口臭の原因にも!? 舌の表面が白くなる「舌苔」、その原因と体への影響とは
舌苔は除去すべき? 適切な除去方法は?
Q.舌苔は放置しても問題ないのでしょうか。
池浦さん「口腔粘膜は食物などの刺激が加わりやすいため、新陳代謝が早く、粘膜の再生速度も速いです。粘膜表面の古い細胞がはがれて、新しい細胞と置き換わる速度が速いため、健康な状態でも日々舌苔は付着していきます。
大切なのは健康な状態をベースにした舌苔なのか、それとも病的な状態がベースとなった舌苔なのかを診断することです。単純に汚れ(老廃物)が堆積(たいせき)した状態ならば、適切に除去することで舌の健康を保つことができますが、病的な状態が隠れていると、舌ブラシなどの機械的清掃だけでは症状が改善されないことも考えられます。患者さん自身が『舌が変だな』と感じたら、専門的な医療機関で診察を受けることをお勧めします」
Q.適切な除去とは、どのような方法でしょうか。
池浦さん「舌清掃器具はさまざまな形状の商品が販売されています。いずれの形状においても舌苔の付着状態は個人差があるため、初めて使用する場合は歯科医療機関での相談が望ましいでしょう。それぞれに合った磨き方を患者さんごとに計画していく必要があります。
市販品の舌清掃器具を使って、患者さん自身で行う場合、痛みがない程度に低圧力で優しく舌を磨くことが大切です。磨き方は、吐き気を感じない程度に舌の奥から前方に汚れをかき出すように行います。この方法で舌にどれくらいの舌苔付着があるのかを観察し、清掃することでどう変化するのかを知ることが重要です」
Q.付着を予防する方法はありますか。
池浦さん「舌苔の付着を予防する方法は、汚れという観点で考えると口腔内を清潔に保つということです。しかし、汚れ以外にも食生活などの生活習慣、糖尿病などの全身疾患が関わっていることもあるため、舌苔が付着する状態になった原因を知ることがとても大切です。
舌ブラシで舌を磨くことは治療であり、その前段階に『舌表面に機械的清掃で除去すべき舌苔付着がある』という診断があります。正しい診断の下、適切な清掃器具を適切な方法で使用しなければ、粘膜を傷つけてしまう可能性も考えられます。まずは、自分自身の体のこと、口腔の健康について理解し、日常の口腔ケアを正しくできる知識と腕を磨くことが予防の第一歩です。ご自身での清掃後も症状に変化が感じられない場合や、不快な症状が現れるなど『いつもと違う』と感じた場合、歯科医療機関で診てもらいましょう(※4、※5)」
(ライフスタイルチーム)
(※1)渡邊英明「舌苔の微細構造に関する観察」口腔病学会雑誌73、26-39(2006年)
(※2)小島健「舌苔の臨床的研究」日本口腔外科学会雑誌31、1659-1678(1985年)
(※3)池田裕子「口臭治療における舌背の菌数測定の意義」日本口臭学会会誌5、29-34(2014年)
(※4)堀田正人、長井康平、今出昌一、佐野晃、山本宏治「舌ブラシ使用法に関する研究 舌の染色が舌ブラシ圧に及ぼす影響について」日本歯科保存学雑誌50、332-337(2007年)
(※5)濱田真理子「口腔ケア 舌苔の除去の考え方と用具 舌ブラシから洗口剤・保湿剤まで」難病と在宅ケア17、38-42(2011年)
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