尿を我慢すると、体にどう影響? 「膀胱炎になりやすい」は本当? 真偽を医師に聞く
尿を我慢すると、体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。医師に聞きました。
会議中や試験中など、大事なときに尿意を催した経験がある人も多いのではないでしょうか。状況によっては、トイレを我慢しなければならないときがありますが、体に負担をかけてしまいます。
尿を我慢した場合、体にどのような影響があるのでしょうか。「尿を我慢すると、膀胱(ぼうこう)炎になりやすい」といわれていますが、本当なのでしょうか。なかざわ腎泌尿器科クリニック(石川県野々市市)の中澤佑介(なかざわ・ゆうすけ)院長に聞きました。
尿の我慢で膀胱の機能が低下
Q.そもそも、会議中や試験中など、大事なときに限って尿意を催すことがありますが、なぜでしょうか。考えられる原因について、教えてください。
中澤さん「排尿は、自律神経によって調整されています。会議や試験に集中していれば、体と心が『興奮モード』になり、交感神経が優位になるので尿意を催さなくなります。尿意を催すということは、会議や試験にうまく集中できていないのかもしれません」
Q.「尿を我慢すると、膀胱炎になりやすい」といわれていますが、本当なのでしょうか。
中澤さん「膀胱炎は、『尿を我慢する』『膀胱内で細菌に感染する』など、さまざまな原因で発症します。例えば、尿を我慢することが増えると、膀胱の機能が低下します。それにより、排尿後に膀胱内の残尿量が増え、膀胱炎になりやすいと考えられています。
なぜ尿を我慢すると膀胱の機能が低下するのかを説明します。膀胱内にたまる尿の平均的な容量は300~400ミリリットル程度ですが、尿を我慢することで、その容量よりも多く尿をためた場合、膀胱壁が過剰に伸び、その周囲の血流が阻害されるため、膀胱に血液が流れない『虚血状態』が続きます。
その後、血流が回復する際に、膀胱内でさまざまな毒性物質の産生が引き起こされる『虚血再灌(かん)流障害』が生じるため、膀胱の機能が低下すると考えられています。また、膀胱の残尿量が多くなると、長期的に腎臓に負担がかかるため、腎臓の機能も低下するといわれています。
女性は尿道が4センチ程度しかないため、体内の細菌が簡単に膀胱に達してしまいます。すると、膀胱内で細菌が増殖し、膀胱炎にかかりやすくなります。20歳から50歳までの男女を比較した場合、女性が膀胱内で細菌に感染するケースは、男性の約50倍といわれています」
Q.排尿の適切なタイミングについて、教えてください。尿意を催した時点ですぐにトイレに行くべきなのでしょうか。それとも、少し我慢をしても問題ないのでしょうか。
中澤さん「トイレの適切なタイミングは個人差があるので、一概に言えないと思います。膀胱炎を発症した人の場合、尿を我慢することで細菌が腎臓に達し、『腎盂(う)腎炎』になる場合もあるので、我慢をしない方がよいと思います。
一方、膀胱に尿がためられない『過活動膀胱』と診断されている人は、尿を我慢することで膀胱容量を増やす『膀胱訓練』という治療があり、我慢する方がよい場合もあります。症状によって個人差があるので、排尿などで悩みがある場合は、泌尿器科の受診を勧めます」
(オトナンサー編集部)
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