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年収480万円の夫と離婚した34歳主婦、養育費は「定額」「変額」のどちらにすべきか(上)

山中夫婦のキャッシュフロー表

山中夫婦のキャッシュフロー表
山中夫婦のキャッシュフロー表

【山中夫婦のキャッシュフロー表】

1.離婚後の生活
妻が4歳の子どもの親権を持ち、引き取って育てていく。妻はパートタイマーで年収60万円

2.母子家庭の生活費
子1人の場合は年141万円(平成18年の全国母子世帯等調査結果報告・厚生労働省)

3.子どもの進路
小学校、中学校、高校は公立、大学は国公立文系(教育費の金額は八十二銀行調べ)

「定額」は事情変更の影響受けにくい

数値の分析
数値の分析

 変額はキャッシュフロー表の「養育費」の欄の数字(年額)で離婚1年目は51万円です。定額は「数値の分析」の数字で全期間、毎月7万2000円(年間約86万円)です。

 まず、定額のメリットとして、「事情変更」の影響を受けにくいことが挙げられます。事情変更とは、例えば、双方の再婚、収入の増減、失業、病気、親の介護などですが、離婚時に予見できない事情が数年後、数十年後に発生することは、ある程度避けようがありません。

 しかし、離婚する時にせっかく苦労して決めた養育費なのに、最後までもらう前に事情変更のせいで金額を減らされたり、期間を短縮させられたりするというリスクが伴うのは、「もらう側」からしたら不条理でしょう。

 順子さんは「私が再婚して(再婚相手と子が)養子縁組したらどうなるのでしょうか」と尋ねてきたのですが、実際のところ、再婚や養子縁組の事実を伝えると元夫が怒り出し、「もう養育費を払わない」と言い張る…そんなケースは珍しくありません。「仮に元夫の言いなりになり、養育費を諦めた場合、どうなるのかを考えてみましょう」。私は順子さんに前置きした上で話を続けました。

 キャッシュフロー表をご覧ください。もしも、平成41年に妻が再婚し、平成42年以降、養育費をもらえなくなったとしたら、変額の場合、すでに妻が受け取った養育費は合計で680万円に過ぎません。本当は全期間で合計1645万円もらえるはずだったので、965万円も損をする計算です。

 一方、定額の場合はどうでしょうか。すでに約1036万円(月7万2000円×12カ月×12年)ももらっているので、確かに609万円は損しますが、平成41年の時点で、変額の場合に比べて356万円も多く受け取っています。これは、定額の場合、変額よりも事情変更による損失を356万円も軽減できたと言い換えられるでしょう。私は「再婚する可能性がゼロではないのなら、養育費は『定額』の方がいいのでは」とアドバイスしました。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

行政書士(露木行政書士事務所代表)

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

注)離婚手続きに関して、個別事情を踏まえた離婚手続きや離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

各都道府県の弁護士会
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/bar_association/whole_country.html

法テラス
https://www.houterasu.or.jp/

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