「夏は便秘になりやすい」って本当? 「食物繊維が逆効果」の真偽は? 医師が解説
「便秘は夏に起きやすい」との情報がありますが、本当なのでしょうか。その真偽や対策を医師に聞きました。
厳しい暑さが続いていますが、夏は発汗などで体から水分が失われる機会が多いため、便秘になりやすいという情報もあります。便秘を防ぐにはどのような対策が必要なのでしょうか。また、便秘には、食物繊維を含む食べ物を摂取するのが効果的だと聞きますが、「逆効果になることも」との情報もあります。本当なのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
水分量減少で便が硬くなる
Q.便秘の主な症状や原因について、教えてください。夏は便秘になりやすいのでしょうか。
市原さん「便秘とは、便を十分な量、かつ快適に排出できない状態のことで、便秘が続くと、おなかが張って痛みが出たり、吐き気が出て食欲が低下したりします。
大腸の動き自体が原因の場合、(1)大腸の動きが弱くなっているために大腸内にふん便が長時間とどまり、腸に水分を吸収されて便が硬くなる(2)副交感神経の興奮により大腸が過緊張を起こし、便がうまく運ばれずに水分が吸収されてコロコロした便になる――のいずれかの症状が出ます。
これらは食物繊維不足、水分不足、運動不足、精神的ストレスなどが原因で起こります。大腸の形が原因の場合は、腸閉塞(へいそく)や大腸がんなどにより、便の通過障害が起きている可能性があります。
夏は暑さで脱水しやすく、便秘になりやすいといえます。便に含まれる水分量が減るため便が硬くなりやすく、うまく排便されないこともあるでしょう」
Q.便秘が続くと、どのような症状が出るのでしょうか。受診した方がよい目安はありますか。
市原さん「腹痛や吐き気などの症状が出るほか、腸閉塞や痔(じ)、虚血性腸炎などの病気になることがあります。激しい腹痛や吐き気、嘔吐(おうと)、下血があるときは急いで病院に行き、診察を受けましょう」
Q.便秘を予防するための対策はありますか。また、水分を取る際はどのような飲み物が適しているのでしょうか。
市原さん「便秘を予防するには、腸内環境を整えることが大切です。ビフィズス菌や乳酸菌、食物繊維を積極的に取ることをおすすめします。よく、牛乳を飲むと便通がよくなるという人がいますが、それは乳糖を消化する酵素が少ないか働きが弱いためで、根本的な腸内環境の改善とは異なるのでおすすめはできません。
水分摂取には水がおすすめです。緑茶や紅茶、コーヒーなどのカフェインを含んでいる飲み物は利尿作用があるので、大量に飲むことはおすすめしませんが、500ミリリットル入りペットボトル1本くらいであれば、気にせず飲んでも問題ないでしょう」
Q.しかし、食物繊維を取るとかえって便秘が悪化するという情報もあります。本当なのでしょうか。
市原さん「食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は、海藻類や豆類、芋類、カボチャ、大麦に多く含まれています。善玉菌のエサとなるため腸内環境を改善する働きがあり、便を軟らかくします。
一方、玄米やゴボウ、ニンジン、ホウレンソウなどに含まれる不溶性食物繊維は、便のかさを増したり有害物質を排出したりする働きがありますが、便のかさが増すため、便秘がひどい人が多く取ると逆に便秘が悪化することがあります。便秘の症状が重い人が食物繊維を取るなら、水溶性食物繊維にしましょう」
(オトナンサー編集部)
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