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冷蔵庫に常備する「作り置きのお茶」、安全に飲めるのはどのくらい? 衛生面の“注意点”とは

夏場、家庭の冷蔵庫に常備しておくと便利な、作り置きのお茶。一方で、日持ちや衛生面を気にする声も聞かれます。安全に飲める期間について、管理栄養士に聞きました。

作り置きのお茶、いつまで飲める?
作り置きのお茶、いつまで飲める?

 夏場はお茶パックや茶葉から「お茶」を作り、冷蔵庫に常備している人も多いことでしょう。一方で、家で作ったお茶は「安全に飲める」日数・期間の明確な基準がなく、「水出しだとちょっと不安…」「お茶パックは入れっぱなしでいいの?」といった、日持ちや衛生面を気にする声が少なくありません。

 作り置きのお茶は、どのくらいまで安全に飲めるのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

煮出しよりも「水出し」の方が傷みにくい

Q.家で作ったお茶をおいしく、安全に飲めるのは、どれくらいの期間でしょうか。

岸さん「基本的に、家庭で作ったお茶は冷蔵で2~3日の保存を目安にするのが安全です。過去に、エフコープ商品検査センターりんご館(福岡県宗像市)が行った実験によると、煮出しの麦茶、水出しの麦茶いずれも、作ってから少なくとも5日目までは細菌の数が安全に飲める基準値以内だったそうです。『煮出して、粗熱を取ってから冷蔵』か『水出しして冷蔵』が一般的だと思いますが、確実に安全に飲める基準として2~3日と考えておけば安心です。

意外に思われるかもしれませんが、煮出しよりも水出しの方が傷みにくいと考えられ、これは水道水に含まれる塩素による効果とされています。つまり、浄水器やミネラルウオーターを使った場合には、逆に傷みやすくなる傾向があるということですので、注意が必要です」

Q.家で作ったお茶が傷む原因や、傷んでいるサインを教えてください。

岸さん「お茶用ボトルやお茶パックなどに潜む雑菌が時間の経過とともに増殖することで傷み、風味や味、においに変化が起きます。とろみやぬめりが出てきたり、表面に膜のようなものが現れたり、白い浮遊物やカビのようなものが見えるようになったら、傷んでいるサインです」

Q.お茶の種類によって、傷みやすさに違いはありますか。

岸さん「ウーロン茶や緑茶、紅茶は抗菌作用のある『カテキン』を含む分、比較的傷みにくいです。一方、麦茶やコーン茶、黒豆茶などの穀物茶には菌の栄養分になる炭水化物が多く、また、カテキンを含まないため、比較的傷みやすいです。

ほうじ茶は番茶をいって作るため、いることでカテキンが少なくなり、傷みやすくなります。また、煮出したルイボスティーは、『フラボノイド』が酸化を防いでくれるため、常温で2〜3日程度、冷蔵庫で5〜6日程度保存できます。一般的なお茶より保存が利くことは事実ですが、当然ながら、暑い時期は常温保存を避けるようにし、できるだけ早めに飲み切るようにしましょう」

Q.作り置きお茶用のボトル(ピッチャー、冷水筒など)の素材は、お茶の傷みやすさに関係しますか。

岸さん「プラスチックなど、傷が付きやすい材質のボトルは傷の間に雑菌が残りやすいため、お茶が傷みやすくなる可能性があります。洗いにくい形状や、保管する際に水滴が残りやすい形状のボトルも雑菌が付きやすくなるため、注意が必要です」

Q.作り置きお茶用のボトルに直接、お茶パックを入れたり、フィルターに茶葉を入れたりして作る際、お茶ができた後もパックや茶葉は入れておいてよいのですか。

岸さん「お茶パックや茶葉は、お茶ができ上がった時点で必ず取り出してください。水出しであれば、多くは『2~3時間ででき上がり』と記載されていると思いますので、基本的には説明に従いましょう。パックや茶葉を入れっ放しにすると、茶葉に菌が付着していた場合や、デンプン質の多い種類の使用では特に、雑菌が繁殖してしまう可能性があります。そのため、茶葉は長く入れておけば置くほど、雑菌が増える可能性が高まります。

『長く入れておくほど、おいしくなる』と思う人がいるかもしれませんが、茶葉は時間経過とともに腐敗や変質が始まり、香りや味わいが楽しめる適度な抽出時間を過ぎると苦味が出たり、香りが損なわれたりすることもあります。おいしく飲むためにも、雑菌の繁殖を防ぐためにも、でき上がったら取り出しましょう」

Q.その他、家庭でお茶を作る際、衛生面で気を付けた方がよいこととは。

岸さん「先ほど述べたように、ボトルに潜む雑菌は、お茶が傷む原因となります。お茶を入れるボトルを使用前に殺菌消毒しておくと日持ちがよくなります。また、飲み終わったペットボトルをお茶の容器に使う人もいるようですが、衛生的に危険なのでやめましょう」

(オトナンサー編集部)

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岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

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