わが子は“天才児”かも…と舞い上がる母の“夢と現実” 真の「障害受容」を隠しているもの
「秘めた才能があるはず」「ギフテッドかもしれない」。そうした言葉をよりどころにしながら自閉症児の息子を育てる筆者がたどり着いた、真の「障害の受容」とは――。

子育て本著者・講演家である私は、24歳の自閉症の息子を育てていますが、「うちの子は自閉症なの」と周りに伝えると、「何か秘めた才能があるはずよ」「ギフテッドチャイルドよ」と励まされたことが何回もあります。その励ましの言葉をよりどころにして、つらい子育てを乗り切ろうと必死でした。
「ギフテッドチャイルド」とは、日本語でいうと“英才児、優秀児、天才児”という意味です。「ギフテッド(gifted)」は、贈り物を意味する英語の「ギフト(gift)」 から来ており、神、または天から与えられた“資質”といわれます。
ギフテッドチャイルドは、後天的に、努力に努力を重ねて「勉強ができる賢い子になった」という意味ではなく、「生まれつきの“天才”」を指す言葉だそうです。そのため、早期教育を一生懸命したからといって、ギフテッドチャイルドになるわけではないようです。
知的障害や発達障害がある人の中で、特定の分野に限って優れた能力を発揮する人は「サヴァン症候群」と呼ばれます。例えば、映画「レインマン」のモデルになったといわれたキム・ピーク氏。彼は生まれつき脳に障害がありました。そのため、大人になっても親の介護がなければ、日常生活を送ることができませんでした。ところが、その一方で、類まれな記憶能力を持ち、9000冊以上の本の内容を一言一句、暗記していたそうです。
桁数の多い暗算ができたり、円周率を延々と言えたり……そんなずば抜けた才能を持ちながらも、身の回りの着替えや歯磨き、排せつなどの身辺自立ができていない人も、実際にいます。
息子もギフテッドだったのかもしれないが

私の息子には聴覚過敏がありましたが、それは同時に、聴覚が優れていることを表していました。実際、カラスやハトの鳴き声を聞いて「はしぶとがらす」「どばと」「かわらばと」と種類を言い当てていました。
そこで、私は「息子をピアニストにしよう」と考え、日本でも有名なピアノ教室に通わせました。
レッスンの中に、14種類の和音を聞き分ける「絶対音感」習得のための訓練がありました。通常は習得までに「1年はかかる」と言われ、長い子だと数年かかるものでしたが、息子はたった2カ月で全ての和音をピタリと当てるようになりました。先生から「今まで指導したお子さんの中で、一番早くマスターしました」と言われ、私は舞い上がりました。
けれども、耳がよすぎて、教室で耳にする音を息子が嫌がったため、レッスンを続けられなくなりました。聴覚過敏のため、ピアノの音が嫌だったみたいです。私にも、それ以上やらせる気力も根気もありませんでした。
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