな社会」といわれるけれど…(画像はイメージ)
「インクルーシブな社会」といわれるけれど…(画像はイメージ)

 子育て本著者・講演家の私は、自閉症の息子を育ててきました。自閉症児を育てていて、そのコミュニティーにどっぷり浸かっていると、いい意味で感覚がまひしてきて、あまり気にならないことがあります。

大きな声で叫ぶことがある女性

 例えば、手をひらひらさせたり、ジャンプしたりする「常同行動」です。常同行動とは、周囲からすると意図が分からない行動を繰り返すこと。奇妙にも見える行動のため、やめさせたい親御さんもいるかもしれませんが、これは本人が精神の安定のために行っていることもあるので、無理やり静止する必要はないと思います。

 一方で、他人に迷惑をかける行動の場合は困ります。例えば、小さな子どもの鼻にこだわりがあり、いきなり赤ちゃんの鼻を触ろうとする…などです。

 私より年齢が少し下の女性の支援を行ったときのこと。その女性は、大きな声で叫ぶことがありました。本人も大声を出したくて出しているわけではないので、次のような工夫をしていました。

・声を出していないときに褒め、声を出しているときには、声を出さないよう静かに注意をする
・公共交通機関を利用する際、バスは密室になるので利用せず、電車にする。電車内では周りに誰も座っていない席に座る
・声を出したら電車を降りたり、あめやガムを食べさせたりする
・遠回りしてでも、駅の間隔が短い各駅停車の電車に乗る

 また、ご家族は主治医と相談して、薬の調整をするなど対応されていました。ところが……。

【画像】「もしかして…わが子も…?」 これが「発達障害児」にみられることのある行動です(5つ)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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