オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「妻の方が年収高いなんて…」と嘆く48歳夫、「男性は稼いで当たり前」は続くのか

日本では、「稼がない男に厳しい」という指摘があります。男女平等が叫ばれる昨今でも、「男は仕事、女は家事」という価値観が残っている風潮を、世の中の人はどのように考えているのでしょうか。

「稼がない男に厳しい」風潮は続く?
「稼がない男に厳しい」風潮は続く?

 日本では、「稼がない男に厳しい」という指摘があります。まったくの無収入というわけではなく、「あまり収入が多くない」という意味ですが、言われてみると確かに、女性よりも男性の収入の方が話題になることは各所で見られます。女性の社会進出が少しずつ進んでいても、かつて主流だった「男は仕事、女は家事」という価値観が根強く残っているとしばしば感じます。こうした風潮について、世の中の人たちはどのように考えているのでしょうか。

男性は稼ぐのが当たり前

 Aさん(48歳男性)の世帯では、2人目の子どもが生まれた時点で、妻が勤めていた会社を退職しましたが、かつて共働きをしていた頃は、妻の収入が夫を大きく上回っていたそうです。Aさんは「悔しかった」と話します。

「自分の収入も決して低い方ではないのですが、年収で妻に勝てることはありませんでした。あれは悔しかったし、妻が退職したことでもう勝負する機会もないので、勝ち逃げされたような気持ちです。収入で妻に負け続けており、昔から妻には頭が上がらなくて、今後も一生上がらないだろうと思います」(Aさん)

 Aさんは、メーカーの営業職でかなり数字に貪欲なタイプ、一方妻は、外資系金融勤務で、Aさんいわく「涼しい顔で稼いでくる」タイプだったそうです。

「『男だから稼がなきゃいけない』というのは僕自身が何より強く思ってきたことなので、『そうした風潮がある』と聞かされても、ごく当然のことを改めて言われているように感じます。

ただ、昔の僕と同じように『共働きで妻の年収の方が高い』という30代の後輩を何人か見てきたのですが、彼らは『負けてる。悔しい!』とはあまりならないみたいですね。そもそも、収入の多少に勝ち負けを考えていないというか…。そうした後輩たちと話していると、『自分は古い人間なのかな』と思います。

もちろん、夫婦間の収入の大小にこだわるガツガツした若手もたまにいますけどね。割合が、僕ら世代に比べると減っている気はします」

 今も昔も、妻の収入が夫よりも高いケースは決して珍しくありませんが、夫の心の持ちようによっては、そこに悔しさなどの葛藤が生まれるようです。

「男女平等」ではないのか?

 Bさん(35歳男性・未婚)は、「稼がない男に厳しい」という風潮を疑問に思っているそうです。

「あれだけ『男女平等』とうたわれているのに、『男性は稼いで当たり前』という価値観がまかり通っていることには違和感を覚えます。『“男女平等”と言うけど、実際は女性のおいしいとこ取り?』という気がしてしまうのです。

『稼がない男は駄目』なのか、『男女平等』なのか、どっちかにしてほしいですね。どちらか一つだけなら異論はありません」(Bさん)

 女性側の意見はどうでしょうか。夫婦共働きのCさん(36歳女性)に聞きました。

「『男性は稼いで当たり前』という考え方について、普段は考えたことがありません。質問されて初めて意識しました。『確かに浸透しているかも…』と思う反面、『本当にそう考えている人は一部なのでは?』という気もします」(Cさん)

 Cさんは自身を振り返って、こう話します。

「夫は会社員ですが、以前、会社を辞めて起業することを検討した時期があり、夫婦で何度も話し合ってきました。私は夫の起業に賛成していました。やりたいことにはチャレンジしてほしいと思いましたし、もし夫の収入がゼロになっても、私の収入があるので夫婦で生活はしていけます。

結局、夫は起業しなかったのですが、あの時私が自然な形で夫を応援する気になり、『夫の収入がなくなるなんて不公平』と思わなかったので、少なくとも私は『男性は稼いで当たり前』とは思っていない、と思います」

 しかし、Cさんも時には「男性は稼いで当たり前」という前提で人と会話することがあるようです。

「仲が良い知り合いとの会話で、例えば『彼氏が無職で…』という話に対して『彼氏さん、働いてほしいね』といった具合です。『男性は稼いで当たり前』という考え方を共有しているという前提だからこそ出てくる発言で、会話をつなぐ助けになります」

 こうした、世間話の中で“つなぎ”のように使われる、いわゆる多くの人の共通認識に基づくフレーズとして、「男性は稼いで当たり前」という考えを表にすることは確かにあり、当たり障りなく、やや突っ込んだ話ができる利点があります。

 このように、「男性は稼いで当たり前」は、自分自身の考え方とは関係なく、「みんなが言っているから通じる共通言語」として用いられることもあるようです。

 男女平等が日本より進んでいる北欧では、「男性は稼いで当たり前」という風潮はないそうですが、日本では今後どうなっていくのでしょうか。表立って“男女平等”との矛盾が国内で指摘されるようになったのはつい最近のことなので、これから議論が深まっていくところなのかもしれません。

(フリーライター 武藤弘樹)

武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

[email protected]

コメント

1件のコメント

  1. 根本的には、「女性だけが出産出来る」ということがあると思います。女性が妊娠している間は、女性は十分仕事出来ないはずなので、平均したら、男性の方がその分だけ成果を挙げるはずです。仮に、同期の男女で、女性が三児の母となった上で、男性と同じように出世した場合、対等というより、「女性の方が偉い」と感じられてしまうように思います。