学生300人の猛抗議も…「ゼロコロナ」固執する中国・北京の不穏な空気
学生の猛抗議と、近づく「天安門事件」の日
Q.上海では、習近平国家主席の腹心が住民に罵倒される、という場面が動画で出回りました。そういった反発は北京では起きていないのでしょうか。
青樹さん「北京大学の学生たちが感染対策に抗議する動画が、SNSにアップされて話題となりました。中国国内ではすぐに削除されましたが、日本など国外では、YouTube上で今のところ見ることができます。北京大学など学校はすでに封鎖されていて、学生たちは、心理的に相当追い詰められている中での出来事です。
中国では、大学生はかつて、全員、大学構内の宿舎に、強制的に住まわされていました。現在は緩やかになっていますが、それでも宿舎替わりの寮があって、そこに住んでいます。今回、事件が起きたのは、そのうちの『北京大学万柳公寓』の中にある寮です。ここは大学院生専用で、大学院生に加えて、教職員も暮らしています。
ちなみに、中国の大学は、いわば一つの街で、大学や大学院に加えて、保育園、小学校、中学校、高校があって、教職員の住宅エリアがあって、銀行や郵便局、野菜市場、スーパーもある。すべてがそろっていて、生まれてから死ぬまで、外に出る必要はない、と言われるくらいの『街』です。私も北京滞在時代、よく大学の自由市場に買い物に行きました。
その『北京大学万柳公寓』ですが、感染対策として、北京大学がまず、フードデリバリーの利用を禁止しました。寮では簡単な煮炊きはできても、一般の自宅隔離された人のように料理はできません。フードデリバリーの利用禁止は、学生にとっては大きな問題だったのです。
厳格な移動制限もあり、さらに、学生寮に柵が設けられました。ところが、同じエリアに住む教職員の方には、柵が設けられませんでした。『教職員は出入りできるのに、自分たちはできない』と学生たちの怒りが爆発。猛抗議を始めたのです。
300人ほどが深夜に集結して抗議運動を起こしたのですが、その様子を伝えるYouTubeのコメント欄を見ると、多くの支持を集めています。コメント欄はすべて中国語なので、国外に住む中国人でしょう。『頑張れ』『さすがに北京大学は違う』『自由のために戦え』といったコメントです。中には『私は台湾人、あなたたちを支持する』というものもありました。中国共産党が最も嫌がるコメントです」
Q.学生たちの行動は、社会情勢に影響するのでしょうか。
青樹さん「中国では大きな事件が、大学から起きることがあります。特に『北京大学』はキーワードです。1919年に起きた反日運動の『五・四運動』。これは中華民国の時代ですが、北京の学生運動から始まったものです。
天安門事件(1989年)も学生がきっかけでした。中国国内ではいまだに『なかったもの』とされていますが、天安門事件は胡耀邦氏の追悼をきっかけに学生たちが集まり、民主化を求めるデモにつながりました。
今回も、学生が始めた集会から、大きな事件になる可能性はあります。しかも天安門事件が起きた6月4日がもうすぐやってきます。中国政府は、相当神経を使っていると思います」
Q.中国の専門家が「ゼロコロナの継続は困難」と発言したのに続いて、5月10日には世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も「ゼロコロナは持続不可能」との見解を示しました。習近平氏は、それでもゼロコロナを続けるつもりでしょうか。
青樹さん「WHOより自分の国、中国共産党の方を信じているのが現状です。中国人は、常に他国との比較で物事を考えます。ほかの国に比べたら、新型コロナの感染状況はまし。だからWHOより自分の国を信じるということです。
今後ですが、5月5日、習近平氏は『ゼロコロナを堅持する』と強調しました。これを境に、上海でも、より厳しい措置が取られるようになりました。一党独裁の体制では、トップが言ったら下は従います。今秋の共産党大会まで変わらないでしょう。『ゼロコロナ』を撤回すれば、習近平氏の3選がなくなるからです。
そんな中で気になるのは、今回の北京大学の騒動のような、学生運動です。私が中国でラジオ番組をしていたとき、民主化運動や台湾独立といった話題とともに、学生運動には絶対触れるな、と言われていました。『日本にも1970年代に学生運動があって…』という話をしようとしても、だめでした。日本の話でも避けるくらい、学生運動に対して神経質なのです。
6月4日が近づいています。特に何もなくても、6月4日は天安門広場を警備する警察官の人数が増え、警戒レベルが上がります。北京大の学生たちは、新型コロナで移動制限がかかっていますから、天安門に行くことはできないと思いますが、当局は、神経質になっているでしょう。注視したいと思います」
(オトナンサー編集部)



コメント