日常生活で使わない? 「デシリットル」を子どもに理解させるコツ
日常生活上では使う機会の少ない単位「デシリットル」。子どもがつまずきやすいこの単位を分かりやすく教えるコツについて、筆者が解説します。

いきなりですが、質問です。「1000ミリリットルは、何デシリットルですか?」
正解は「10デシリットル」です。瞬時に答えられた人は、この単位を使う職業に就いている、もしくは小学校や塾の先生ではないでしょうか。その他の人が答えられなくても恥ずかしくはありません。「デシリットル」という単位で売っている飲み物は、日本中どこのスーパーに行ってもありません。日常生活の中でほとんど使われていない単位なので、とっさに分からないのは当然なのです。
文部科学省に電話してみた
ついこの間まで幼児だった子どもが、小学校に入学後、2年生で「リットル、デシリットル」を習います。「え、2年生で習うの?」と思った人もいると思いますが、今はもう“ゆとり教育”の時代ではありません。昔は4年生で教えていた「かさ」の単元は、今は2年生で習います。
私は長年、学習塾で小学生に算数を教えていましたが、学力が比較的高い生徒でもつまずくのがこの単位です。最初はリットル、デシリットルの記号を「英語だぁ~」なんて喜んでなぞっているのですが、「◯◯ミリリットルは何デシリットルですか?」の換算問題が登場するとお手上げ状態になる子どもが多く、この問題を出されると嫌がっていました。
「なぜ、実生活であまり使わない単位を2年生から覚えさせるんだろう」と疑問に思った私は、文部科学省に電話で問い合わせたことがあります(誰が電話しても担当課に回してくれて、懇切丁寧に教えてくれます)。そして、その理由を聞いてみました。すると、電話口に出た係の人は次のように言いました。
「この単位は現在のところ、豆や穀類を小売りする際に用いられています。計量法の施行により、従来使われてきた尺貫法ベースの計量単位が商取引に使えなくなったため、1合(約1.8039デシリットル)に比較的近い2デシリットルを、販売の基準としています。リットル、デシリットルは2年生で学びますが、確かに日常での使用頻度は少ないので、お子さんには難しいかもしれませんね」
つまり、「日常ではあまり使わないけれど、計量法があるので、義務教育で教える」ということです。とはいえ、リットル・デシリットルを算数で学ぶのと同時期には、掛け算や、繰り上がりのある引き算、足し算で奮闘している子もいるのに、ここに時間を割く必要があるのかと私は感じていました。
どうやって教える?
では、子どもに分かりやすく教えるにはどうするのがいいのか。お風呂に入りながらできる方法を考えてみました。
まず、1000cc(1000ミリリットル)の計量カップを準備し、お風呂のお湯を入れましょう。そして、「はい、1000ミリリットルね」と言いながら、息苦しくならないように注意しつつ、子どもの頭にジャーっとお湯をかけます。2杯目も「はい、また1000ミリリットルね」とかけます。5回かけて、「今日は5000ミリリットルかけました」、時には「5リットル、50デシリットル、5000ccね」と、同じ量を違う単位で言ってみましょう。
また、500ミリリットル、100ミリリットルなど、さまざまな計量カップが売られているので、「100ccカップのお湯を10回入れて1000ccにする」「500ccカップを2回入れて1000ccにする」「1ccを100回かける」など、遊びを発展させることができます。ちなみに、1ccを計るときは、生活雑貨店などの実験用具コーナーにある注射器のスポイトが使えます。
実際にこの遊びを自宅でやってみて、「お父さんは頭の毛が薄いから、500ミリリットルを1回かけただけで、せっけんの泡が頭から消えたよ。節水、エコだ」と言っている子どもがいました。実体験を通して、感覚的に分かるようにもなっていきます。さらに、牛乳やジュースを飲むとき、ただ飲むだけでなく、パック裏の表示を見せてもよいですね。
お金の計算や時間の換算といった算数の問題は、実体験していなければなかなか理解できません。日常生活で体験できず、子どもたちが苦戦しがちな「かさ」の単元も、お風呂で体験させることで、解くことができるようになるかもしれませんね。
(子育て本著者・講演家 立石美津子)
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