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トイレ用洗剤をウイスキーに入れ替え…重症の妻を守るための“監視”〜実録・ボディーガード体験談

「妻が酒を飲んで倒れた!」

 その日は土曜で、警護は休みでした。しかし昼過ぎに、ご主人から電話が入りました。「妻が酒を飲んで倒れた!」と。

 家に酒は置いてありません。つまり、「(私が)買うのを見落とした」と、ご主人は興奮気味に責め立てました。しかし、買い物のときは必ず私が横にいるので、その隙を見て買ったとは考えられません。万引が頭をよぎりましたが、そもそも酒類を扱う売り場には近づいていなかったのです。

 私はとにかく、お宅へ向かいました。1時間ほどで到着すると、ご主人が沈んだ表情でドアを開けました。「奥さんのご様子は?」と聞くと、吐き疲れて寝室で横になっているとのこと。幸い、救急車を呼ぶほどではなかったそうです。

 ご主人は私を書斎に通すと、「申し訳ない!」と頭を下げました。「たぶん、酒はもともと家にあったのだと思う」と言うのです。

 話によると、半年ほど前にも同じようなことがあったとのこと。「彼女がどこかに酒を隠しているに違いない」と、家中を徹底的に捜索したらしいです。くまなく探した結果、見つけたのはウイスキーやカップ酒など計3~4本。中には、くりぬいた壁にふたを作るなど、まるで映画さながらの隠し場所もあったというから驚きです。

 ご主人は「あれだけ徹底的に探したのだから、もうないだろうと油断していたが、見落としがあるかもしれない」と考えたそうです。とはいえ、自分で見つける自信はないので、「盗聴器を発見するプロに探してもらえないか」と相談されました。しかし盗聴器と違い、酒は電波を出さないので、目で探すしかありません。

 私は「残念ですが、業者でも見つけられないでしょう」と言いましたが、ご主人は、わらにもすがる思いです。「それでも構わない! 少なくとも、素人の自分よりは見つかる可能性が高い」と譲りません。仕方がないので、知り合いの調査会社に連絡を取りました。前例も自信もないということで、先方は乗り気ではありませんでしたが、「酒が見つからず、後日出てきても一切文句を言わない」という条件で引き受けてもらいました。

 1週間後、2人の調査員が家の中を捜索しました。引っ越しさながらに、全ての家具を移動させる大がかりな作業です。10時間の捜索の結果、酒が2本見つかりました。トイレの棚の奥にくりぬかれたスペースが作られていたり、ソファの足の筒が広げられて、細い瓶が入るように加工されていたりしました。手伝う人などいないので、全て奥さまの自作でしょう。よく見ると雑ではありましたが、パッと見ただけでは分からないレベルでした。

 見つけた酒を前にして、ご主人が奥さまに聞きました。「他には隠していないの?」と。彼女は「ない」と否定しましたが、本人もピンと来ていなさそうです。おそらく本当に覚えていないのでしょう。実際、まだ酒は隠されていましたが、それが分かったのは奥さまの入院後です。

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加藤一統(かとう・たかのり)

一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事

1995年より身辺警備(ボディーガード)に従事し、これまで900件以上の警護依頼を請け負う。業界歴26年。現在は、優良なボディーガード会社や探偵会社を探すユーザーに向けた無料紹介所「ボデタンナビ」を主宰。紹介だけでなく、企業のセキュリティーから家庭の防犯まで、網羅的な質問にも答えている。護身・防犯用品の設計企画を行う「タカディフェンスデザイン」も運営。ボデタンナビ(https://bhsc.or.jp/)、タカディフェンスデザイン(https://www.t-d-design.com)、公式ツイッター(https://twitter.com/bodetan)。

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