性体験や初経に関するものも…「問診票」のデリケートな質問の意味は? どう答えるべき?
婦人科の問診票には、初経の時期や性体験の有無などデリケートな質問が並びます。しかし、それを恥ずかしがって受診を先延ばしにしたり、うそを記入したりすると、取り返しのつかない事態を招きかねません。

病院の初診時に必ず記入する「問診票」。婦人科の問診票は「初経の年齢」「性体験の有無」「妊娠・出産経験の有無」「中絶・流産の有無」など、デリケートな内容を細かく尋ねる質問が多く、「恥ずかしい」「答えづらい」という声も聞かれます。
婦人科の問診にはどのような意味があり、患者側はどのように答えるのがよいのか、産婦人科医の尾西芳子さんが解説します。
正確な診断のために欠かせない問診
正確な診断をするために問診は必須です。半分は問診で病気を特定しているといっても過言ではありません。面倒臭がって適当に書いたり、うそを書いたりすると、アレルギーや、体質に合わない薬が処方されてしまうこともあり、大変危険です。正確な診断ができず、本来と異なる治療がなされる可能性もあります。
婦人科の問診項目には、以下のような意味があります。
【身長と体重】
体重が重過ぎても軽過ぎてもホルモンバランスが崩れ、月経不順を引き起こすことがあります。また、子宮体がんやバセドウ病などBMIが病気の原因特定につながることがあります。
【初経の年齢】
初経が正常な時期にあったかや、初経後の月経の経過も婦人科の病気を見つける参考になります。
【既婚(結婚の時期)/未婚】
不妊相談などの場合、結婚後どのくらいの期間、子どもができなかったかなどの参考になります。
【性体験の有無】
まずは、内診ができるか判断する上で重要です。性交の経験がないと処女膜がまだあるので、膣(ちつ)からの超音波検査や子宮頸(けい)がんの検査をすると強い痛みを伴うことがあります。また、性交による性感染症や、子宮頸がんの原因ウイルスの有無を知るために必要です。
【妊娠・出産・中絶・流産経験の有無】
子宮、卵巣、ホルモンに異常がなく、妊娠できる体かどうかの参考になります。また、流産を繰り返している場合、おなかの中で赤ちゃんが育ちにくい体質(=不育症)であることもあり、次の妊娠時の参考になります。
さらに、妊娠中や出産時に高血圧や糖尿病が指摘された場合、産後一度元に戻っても、将来的に高血圧や糖尿病のリスクが高いので、それらの病気の早期発見につながります。
病気の発見をスムーズにするために
問診票には、「いつからその症状があるか」「月経の周期と関係があるか」「症状に変化があるか」などを詳しく書くと、病気の発見や対応がスムーズになります。
婦人科の症状の場合、ここ数カ月の月経の日にちを教えてもらえると病気を特定するための参考になります。日ごろから、月経の日をカレンダーに書き込む癖をつけるとよいです。
婦人科医は毎日さまざまな相談を受けています。ご本人は「少し恥ずかしい」と思う話も医師は気にしていないので、積極的に相談してください。
私がまだ研修医の頃、おなかがパンパンになった30代の女性が救急で受診されました。診断の結果は、進行した卵巣がん。その方が「症状は以前からあったけれど、恥ずかしくて受診が延びてしまった」と話していたことが忘れられません。その時、婦人科の敷居の高さを痛感し、友達のように気軽に相談に来られるような医師になろうと心に誓いました。
その後も、性病やがんなど、一時の「恥ずかしい」という思いで受診をためらい、取り返しがつかなくなってから受診される方をたくさん見てきました。「怖い」「恥ずかしい」と思わず、少しでも気になることがあれば早めに医師に相談しに来てくださいね。
(文/構成・ライフスタイルチーム)
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