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「母親はよくても子には影響あるはず」との声も…「未婚の母」に法的なメリットはある? 弁護士が解説

法律上の明らかなデメリットは「ない」?

Q.出産・育児をする上での、結婚をする/しない、それぞれの選択による法的なメリットとデメリットは。

佐藤さん「結婚する選択をする人、しない選択をする人にはそれぞれの理由があると考えられるので、メリット/デメリットの捉え方は人によって異なるでしょう。例えば、夫婦別姓を貫きたい場合、母親・父親には結婚しないメリットがあると思います。

先述の父子関係の安定性に関する考え方もさまざまです。早期に父子関係を安定させることを重視する母親・父親にとっては、結婚してから妊娠・出産するメリットが大きいですし、一般的には、父子関係の安定は子の福祉にかなうと考えられるため、子どもにとってもメリットになると思います。

一方、法的な父子関係を生じさせることによって、逆に、子も父親に対して扶養義務を負うことになりますし、法定相続人になることで、父親の借金を相続してしまうことも考えられます。こうした父子関係をデメリットと受け止める人にとっては『結婚も認知もしない』という選択がメリットに感じられるでしょう。

また、『認知さえすれば、法律上の父子関係は認められるのだから、結婚はしなくてよい』と考える母親、父親もいるでしょう。2013年12月より、相続分について、結婚している親から生まれた子と結婚していない親から生まれた子との間にあった不平等が解消され、子にとっても、親が結婚しないことによる法律上の明らかなデメリットはなくなっています」

Q.未婚の母として子どもを育てていく場合、養育義務や金銭面(養育費や生活費など)に関する取り決めはどのように行われることが多いのでしょうか。

佐藤さん「この場合、認知して、法的父親を確定するケースが多いのではないかと思います。認知があれば、父親は扶養義務(子が父親自身の生活と同程度の生活を送れるようにする義務、民法877条1項)を負うことになります。

その上で、父母で養育費の金額について協議します。双方が合意すれば、金額はいくらでも構いませんが、協議が調わない場合、家庭裁判所で決めてもらうことになります。家庭裁判所は父母の収入に応じた養育費の相場表を作っており、この表から大きく外れない金額に決まることが多いです。父母の収入にもよりますが、月額4万~6万円程度に決まるケースが多いのではないかと思います。なお、認知しないままでも、父母で話し合い、『血縁上の父親が任意に養育費を支払う』という合意もできます」

Q.仮に、女性側が未婚の母として育児をすることを希望しているものの、(子の父親である)男性側が結婚や親権を望んだ場合、どうするのがよいのでしょうか。

佐藤さん「父親である男性が結婚を望むならば、まずは女性とよく話し合い、結婚に同意してもらうよう働き掛けることが大切です。しかし、結婚は双方の合意がなければ成立しないため、妊娠・出産という事実があったとしても女性側が応じない限り、結婚することはできません。

結婚できない場合、まず、男性は子どもを認知し、法的な父親になります。その後、親権者を父親と定められないか母親と話し合うことになります(民法819条4項)。話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に親権者の変更を認めてもらう手続きをします。家庭裁判所は子どもの福祉の観点から、親権者としてふさわしいのは誰かを考えるため、父親としては子どもとたくさん交流し、のびのび育てていける環境を整えることなどに努めるとよいでしょう」

Q.近年、芸能界では、未婚の母を選択するケースが増えており、ネット上でも「経済的に何とかなるなら私もそうしたい」という声がある一方で、「子どものことを考えると、カジュアルに未婚を選択すべきではないと思う」との声も少なくないようです。

佐藤さん「結婚や妊娠、出産、家族の在り方についてはさまざまな価値観が存在します。また、それぞれが置かれている状況もさまざまで、母親・父親にとっても、子どもにとっても、どのような選択がよいのかはそれぞれ異なるものだろうと思います。

私自身は父子関係の安定は子どもにとって大切なものだろうと考えており、結婚してから、妊娠・出産しました。母親、父親となる人は自身の価値観や生まれてくる子どもの幸せと真剣に向き合い、それぞれが自由に選択することが大切だと思います」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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