働き盛りの40代で発症？　動悸、発汗、不眠…男性更年期障害　原因・症状・治療法を医師に聞く

　「更年期障害」と聞くと「女性の閉経期前後に現れる不調」「女性特有のもの」という認識を持つ人が多いのではないでしょうか。しかし近年、更年期障害は女性のみならず、男性にも起こり得ることが少しずつ分かってきました。「男性の更年期」は、30代で発症するケースもありますが、働き盛りの40代以降で発症するケースもあります。さまざまな症状から「更年期かも…」と疑いながらも、「女性の不調」のイメージが強く症状を相談できずに悩んだり、放置したりする男性も少なくないようです。

　ネット上では「男性の更年期障害の症状ってあまりピンと来ない」「女性の更年期とは何が違うの？」など、さまざまな声が上がっています。男性を襲う更年期障害の症状について、石川県金沢市にあるメンズクリニック「Gran Clinic」の院長・小倉慶雄さんに聞きました。

中間管理職の男性は注意！　放置すると糖尿病や動脈硬化に…

Q.まず、更年期障害とは何なのでしょうか。
小倉さん「男女ともに40歳を過ぎた頃から見られる、動悸（どうき）、発汗、ほてり、無気力、不眠など、さまざまな体調不良や情緒不安定などの症状をまとめて更年期障害と呼びます」

Q.男性と女性で更年期障害の症状に違いはあるのでしょうか。
小倉さん「どちらも、ホルモンの低下が原因ですが、男性と女性で原因となるホルモンが異なります。男性は睾丸（こうがん）ホルモンといったテストステロン、女性は卵巣ホルモンのエストロゲンが原因になります。

女性の場合は、閉経期前後の約10年間にエストロゲンの分泌が急激に減少することによって症状が現れます。男性の場合は、30歳以降テストステロンの分泌が減少しはじめ40歳代後半で症状が現れることがありますが、女性の場合と比べ分泌量の変化が緩やかなため、老化現象の一部と認識されて気付かれないことが多いと考えられています」

Q.男性の更年期障害は、どのような症状がみられますか。
小倉さん「男性更年期障害は、加齢による男性ホルモン（テストステロン）の低下によって起こります。LOH症候群（加齢男性性腺機能低下症候群）とも呼ばれます。

主な症状としては、動悸、頭痛、発汗、ほてり、のぼせ、手足の痺れ、倦怠（けんたい）感、無気力、不眠、うつ、勃起障害をはじめとする性機能障害などがあります」

Q.発症しやすい男性の特徴はありますか。

小倉さん「中高年の男性は、中間管理職に就くなど、強いストレスを受けやすい環境にさらされている上に、加齢によって男性ホルモンが低下してきているので、一層、自律神経のバランスが崩れやすい状態になったりします。そのような環境の方のうつ病とLOH症候群の鑑別は困難です。

Q.男性更年期の症状を放置すると、どうなりますか。
小倉さん「心療内科に受診するが症状改善しない方が一定数いるといわれています。テストステロンの低下は肥満、糖尿病や循環器病の発症、動脈硬化のリスク増加につながっていくことが最近の医学研究でエビデンスが示されています。

テストステロンは、男性の健康のために大切なホルモンのため、男性の診療を行う医師としてテストステロン値測定は必要であると考えます。

Q.男性更年期の治療法はあるのでしょうか。
小倉さん「テストステロンの注射による補充、漢方薬があります。また、日常生活で筋力トレーニング、サプリ、たんぱく質の摂取、良質な睡眠も効果的と言われています。

テストステロンは、人の性格や考え方、そしてその人の社会性にも影響があるとされています。大胆でリスクを恐れない、決断力のある、男らしい生き方、そのような精神や行動の源になっているのがテストステロンと言われています。

企業や集団において、社長やリーダーのテストステロン値が高いともいわれており、また好奇心や挑戦する心、冒険心などいわゆる“チャレンジ精神”にもテストステロンが大きく関与してるといわれています。逆に言えば、全くバイタリティーの無い元気の欠けた男性はテストステロンが低下しているかもしれません。そのため、テストステロンの血中濃度を正常に保つことは、メンズヘルスのポイントの一つです。

血中テストステロン値は人間ドックや職場の健康診断などで測定されることはまずありません。気になった男性は、ぜひともテストステロン値の測定を推奨します。その結果によっては男性の心身を根本から改善することができるかもしれません。必要な時は気軽に病院の医師などに相談することをお勧めします」

（オトナンサー編集部）