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シュークリームはダイエット食? あなたならどのように伝える

新刊「ちょっとしたことで差がつく 最後まで読みたくなる 最強の文章術」の中から、文章術に関するエッセンスを紹介します。

文章の「つかみ」とは?
文章の「つかみ」とは?

 人前で話をするときなども同様ですが、文章でも読み手の心をつかむためには、つかみ、つまり文章のはじめに置くフックが大事です。はじめの数行で読み手の心にフックがかからないと読んでもらえません。フックで相手の心をつかみ、心を刺激することが重要なのです。

 導入部分で、「あれ?」「何だろう、これは」と思えるような事実や数字を入れることで読者を誘い、次の一文へと誘導することが可能になります。今回は、筆者の新刊「ちょっとしたことで差がつく 最後まで読みたくなる 最強の文章術」(ソシム)の中から文章術に関するエッセンスを紹介します。

文章で最も大事な「つかみ」とは

 私はさまざまなサイトでニュース記事も執筆していますが、その際、必ずタイトルやイントロに、フックがかかるような仕掛けをしています。これまで反響のあった記事の見出しをいくつかあげてみましょう。

・シュークリームはダイエット食である
・上司の言葉の暴力を「バラ色」にかえて乗り切る方法
・「的を得ない」「的を射ない」正しいのはどちら?
・「1分の遅刻」はいくらの損失なのか!?
・ 無地とチェック。デキる人のワイシャツはどっちか?

 いかがでしょうか? どの記事も多くの皆さんに読んでいただきました。シュークリームとダイエット、暴力をバラ色に、など意外なキーワードの組み合わせや、普段の行動に関するドキッとする提案など、見出しだけで記事へと誘導するようフックをかけていきます。

 フックが大事といっても、そればかりに意識が向くと、過剰な書き方になったり、内容が伴わない文章になったりしてしまうので注意してください。

 例えば、シュークリームとダイエットは結びつかないように見えますが、シュークリーム自体は低カロリーです。ショートケーキやベークドチーズケーキが1個約400~500キロカロリーなのに対して、シュークリームは200キロカロリー程度。半分程度のカロリーしかありません。

 さらに、シュークリームには「ミニシュークリーム」が存在します。こちらは、1個で30キロカロリー程度。ミニシュークリームのパックは6個入りがスタンダード。6個も食べれば腹持ちもよくなり満腹感を得られます。ショートケーキ1切れと比較してどちらにダイエット効果があるかは言うまでもありません。

 ダイエットは「太りすぎを防ぐために低カロリーの食品をとること」を意味する言葉です。高カロリーなケーキを避けて、低カロリーなミニシュークリームを推奨した内容ですから、ダイエットの意味にも適合しています。

 さらに、この記事は取材記事として仕上げました。私がいきなりダイエットの記事を書いたところで説得力がありませんが、この記事は管理栄養士として活動される、菊池真由子さんにヒアリングしたものです。非常に大きな反響がありました。

記事のオチはどうなったの

 また、フックをかける際には全体のストーリーと最後のオチ(締めの言葉)をイメージしておく必要もあります。記事全体で何を言いたいのか、何を主張したいのかをはっきりさせないと、表現だけに走ってしまうからです。シュークリームの記事のオチをお見せしましょう。

「シュークリームの特徴はサイズに幅があることです。小さいミニシューは見かけますが、ミニショートケーキを見かけることはないと思います。例えば、コンビニでは『ミニシュークリーム』のセットを売っていますが6個入りが標準です。一つの大きさは、親指と人さし指で輪をつくったくらいのものです」(菊池さん)

「ミニシュークリームはありますが、ミニショートケーキはありません」という流れを読ませ、間食ゼロの日をつくるなどメリハリをつけることの必要性を訴えました。

 さまざまな商品やサービスがあふれている時代、相手に「おっ!」と思わせる何か、つまりフックがないと話を聞いてもらうこともできません。まずフックで読者の心をがっちりとつかむ。そして相手が読み終えた後、「そういうことだったのか」と納得してもらう。それが相手の心を刺激し、行動へと移らせることのできる文章を書く秘訣(ひけつ)につながります。

(コラムニスト、著述家 尾藤克之)

尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家 尾藤克之

コラムニスト、著述家。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。代表作として『頭がいい人の読書術』(すばる舎)など21冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も絶賛公開中。

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