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【節分】栄養豊富な「大豆」 食べ過ぎでどんなリスク? 医師が教える摂取時の“注意点”

大豆を食べ過ぎると、どのような健康リスクが生じる可能性があるのでしょうか。医師に聞きました。

大豆を食べ過ぎると、どうなる?
大豆を食べ過ぎると、どうなる?

 2月3日は「節分」です。節分といえば、「鬼は外、福は内」と言いながら大豆を投げる風習があります。

 栄養豊富といわれている大豆ですが、食べると健康上、どのようなメリットがあるのでしょうか。食べ過ぎると、どのような健康リスクが生じる可能性があるのでしょうか。大豆に含まれる栄養素や大豆を摂取する際の注意点などについて、Ladies clinic LOG原宿(東京都渋谷区)院長で、医師の清水拓哉さんに聞きました。

食べ過ぎで消化不良を引き起こす恐れ

Q.そもそも、「大豆」にはどのような栄養素が含まれているのでしょうか。大豆を食べるメリットも含めて、教えてください。

清水さん「大豆には、タンパク質や糖質、脂質、ビタミンB群、ビタミンE、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、鉄、亜鉛など、多くの栄養素がバランスよく含まれています。また、サポニンやレシチン、イソフラボンといった機能性成分も含まれています。

大豆の構成成分の約34%はタンパク質であり、肉に匹敵するほどタンパク質が豊富です。そのため、別名『畑の肉』とも呼ばれています。大豆のタンパク質は、肉などに含まれるタンパク質とは違い、血中コレステロールを低下させる作用や肥満の改善などの効果があるといわれています。

また、大豆には、ポリフェノールの一種である『大豆イソフラボン』のほか、オメガ3系多価不飽和脂肪酸のα-リノレン酸、オメガ6系多価不飽和脂肪酸のリノール酸が含まれており、これらの成分の健康作用についても注目されています。

大豆を食べるメリットとしては、人の体に必要な必須アミノ酸をバランスよく摂取できることのほか、『食物繊維が豊富で便通改善につながる』『血糖値の上昇を抑制する』『骨粗しょう症の予防』『更年期症状の緩和』などが挙げられます。日本人を対象とする疫学研究から、大豆イソフラボンを摂取すると、乳がんや前立腺がんの発症率を低下させる可能性があるということも分かっています。

以上のように、大豆には多くの栄養素が含まれ、健康に良い影響を与えることが期待されています。大豆を意識的に摂取することで健康的な生活を送ることができます」

Q.大豆の1日の適切な摂取量はどの程度なのでしょうか。例えば、節分の際に年齢の数だけ大豆を食べるのがよいといわれていますが、これは適量なのでしょうか。それとも、食べ過ぎなのでしょうか。

清水さん「節分の豆まき後に、自分の年齢と同じ数の大豆を食べることが良いとされていますが、これはあくまで『年齢と同じ数だけ福を体に取り入れる』という意味が込められた風習であり、健康的な摂取量とは異なります。

大豆の健康的な摂取量については、内閣府食品安全委員会が公表する、大豆イソフラボンの1日摂取上限量の『70〜75ミリグラム』を目安にすると良いでしょう。日本人の大豆イソフラボンの1日の平均摂取量が18ミリグラムであることを考慮すると、いり大豆で50ミリグラム程度の大豆イソフラボンを摂取することが可能になります。

いり大豆1グラム当たり約2ミリグラムの大豆イソフラボンが含まれているため、25グラムのいり大豆を摂取しても問題ないという計算になります。いり大豆は1粒当たり約0.4グラムのため、1日の摂取量の上限は60粒程度となります。

ただし、個々のケースにより大豆食品の1日の摂取量は変化するため、日頃から大豆食品を多く摂取している場合、1日のいり大豆の摂取上限量は25グラム以下にするのが望ましいでしょう。目安の上限量はあくまで参考程度に理解してください。

大豆の過剰な摂取は、かえって健康を害する恐れがあるため、適量を守って大豆を食べることが大切です」

Q.では、大豆を食べ過ぎてしまうと、どのような健康リスクが生じる可能性があるのでしょうか。

清水さん「大豆を過剰に摂取すると、下痢や腹痛などの消化不良の症状を引き起こす可能性があります。

食事に加えて、長期的に大豆イソフラボンを過剰に摂取している場合は注意が必要です。大豆イソフラボンはエストロゲン(女性ホルモン)に似た作用もあるため、継続的に大豆を過剰摂取している女性の場合、月経周期や子宮内膜に影響を及ぼすリスクがあります。

海外では大豆イソフラボン錠の過剰摂取による子宮内膜増殖症が発症したという報告もあります。大豆製品を過剰に摂取すると甲状腺ホルモンが低下するという報告もあります。

厚生労働省によると、大豆を含む豆類の1日の摂取量は100グラムとされています。適量を守り、健康的な生活を送ることが大切です。

以上のことから、大豆を適量に摂取することが重要であり、過剰摂取によるリスクを避けるためにも、1日の摂取量には注意が必要です」

Q.過剰摂取以外に、大豆を食べるときの注意点について、教えてください。例えば、持病や年齢などの関係で、大豆の摂取をできるだけ控えた方がよい人はいるのでしょうか。

清水さん「当然だとは思いますが、大豆アレルギーがある人が大豆を食べると、アレルギー症状が出るため、摂取を控えましょう。

また、5歳以下のお子さんの場合、いり大豆などの固形の豆類を摂取すると、気管支に豆が詰まってしまい、誤嚥(ごえん)の危険性があります。窒息状態となり命の危険性もあるため、小さなお子さんのいるご家庭では、お子さんがいり大豆を口に入れないようにする配慮が必要です。

現時点では大豆食品の摂取による重篤な健康被害は報告されていませんが、適切な摂取量を守り、家族や友人と楽しく節分を過ごしましょう」

(オトナンサー編集部)

【画像】「えっ…!」 これが「大豆」を食べ過ぎるリスクです

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清水拓哉(しみず・たくや)

「Ladies clinic LOG原宿」院長、産婦人科専門医

杏林大学卒業後、筑波大学付属病院で初期研修。その後、けいゆう病院、横浜総合病院などで産婦人科として勤務。日本産婦人科学会専門医、日本産婦人科内視鏡学会技術認定医を取得。2023年9月に東京・原宿に産婦人科クリニック「Ladies clinic LOG原宿」(東京都渋谷区)を開業。子宮鏡下手術、円錐切除術など多彩な婦人科日帰り手術や妊婦健診、レディースドック、更年期症状の治療などを行っている。Ladies clinic LOG原宿(https://www.ladies-clinic-harajuku.com/)。

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