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習近平氏「4期目」視野? 胡錦濤氏「退席」の真相は? 中国共産党大会のポイントを専門家が解説

胡氏退席時、幹部「無表情」の異様さ

Q.胡錦濤氏が党大会の閉幕式を途中退席しました。新華社通信はツイッターで「体調不良のため」と投稿しましたが、退席を嫌がったようにも見え、さまざまな臆測を呼んでいます。

青樹さん「本当に異様な光景でした。何度映像を見直しても、体調不良ではなく、強制的に退席させられたように見えます。

私は、江沢民総書記の時代に、某イベントで総合司会を務めたことがあります。江沢民氏も出席していたのですが、途中でスタッフ2人に支えられて中座されました。体調不良かと心配になったのですが、トイレに行かれただけだったようです。今回の胡錦濤氏の退出劇を見ていて、当時の江沢民氏の中座シーンを即思い起こしました。江沢民氏の時は、スタッフ2人が江氏の両脇にそれぞれ腕を入れて、助け起こしていたのですが、そこには愛情がありました。

しかしながら、今回、胡錦濤氏を退出させたスタッフからは、愛情がまったく感じられない。力ずくで立たせて、その場を去らせたという印象です。江氏は自分で歩くのが難しかったようですが、胡錦濤氏は十分自分で歩くことができていました。スタッフが介添えする必要は感じられません。

胡錦濤氏が退出に至るまでの様子も、かなり異様でした。胡氏が自分の目の前にある資料を見ようとするのを、隣の栗戦書氏が阻止した光景です。資料は名簿だったようで、『胡氏に近い人物が党中枢から排除されたことを、胡氏に意見されたくなかった』との推測もありますが、はっきりしません。

特に恐ろしさを感じたのは、胡氏が退場させられる、まさにその瞬間です。栗戦書氏が隣で立ち上がって手助けしようとしましたが、その隣にいる王滬寧氏が、『余計なことをするな』と言わんばかりに、栗氏の服を引っ張ったのです。

周りの要人たちも『関わり合いにならないように』と思っているようでした。仮に健康上の理由での退席だったら、前国家主席が出ていくのに、要人たちが見て見ぬふりをするはずがありません。

中国人は自分より年齢の上の人に対する礼儀は、子供の頃からたたきこまれています。例えば地下鉄やバスでも、少しでも白髪があるなどすると、みんなためらわずに席を譲る。日本の優先席では、目の前に高齢者が立っていても、無視して居眠りする若者もいますが、中国ではあり得ません。

胡錦濤氏は前国家主席です。しかもご高齢です。もし本当に体調不良での退席だったとしたら、その場にいる全員が立ち上がって、胡氏の手助けをしたはずです。

しかし現実には、皆、前を向いて無表情。これはあり得ません。誰一人、健康上の理由とは思っていなかった証拠です。『ここで声をかけると、自分の立場がまずくなる』という思いがあったのではないでしょうか。

国家主席の任期はかつて2期10年まででした。なぜ制限したかというと、文化大革命の反省があったからです。毛沢東氏への権力集中から大混乱が起きたことを反省し、個人崇拝を禁じて、権力が長く続かないようにしたのです。

胡錦濤氏の退席は、真の理由はどうあれ、中国共産党の集団指導体制が終わってしまった象徴といえます。これまでとは違う新たな時代に突入した、その歴史的瞬間をわれわれは見たと思います」

Q.習近平氏の体制は盤石になったのでしょうか。

青樹さん「表面的にはそう見えますが、国民の不満はくすぶっています。10月13日、『横断幕事件』が起きました。習近平氏の『ゼロコロナ政策』などを批判する内容の横断幕が、北京市内で掲げられた衝撃的な出来事です。『文化大革命は不要、改革が必要』『PCR検査は不要、食事が必要』といった内容でした。

場所は、北京市海淀区の『四通橋』という高架橋で、かつて私は、この橋の傍らのホテルに2年以上住んでいました。橋のすぐ北が中国人民大学という有名大学で、そもそも海淀区というのは大学が集中し、知識人が集まっている、北京を代表する文教地区です。北京で最も偏差値が高い区域と言われていて、そこに習近平体制を批判する横断幕が掲げられた、驚くべき事件です。

1989年の天安門事件では、戦車に立ち向かう若者が世界で『タンクマン(戦車男)』と呼ばれました。今回、横断幕を掲げた男性は『ブリッジマン(橋男)』と呼ばれています。その場で逮捕されたようですが、党大会終了直後、彼が横断幕に書いた内容の落書きが映画館のトイレで見つかったり、ネット上で出回ったりしました。

横断幕に彼が書いたことは、庶民の不満の声を代弁しています。そうした空気の中で、習近平氏の3期目はスタートしたといえます」

(オトナンサー編集部)

【写真5枚】胡錦濤氏、「退席」までの流れ

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青樹明子(あおき・あきこ)

ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家

早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。大学卒業後、テレビ構成作家や舞台脚本家などを経て企画編集事務所を設立し、業務の傍らノンフィクションライターとして世界数十カ国を取材する。テーマは「海外・日本企業ビジネス最前線」など。1995年から2年間、北京師範大学、北京語言文化大学に留学し、1998年から中国国際放送局で北京向け日本語放送のキャスターを務める。2016年6月から公益財団法人日中友好会館理事。著書に「中国人の頭の中」「『小皇帝』世代の中国」「日中ビジネス摩擦」「中国人の『財布の中身』」など。近著に「家計簿から見る中国 今ほんとうの姿」(日経プレミアシリーズ)がある。

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