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ポイントは「相手の言った言葉」! 子どもが心を開く、たった一つの「話の聞き方」

あなたはわが子の話に、どのように耳を傾けていますか。子どもの話を聞くときに覚えておきたい「子どもが心を開く話の聞き方」を、子育て本著者・講演家の筆者が伝授します。

子どもが心を開く「話の聞き方」って?
子どもが心を開く「話の聞き方」って?

 子育て本著者・講演家として活動する私は長年、幼児教室で指導をしていました。言葉が悪いですが、とても扱いやすい子がいる一方、教室から脱走したり、友達をたたいたりするなど、「授業料、5倍欲しいです」と言いたくなるくらい大変な子どももいました。

 そんなある日、スーパーへ買い物に行ったときのことです。偶然、私が苦慮している子が親と一緒に買い物に来ていました。私の姿に、親子は気が付きません。しばらく様子を見ていたのですが、その親子は買い物どころではない状況でした。

「置き去りにしたくなっちゃうんですよ」

 通路を走り回り、売り物のホウレンソウの葉っぱをちぎったり、買い物かごにどんどんお菓子を入れたりしていました。母親は髪を振り乱し、叱りながらやっとこさ、必要なものを買っていました。そして、子育てに疲れ切っていた様子でした。

 そんなとき、母親と目が合ってしまい、バツが悪い状況になりました。母親は気を取り直す間もなく、私の顔を見てこう言いました。

「あ! 先生、私、もうこの子をここに置き去りにしたくなっちゃうんですよ」と…。

 そこで思わず私も、普段の授業の様子を頭に浮かべながら、「そうですよね。落ち着きませんよね。置き去りにしたくなってしまいますよね」とつい、口に出してしまいました。

 子どものことを私は言ったのですが、もしかして母親は「自分が買い物するのに落ち着かない」と解釈してくれたかもしれません。が、それはともかく、親と一緒になって「置き去り」と言ってしまいました。「覆水盆に返らず」のことわざ通り、正直な気持ちを言ってしまったのです。

「しまった!」と思い、その母親の顔を恐る恐る見上げると、母親の顔が晴れ晴れとしていました。そして、目に涙を浮かべながら、「ありがとうございます。分かってくれて。そんなふうに言ってくれた人、初めてです」と逆に感謝され、私は拍子抜けしてしまいました。以降、その母親と信頼関係が深まり、さまざまな話をする関係になっていきました。

 あのとき、「そんなことないですよ。落ち着きがありますよ。◯◯君にもいい面がたくさんありますよ」と言っていたら、母親は「先生は週1回しか接しないから分からないでしょ! 私は24時間、年中無休でこの子を育てているんだから」と思われ、それ以降、私に何かを相談することもなかったでしょう。

「聞く」のではなく「聴く」

 この話は、わが子に対して話をするときも同じだと思います。

 例えば、子どもが「宿題が多くて嫌になっちゃうよ」と言ったとき。次のような聞き方をすると、子どもは心を閉ざしてしまうのです。

・他のことをしながら上の空で聞く
・子どもの話を、ただ音声として聞くだけ
・「うん、うん」「はい、はい」とただ言うだけ
・相手の話を全部聞かず、教訓めいたことを言う。または否定したり、話の腰を折ったりする。例えば、「宿題やらないとダメでしょ」「やること(宿題)やってから遊びなさい」「皆も宿題やってるんだから」など

 一方、「よい話の聞き方」は、「相手の話を全部聞き終わった後、相手の言った言葉をそのままおうむ返しする」ことです。

 子どもは「宿題をやらない」と言っているわけではありません。「宿題が多くて嫌だ」という気持ちを親に伝えているだけなのです。だから、親は「宿題が多くて嫌になっちゃったんだね」と繰り返すだけでいいのです。子どもは、親に気持ちを分かってもらえたと思い、渋々ながらも宿題に取り組むかもしれません。

 子どもが「幼稚園で、◯◯君が私のおもちゃを取った」と言ってきたとき、いじめに遭っているんではないかとエキサイトして、「意地悪されたのね。明日、お母さんから園長先生に注意してもらうから!」と言うのではなく、「そうなんだ、幼稚園で◯◯君がおもちゃ取ったんだ」とおうむ返ししてあげましょう。

 すると、もしかしたら子どもは、「でも、そのおもちゃ、最初は◯◯君が使っていたんだよね。でも先生が来て仲直りしたんだ」と言うかもしれません。きちんと話を聞いていれば、早合点してクレーマーになってしまい、恥ずかしい思いをすることを避けられます。

 実は、これらは「傾聴」という方法です。「きく」は漢字で書くと「聞く・聴く」と何種類かありますが、「聞く」はただ音声として耳に入ってくる音を「きく」ことを意味します。対して、耳を傾けて相手の話を積極的に「きく」のが「聴く」なのです。

 先述したスーパーでの出来事も、私がおうむ返しをして「置き去りにしたくなりますよね」と言ったことが、たまたま傾聴になったのかもしれません。

 子どもにも「傾聴」の技、ぜひ使ってみてくださいね。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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