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帝王切開は母親の“甘え”ではない…投稿に共感の声「楽な方法じゃない」「無知は怖い」、医師に聞く

「帝王切開で出産するのは母親が甘えているからではない」という趣旨の投稿が話題に。「無知って怖い」と共感する声がたくさん上がっていますが、帝王切開の本来の目的とはどのようなものでしょうか。

帝王切開が必要なのはどんな時?

 SNS上で先日「帝王切開」に関する投稿が話題となりました。投稿者は、妊婦の友人がその夫から「手術痕なら仕方がないけど、帝王切開で傷とか絶対ダメだからね」と言われ、友人が「母親のせいで帝王切開になるんじゃない」と反論した一連のやり取りを紹介。「帝王切開は母親の甘えのせいとか本気で言ってる人がまだいるなんて」と感じたそうです。これについて「帝王切開は命がけで、楽な出産方法じゃないんだよ」「母体も胎児も危ないからするんだろう」「無知って怖い」などと共感する声が上がりました。

 帝王切開の目的やそのリスクとはどのようなものでしょうか。オトナンサー編集部では、医師の尾西芳子さんに聞きました。

全出産に占める割合は約2割

Q.帝王切開の目的や全出産に占める割合などを教えてください。

尾西さん「帝王切開とは、医学的に必要な場合にお母さんのお腹を切って赤ちゃんを取り出す手術です。最近は腰から下の麻酔で行うことが多く、お母さんも意識があるので出産の瞬間も経膣分娩(いわゆる通常のお産)と同じように感じられます。また、ショーツに隠れるくらいの位置を横向きに切るので傷もそこまで気になりません。体質にもよりますが、手術後にきちんとケアをすると、ほとんど分からなくなる方も多いです。『医学的に必要な場合』は2つあって、手術をしないと『お母さんに危険が及ぶ場合』と『赤ちゃんに危険が及ぶ場合』です。前者は、お母さんに持病があったり、妊娠中に妊娠高血圧症候群(HDP)になってしまった場合などです。この場合、放っておくとお母さんだけでなく赤ちゃんにも危険が及ぶことがあります。後者は、双子などの多胎であったり(双子に関しては経膣分娩をする病院もあります)、分娩経過中に赤ちゃんの具合が悪くなってしまった場合などです。また、赤ちゃんが大きくお母さんの骨盤を通れないことが予想される場合も帝王切開を行います。帝王切開の全出産に占める割合は約2割です」

Q.帝王切開に伴うリスクやデメリットにはどのようなものがありますか。

尾西さん「帝王切開は、希望する方に行うというものではありません。というのも、帝王切開にはリスクがあるからです。まず、麻酔によるリスクとして(腰椎麻酔の場合)術後の頭痛や神経障害、アナフィラキシーなどのアレルギー反応が考えられます。また、手術に伴うリスクとして大量出血、肺塞栓などの血栓症、傷からの感染や、次回の出産で子宮破裂するリスクが上昇するといった危険もあります。こうしてみると怖くなるかもしれませんが、医師はこのリスクよりも、帝王切開しない場合のお母さんや赤ちゃんへのダメージの方が大きいと判断した時だけ手術をしているので、心配しすぎる必要はありません。また、陣痛を感じていないから『母親として失格』などと言われることもあるようですが、手術後の傷の痛みは経膣分娩の痛みより長引くことが多いです。帝王切開は決してお母さんの“気の弱さ”などではなく、命がけで産むことに変わりはありません」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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