よく見るうどんorそばの定食に「天ぷら」、なぜ一緒に食べる? オペレーションも関係?
飲食店でうどんやそばを注文したとき、セットとして「天ぷら」が付いてくるなど、一緒に食べることが多いのはなぜでしょうか。料理研究家に聞きました。
飲食店でうどんやそばの定食を注文するとき、セットで「天ぷら」が付いてくることが多いです。また、うどんの専門店では好きなうどんを注文後、天ぷらをセルフサービスで皿にのせるのはおなじみではないでしょうか。うどんやそばはご飯と同じく主食に当たるため、おかずとして、別の料理と一緒に食べるのは理解できますが、さまざまな料理があるにもかかわらず、なぜか、うどんやそばを食べるときは天ぷらと一緒に食べることが多いようです。
なぜ、うどんやそばと一緒に天ぷらを食べることが多いのでしょうか。料理研究家の長田絢さんに聞きました。
脂質、タンパク質、ビタミンを摂取
Q.なぜ、うどんやそばと一緒に天ぷらを食べることが多いのでしょうか。
長田さん「まず、栄養バランスを整えるためです。うどんやそばは炭水化物が中心であり、天ぷらを一緒に食べることで脂質を取れます。また、エビをはじめとする魚介類や肉などからはタンパク質、野菜からはビタミンや食物繊維を摂取できるので、栄養バランスがよくなります。
そして、うどんやそばと天ぷらとは“和食”という点で、メニューとして違和感がないこと、天ぷらはどのような具材でも『衣を付けて揚げる』という調理方法が同じであるため、うどん店やそば店のオペレーションにも組み込みやすいことも一因かと思います。天ぷらは衣の付け方や揚げ温度を守ることで、専門の料理人ではなくても一定レベルまでは問題なく作ることができます。
さらに、食材をいろいろ変えるだけで、メニューに変化をつけることもでき、飽きることが少ない料理です。うどん店やそば店にとっては、麺類との組み合わせに好都合なのだと思います。つまり、『うどんやそばと一緒に天ぷらを食べる』という認識が広く浸透したのは、うどんやそばを提供する飲食店の影響も大きいのではないでしょうか」
Q.うどんやそばを出す飲食店で天ぷらが主なおかずになった理由として、オペレーション以外にはどんなことが考えられますか。
長田さん「天ぷらの天つゆと、うどんやそばのつゆとが原材料が同じで、のせて食べることが理にかなっているのも理由の一つでしょう。飲食店で提供することを考えると、別途、味付けを考えて、たれを作る手間が省けて、一石二鳥だと考えられます。また、天ぷらをうどんやそばの中に入れると油脂が広がって、コクとうまみが増し、満足感が高まることも理由だと思います」
Q.同じ麺類のラーメンの場合、セットでギョーザや唐揚げを提供している飲食店は多いですが、天ぷらを提供している飲食店はほとんどありません。なぜでしょうか。
長田さん「中華と和食ということで、だしのベースが異なるためだと思います。味の想像をしても、バッチリ合うイメージではないですよね。鶏がらや豚骨を使用するラーメン店が天つゆを作るためには新たな材料や作業が必要で、業務が煩雑で効率的ではないことが想像できます」
Q.丼も、うどんやそばと一緒に食べることが多いです。いずれも主食と呼べる食べ物なのに、なぜ、丼との組み合わせが一般化したのですか。
長田さん「うどん店やそば店は短時間で、手頃な価格で食事を済ませることができるお店が多く、働き盛りの男性も多く利用します。うどんやそばだけでは物足りない人向けに、満腹になって、エネルギーも満たされる丼を提供するようになったと考えられます。麺をすするだけでは、そしゃく回数が少ないので、満腹感を得るのに時間がかかり、また、消化がよいため、すぐにおなかがすきますが、ご飯や、丼の具となるおかずがあることで腹持ちもよく、満足感のある食事となります。
お店側も、器にご飯をよそい、具をのせるだけの丼は作業効率もよく、単価アップにもつながり、客にも喜んでもらえるので、いいことずくめです。カツ丼や親子丼のだしも、うどんやそばのつゆのだしと併用できるので無駄もありません」
Q.うどんやそばと一緒に食べる「定番」のおかずは天ぷら以外にないのでしょうか。また、うどんやそば以外の麺類で、一緒に天ぷらを食べるケースが多いものはありますか。
長田さん「うどんやそばに合うおかずはたくさんあります。個人的には、同じだしを使っただし巻き卵や野菜たっぷりの煮物、アクセントで、カボチャやポテトのサラダ、酢の物などは麺類と一緒によく作ります。そうめんやひやむぎ、きしめんも天ぷらと一緒に食べるケースは多いと思います。
麺類は地域によって歴史や文化があり、さまざまですが、野菜や魚介類も地域性が高いため、両方ともその土地に根付いたソウルフードといえますね。共通しているのは、和風だしで食べる麺類と天ぷらの相性が間違いないということでしょう」
(オトナンサー編集部)
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