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“石ころ”好きな自閉症の息子を無理やり友達の中へ…価値観の強制という私の過ち

自閉症児の息子の、友達との関わり方に悩み、自分の考えを押し付けていた筆者。しかし、息子の成長とともにあることに気付き、今は違う答えにたどり着いたといいます。

筆者の息子(右)と、特別支援学校時代から仲の良いA君(筆者提供)
筆者の息子(右)と、特別支援学校時代から仲の良いA君(筆者提供)

「自閉症」という障害。その名称故に「自分の殻に閉じこもっている人」という誤解をしている人もいまだにいるようですが、そうではありません。生まれつきの脳の機能障害です。私の息子は自閉症児として育ち、21歳になったのですが、息子を見ていると「友達と関わりたくない」とか、「人に対する関心がない」わけではないと分かります。友達にも興味がありますし、関わりを持ちたいと思っているようです。ただ、その関わり方が定型発達の人とは違っています。

 相手の気持ちや立場を考えたり、その場の空気を察して、臨機応変にコミュニケーションを取ったりすることができません。そのため、相手が関心のない消火器の型番の話やトイレの便器の型番の話などを一方的にしてしまい、嫌がられてしまうことがあります。しかし、相手の顔つきを見て、気持ちを読み取ることが苦手なので、それでもなお、話し続け、敬遠されることもあります。

一般論を押し付けていた

 息子が幼い頃、私は定型発達の人の目線で「友達をつくって、一緒に遊ぶことはよいことだ、楽しいことだ」という価値観を彼に押し付け、石ころや数字と戯れていたい息子を無理やり、子どもたちの輪に入れようとしていました。

 ところが、「馬を水辺に連れていけても、水を飲ませることはできない」という英国のことわざの通り、友達がいる場所に連れていっても、息子は決して関わろうとはしませんでした。たまに関わることがあっても、それは相手の持っているおもちゃが欲しいときだけで、おもちゃを使って、一緒にままごと遊びはしませんでした。

 私は当時、他の子どもと比べて、社会性やコミュニケーション力がない息子のことを嘆いていました。しかし、私も自閉症児を育てる親として、経験を積み、やがて、私が考えるような友達関係を息子が望んでいないことに気が付いたのです。

気を使わず、社交辞令もない友達関係

 さて、成人した息子には休日に一緒に出掛けるような親友と呼べる人はおらず、1人行動が基本です。それでも、息子には気の合う友達がいます。そのA君も息子と似たような傾向を持つ人です。2人は特別支援学校の高等部時代から仲が良かったので、親同士が話し合って、同じ日にショートステイを申し込みました。ショートステイの翌日には、息子はトイレ散策、A君は電車の旅とそれぞれに予定がありました。

 ところが、前日の夕飯時は仲良くしていたのに、翌朝、息子はA君に何の声も掛けず、自分の好きなトイレの便器を見に行くため、先に帰ってしまったようでした。そこで、私はA君のママに「息子が何の言葉も掛けずに先に帰ってしまったようで、ごめんね」と伝えました。

 すると、A君のママから、「息子が『立石君はいい人すぎる』と言っていたよ」と返事がありました。息子が黙って帰ったのを気にすることもなく、むしろ、自分のペースを乱さない息子を好ましく思い、A君も電車を見に行くためにさっそうとショートステイ先を後にしたようでした。お互いに気を使うこともなく、社交辞令もありません。そして、不快にもなりません。私とA君のママは「あの2人の関係、うらやましいね」と話しました。

 現在、息子が通う就労移行支援事業所の昼休みにも同じような光景があるそうです。支援員さんによると、訓練生たちはみんな、同じ店に昼食を食べに行くものの、各自バラバラに店へ行き、バラバラの席に座って、おのおの食べているというのです。そんな一定の距離を置いた関係が快適なのでしょう。

 親自身が自閉症ではない場合、その世界を理解することはなかなか難しいとは思いますが、「友達ともっと交わりなさい」という親の考えを押し付けてはいけないと私は思っています。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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