タンポン誤使用で“死に至る”リスクも…「トキシック・ショック症候群」どんな病気? 産婦人科医に聞く
生理用品の一種である「タンポン」。ナプキンにはないメリットがある一方で、使い方を誤ると「トキシック・ショック症候群」を発症するリスクもあるようです。産婦人科医が解説します。

生理時の経血を吸収する生理用品としてだけでなく、手術時の出血を吸収する手術道具としても使用されている「タンポン」。特に、生理用品として日常的に使用する場合、誤った使い方をすると「トキシック・ショック症候群」という病気を引き起こす場合があるようです。実際に海外では、タンポンの使用による感染症で命を落としたり、両足を失ったりしたケースも報道されています。
タンポンの誤った使い方が招く「トキシック・ショック症候群」とは、どんな病気なのでしょうか。産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。
重症化で死に至る「急性疾患」
Q.まず、「タンポン」について教えてください。
尾西さん「タンポンとは、脱脂綿を圧縮したものを膣(ちつ)の中に入れ、経血を吸収させる生理用品です。『アプリケーター』と呼ばれる、膣の中に入れやすくするプラスチック部分がついているタイプと、指で直接押し込むタイプの2種類があり、どちらもひもがついているため、ひもを引っ張って取り出します。
使い始めの方でも挿入しやすい、細長いものなどもあり、最長8時間程度使用することができます」
Q.生理用ナプキンと比べて、タンポンにはどんなメリット/デメリットがありますか。
尾西さん「タンポンは膣に挿入して使うため、ナプキンのように直接肌に触れることがなく、汗をかいたときにもムレたりかぶれたりしにくいのが特徴です。また、違和感がないため、激しい運動をするときの妨げになったり、横漏れしたりしにくいのもメリットです。
一方、膣に挿入するため、慣れるまでは難しいのがデメリットといえます。また、長時間入れっぱなしにすると、膣内で雑菌が増殖したり、『トキシック・ショック症候群(TSS)』を引き起こしたりする可能性があります」
Q.その「トキシック・ショック症候群」という病気について教えてください。
尾西さん「トキシック・ショック症候群は、黄色ブドウ球菌が作り出す毒素によって、高熱や低血圧、発疹、嘔吐(おうと)、下痢、皮膚の剥離が起こり、重症化した場合は死に至る急性疾患です。
初期症状は、高熱やめまい、吐き気、腹痛、筋肉痛、頭痛などで始まり、急激な下痢が起こります。その後、48時間以内に、全身に発赤や血圧低下などの症状が起こります。
黄色ブドウ球菌自体は、鼻や咽頭、皮膚、頭髪、膣などでよく見つかる菌なので、この菌がいるからといって心配する必要はありません。毒素を作り出すタイプの黄色ブドウ球菌によって症状が引き起こされるため、この疾患にかかるのは非常にまれです。TSS毒素に対する抗体がまだできていない若い人ほど、危険性は高くなります」
Q.トキシック・ショック症候群の発症リスクが高まってしまう「タンポンの使い方」とは。
尾西さん「『タンポンを挿入する時、手をきれいに洗わない』『8時間以上入れっぱなしにする』『取り出すのを忘れる』などの誤った使用で、リスクは増加すると考えられます。また、出産後すぐは感染が起きやすいので、タンポンを使用するのは産後2〜3カ月を過ぎてからにしましょう。
タンポンの使用とは関係なく、月経周期に関連したTSSもあるので、タンポンを使用していなくても先述の症状が月経の時期にある人は、一度受診してみましょう」
Q.トキシック・ショック症候群の治療法について教えてください。
尾西さん「急性疾患のため、救急科で診ることが多いのですが、皮膚がただれる場合は皮膚科、タンポンが原因の場合は婦人科などでも診ることがあります。
治療としてはまず、原因の除去、洗浄、消毒をします。重症化している場合は輸液の点滴をし、抗生剤の点滴により、治療を行います。毒素を作り出すタイプの黄色ブドウ球菌を持っている人は、再発することもあります。
タンポンの誤った使用によってTSSのリスクは上がりますが、通常の使用で黄色ブドウ球菌が増えるということはないので、過度に心配する必要はありません。タンポンの説明書をよく読んで、正しい使用を心掛けましょう」
(オトナンサー編集部)
コメント