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30代も要注意! “激痛”で知られる「痛風」、どんな病気? 内科医に聞いた

激痛を伴うことで知られる「痛風」ですが、そもそもどんな病気なのでしょうか。痛みの原因やリスクなどを内科医に聞きました。

「痛風が怖い」とおびえる人も…
「痛風が怖い」とおびえる人も…

 足の関節に激痛が走ることで知られる「痛風」。30〜60代の幅広い年齢層にみられる病気ですが、「30歳を超えると痛風が怖い…」とおびえる若年層も少なくないようです。また、痛風そのものについても、「どのくらい痛いの?」「男性の方が多いイメージだけど、女性もリスクある?」「完治する病気なの?」など、疑問の声も聞かれます。

 激痛を伴う「痛風」に関するさまざまな疑問について、内科医の市原由美江さんに聞きました。

痛みが起こる場所はさまざま

Q.「痛風」とはどんな病気ですか。

市原さん「まず、血液中の尿酸の濃度が高くなること(1デシリットル当たり7.0ミリグラム以上)を『高尿酸血症』と呼びます。この、高尿酸血症のことを痛風と呼ぶ風潮にありますが、正確には、高尿酸血症により足の親指の付け根などに痛みが出た状態を『痛風』、または『痛風発作』といいます。高尿酸血症および痛風は20代から増加しますが、特に30代の男性に多い傾向にあります」

Q.痛風といえば“激痛”を伴うことで知られていますが、なぜそれほどに強い痛みが出るのでしょうか。

市原さん「尿酸値が高い状態が続くことで、尿酸結晶が関節にたまります。その一部が関節液中に剥がれ落ちると炎症反応が起こり、激痛が走るのです。尿酸値が急に下がったり、急に上がったりするといった変動でも痛風発作は誘発されます。

ちなみに『痛風』の由来は、『風が吹いても痛い』ことからきているようで、『痛みで歩けない』と表現されることが多いです。痛みが起こる場所は、足の親指の付け根が一番多いですが、足関節、足の甲、アキレス腱(けん)、膝関節、手関節などさまざまです」

Q.一般的に、痛風は「男性の発症が多い病気」とのイメージがありますが、実際のところはどうでしょうか。

市原さん「一般的には男性に多いですが、女性に起こらないわけではありません。尿酸が上がる原因として、食べ過ぎ(特に肉類や魚卵、果糖、清涼飲料水)▽お酒の飲み過ぎ▽水分をあまり摂取しない▽野菜や海藻類を食べない―などが挙げられます。これらは女性でも起こり得るものです。また女性の場合、閉経後に尿酸値が上がりやすくなります」

Q.痛風になりやすい人の特徴はありますか。

市原さん「30歳以降の男性▽肉類の摂取が多い人▽魚卵が好きな人▽清涼飲料水や果糖の摂取が多い人▽野菜や海藻類が嫌いな人▽肥満傾向の人▽運動不足の人▽水分摂取を怠る傾向の人―などが該当します」

Q.痛風の初期症状とは。

市原さん「初期症状としては関節の違和感や、うずく感覚を訴えられます。痛風かもしれないと思ったら早めに内科や整形外科を受診しましょう」

Q.痛風になったら、どんな治療を行うのですか。また、完治や再発はしますか。

市原さん「食事や飲酒量に注意して食生活が改善できればよいのですが、改善できない場合は内服薬を飲むことになります。最近の尿酸値を下げる薬は効きやすいので、薬でコントロールできることがほとんどです。

なお、薬を内服している間に、減量や生活改善で尿酸値が大幅に下がったり、特に生活に変化はないものの自然と尿酸値が大幅に下がったりして、数値が安定することがあります。その場合は薬を減量したり、中止したりします。薬を内服する場合の目標値は尿酸値が6.0ミリグラム(1デシリットル当たり)未満とされています。ただし、薬の内服をやめてもよいレベルにまで数値が改善していても、食生活で再度悪化する可能性は十分にあります」

Q.30〜40代の男性の中には、「痛風になったらどうしよう…」とおびえる人も少なくないようですが、痛風を予防する方法はあるのでしょうか。痛風リスクの高い人が日頃から意識するとよいことやNG行動も教えてください。

市原さん「尿酸値が高いのであれば、数値を下げない限り、痛風発作を起こす可能性はあります。お酒を含めて、尿酸値を上げるような食生活は控えましょう。脱水によって一時的に尿酸値が急上昇することもあり、これも痛風発作の原因になります。水分を普段から多く摂取してください。改善しないのであれば、内服薬での治療を行うことになります。

なお、痛風発作が起こったときだけ病院を受診する人が少なくありませんが、尿酸値が高いままであれば、発作は繰り返し起きます。また、尿酸値が高いままだと、腎障害や尿路結石を発症するリスクもあるので、放置はお勧めできません。たとえ尿酸値が高くて痛風発作を繰り返していても、薬によって尿酸値を下げ、数値が低い状態を維持できれば、数年で尿酸結晶が消えるといわれているので、治療を継続することが大切です」

(オトナンサー編集部)

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市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

eatLIFEクリニック院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。eatLIFEクリニック(https://eatlife-cl.com/)。

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