文科省「博士数を3倍に増やす」と言うが… 博士号取得者の“就職”が困難を極めるワケ
応募書類の中でも厄介なのは?
応募書類の中でも厄介なのが「業績リスト」です。「業績」は、論文や書籍、学会発表、特許、学会賞などの受賞歴、招待講演、研究資金獲得など多岐にわたります。研究者の評価は研究業績で決まると言っても過言ではないため、博士はこの業績を増やすために日々努力をしています。しかし、業績が増えるほど書類作成は大変になります。
業績リストの提出フォーマットは、応募先によってバラバラです。単著と共著、査読の有無などの分類方法、新しい順・古い順などの並び順、個々の業績にひもづく著者名、タイトル、掲載誌名、発行年、巻号、ページ数の順序などが統一されていません。
そして、ファイルフォーマットは謎のエクセル方眼紙だったり、1行ずれるとそれ以降の全てがずれるワードのテーブルだったりします。
研究業績は、応募先のスローガンやプロジェクトに合わせなくても良いので、頭を使う必要がありません。しかし、フォーマット合わせのために膨大なコピペ作業が発生します。作業は単調で生産性はありませんが、自分の将来を決める書類ですから、細心の注意が必要です。
そして時にはリストだけではなく各業績の要約文やコピーの提出を求められることもあります。業績の少ない若いうちはそれほど大変な作業ではありませんが、研究者としてそれなりにキャリアを積んでくると、必要なコピペの回数は軽く数千回を超えてきます。
こうして完成した応募書類はレターパックに入り切らずに、段ボール箱で送ることもあります。人気の職場には「募集人数1名」に100人以上が応募することもあります。そのため、高度な専門性を持った優秀な人材が、その専門性を全く生かさずに「コピペ職人」になりきって作った書類のほとんどは、応募先でシュレッダーにかけられることになるのです。
有期雇用の博士は、このような応募書類を毎年いくつも作っていますから、その労力を研究活動に向けることができれば、もっと研究成果が上がるのは間違いなさそうです。
「博士人材活躍プラン」で最も力を入れて取り組むべきことは、博士が活躍できる職場を増やすことですが、これと並行して、就活の効率化に向けた取り組みや支援もぜひ進めていただきたいと思います。
【参考文献】
(※1)「博士人材追跡調査-第4次報告書-」(2022年1月) 文部科学省 科学技術・学術政策研究所
(近畿大学生物理工学部准教授 島崎敢)




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