トイレ用洗剤をウイスキーに入れ替え…重症の妻を守るための“監視”〜実録・ボディーガード体験談
まな板用の除菌剤を飲んだ妻
警護が終了した後、一度ご主人から電話を頂いたことがあります。「トイレを掃除しようと洗剤を便器にかけたら、出てきた液体がサラサラの琥珀(こはく)色だった」と。奥さまは洗剤を、ウイスキーに入れ替えていたのです。
それから2~3週間後、再び奥さまがアルコールを飲んで倒れました。しかも、今度は救急車で運ばれてしまったのです。「明日はまだ入院していますが、大事な話があるので、いつもの時間に来てください」という電話があり、翌朝、いつも通りに自宅へ伺いました。
ご主人によると、奥さまが飲んだのは酒ではなく、まな板用の除菌剤だったそうです。その夜、ご主人がシャワーから出ると、居間で奥さまが激しく嘔吐(おうと)しており、横に除菌剤の空き容器が転がっていたとのことです。「まさかあんな物まで飲むとは…これでは防ぎようがありません…」と、ご主人は途方に暮れていました。それからは大きな問題は起きず、数週間後に病室が空いて次の入院先が決まり、警護は終了しました。
今、ご夫婦がどうしているかは分かりません。奥さまがアルコールに依存した理由も知りません。しかし私には、典型的なキッチンドリンカーに見えました。
昨今、夫の家事参加が当たり前と言われていますが、家庭を顧みない男性はまだまだ少なくありません。ちなみに当時、ご主人は40歳前後。付き合いなどの誘惑も多かったはずです。しかし仕事のとき以外は、奥さまに付きっきりでした。当たり前と言われるとそれまでですが、奥さまに寄り添う姿は忘れられません。
今回は、「飲酒や自傷行為から本人を守る」という特殊な案件でした。昨今、ボディーガードのご依頼は、予想外のお悩みが少なくありません。認知度的には、欧米には及ばない日本のボディーガード。しかし、ニーズの幅広さは欧米より上かもしれません。
(一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事 加藤一統)

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