脂肪のおかげ? 体質の問題? 「太っている人は寒さに強い」のは本当か
「太っている人は寒さに強い」といわれることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。脂肪の量や体形と体温の関係について、内科医に聞きました。
この冬も寒さの厳しい日が続いています。寒さといえば、「太っている人は寒さに強いのではないか」という話を一度は聞いたことがある人もいると思います。ネット上では「ぽっちゃり体形の友達は冬でも、びっくりするほど薄着」「私は太っているけど超寒がりです」といった体験談もあるようですが、「やっぱり、脂肪の量が関係あるのかな」「体形じゃなくて体質の問題では?」などの疑問を持つ人も少なくありません。
「太っている人は寒さに強い」というのは本当なのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
厚手のコートを着ているよう
Q.一般的に、寒さを感じたとき、人の体内ではどのようなことが起こるのですか。
市原さん「寒さを感じると交感神経が活発になり、全身の血管を縮めることで皮膚からの熱の放散を抑えます。また、脂肪細胞の一種『褐色脂肪細胞』も活性化され、脂肪を分解して熱を発生させ、体を温めようとします。これでもまだ寒いときには筋肉の震えが起こり、震えによって熱を産生します」
Q.同じ気温・室温の環境にいても「寒いと感じる人(寒がりな人)」と「特に寒いとは感じない人(寒がりでない人)」がいますが、なぜでしょうか。
市原さん「女性より男性の方が暑がりである傾向があり、これは、男性の方が筋肉量が多いためと考えられています。つまり、女性の方が寒がりな傾向があるといえます。また、脂肪には体温を保持する働きがあるので、痩せている人は寒さを感じやすいといえます。
香辛料を多く使った辛い食べ物を好む人や運動習慣がある人は代謝がよいことが多いので、比較的寒さに強いと考えられます。しかし、個人差が大きいのも事実であり、体質によることが多いので一概にはいえません」
Q.ずばり、「太っている人は寒さに強い(から薄着でも平気)」というのは事実といえるでしょうか。
市原さん「事実といえます。ふくよかな体形の人の方が脂肪量が多いので、体温を保持する力が強くなります。従って、寒さに強いと考えられます。しかし、太っているからといって、熱を産生する褐色脂肪細胞が多いわけではなく、筋肉量が少ないことも多いので、熱の産生自体は多いとはいえません。
個人の寒さに対する強さは『筋肉による熱の産生』『脂肪による熱の保温』『皮膚からの熱の放散』のバランスで決まると考えてください。なお、ふくよかな体形の人の中には『寒い冬でも、よく汗をかく』という人もいると思います。熱の産生が多く、さらに脂肪が多い人は熱が保持されるので、体温調整のために発汗して、体温を下げようとしているためだと考えられます」
Q.一方、筋肉を鍛えているマッチョな人ではどうでしょうか。
市原さん「筋肉量が多い人はその分、熱の産生量が多いです。運動をする習慣も多いはずなので代謝がよく、寒さに強い人が多いと思います。あくまでイメージですが、太っている人は厚手のコートを着ているような感じ、マッチョな人は元々の体そのものが熱いといった感じです」
Q.冬の寒さに対応しやすい体づくりは可能でしょうか。
市原さん「寒さに強くなるために太ることは、健康を害するのでおすすめできません。有酸素運動はもちろん、無酸素運動も組み合わせて、筋肉量を増やし、寒さと闘いましょう」
(オトナンサー編集部)
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