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「声」が老化? 久しぶりの発声で大きな声が出ない…その真偽とは?

コロナ禍でカラオケを控えたり、在宅勤務で声をあまり出していなかったりした人が、久しぶりに大きな声を出そうとしてもなかなか、大きな声が出ず、慌てることがあるようです。

久しぶりのカラオケ、声が出ない?
久しぶりのカラオケ、声が出ない?

 コロナ禍でカラオケを控えたり、在宅勤務で声をあまり出していなかったりした人の中で、久しぶりに大きな声を出そうとしてもなかなか、大きな声が出ず、慌てる人がいるようです。ネット上では「久しぶりのカラオケで声が出ない」といった声や、「声の老化が始まっているのかもしれない」といった情報があります。「声」の問題について、耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院(大阪府和泉市)の老木浩之院長に聞きました。

筋肉の衰えは肺活量低下に

Q.まず、声が出る仕組みについて教えてください。

老木さん「喉(のど)には弁状の粘膜のひだ『声帯』が左右にあります。声帯は気管の入り口にあって、空気の通り道になっています。その左右の声帯が動いて、中央でピタリと閉じた状態になったり、左右に分かれて開いた状態になったりして、呼吸や発声、飲み込み運動である嚥下(えんげ)をしているのです。

発声のときは肺活量を利用して、気管から空気を出し、閉じた声帯を押し広げながら空気が通るので、声帯は弁状に震え、『音』が発生します。ここで発生している音はブザーのような、人の声とは到底思えない音が出ているだけです。その音が口を通って外に出るのですが、その際、舌や鼻、歯、唇などの動きで音を構成し直して、『声』になります。つまり、声帯で音を作り、口や鼻で音を構成して、人の声ができているのです」

Q.声を出すことを控えたり、声を出す機会が少なかったりすると、声が出にくくなるというのは事実でしょうか。

老木さん「健康な人が普通の生活をしていて、声を出すことを控えていても、声が出にくくなるということはあまりありません。会話はしないまでも、さまざまな場面で少しは声を出す機会があるからです。ただし、声を全く出さない生活を2、3週間続けると、個人差はありますが、一時的に声が出なくなることはあり得ます。喉の筋肉が声の出し方を忘れてしまうためといわれています。しかし、この場合はすぐに回復し、声が出せるようになります。

また、大きな声を出さない生活が続くと、体幹の筋肉の衰えが早くなる心配があります。そのために、出したいときに大きな声が出なかったり、肺活量など呼吸機能が低下したりする可能性はあります。もう一つ、極端な例は、声を出さないだけでなく、例えば、寝たきりになって、筋肉を使わない状態が長期に及ぶと、腹筋など肺活量に影響する筋肉が弱り、大きな声が出しづらくなることはあるかもしれません」

Q.「声の老化」で声が出にくくなることはあるのでしょうか。

老木さん「『声の老化』はあります。声帯の粘膜の張りが弱くなったり、唾液の分泌が減って乾燥気味になってきたりすると、かすれ声や弱々しい声になります。さらに、肋間(ろっかん)筋や腹筋などの衰えは肺活量の低下につながり、声が続かない、大きな声が出せないといった状況になります。

高齢の男性に多いのは『声帯萎縮』といって、声帯の粘膜が痩せてしまい、発声時でも声帯が閉じず、空気の漏れが多くなる状態です。この場合、かすれ声になります。個人差はありますが、70歳前後から多くなる印象です」

Q.声の老化は声のほかに、体や生活にどのような影響がありますか。

老木さん「声の老化の原因である、唾液分泌の減少はひどくなると、口内や喉の炎症を起こしやすくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったりします。また、食事中や睡眠時の水分補給が欠かせなくなります。これは特に、更年期以降の女性に多い現象です。喉全体の衰えについていうと、喉の中の筋肉の緊張が衰え、張りがなくなってくると、いびきがひどくなってくる可能性があります。いびきがひどくなると、睡眠時無呼吸に至る場合があります。

加齢による喉の衰えで最も問題になるのは嚥下障害です。飲み物や食べ物を飲み込む運動『嚥下』は喉の筋肉の複雑な共同運動で成立しています。筋肉が衰えたり、それらの動きを制御する神経の働きが衰えたりすると、うまく嚥下ができなくなってきます。高齢者の死因で多い肺炎の大きな原因として、『誤嚥(ごえん)』が挙げられています。肺炎を発症しなくても、軽い誤嚥を慢性的に繰り返すことで、頑固なせき、痰(たん)が続く場合があります」

Q.声の衰えを感じたとき、どのように対応すればよいのでしょうか。セルフケアの方法と、受診が必要な目安を教えてください。

老木さん「セルフケアとしては、声をよく出すよう心掛けることが大切です。大きな声を出したり、歌ったりすると体幹の筋肉を鍛えることにもなります。ただ、短期間で声がかすれてきたという場合は声を出さない方がよく、医療機関を受診していただく方が無難です。加齢による声の衰えと思っていても、声がかすれる原因はたくさんあります。特に声帯は『喉頭がん』というがんが比較的多く発生することが知られています。自己診断は禁物です」

Q.コロナ禍の中で、喉の老化や声の衰えを防ぐ対策を教えてください。

老木さん「コロナ禍では人との会話が減っているでしょうから、周囲の状況にも配慮した声の大きさで、1日何曲か歌を歌うというのはどうでしょうか。もっと有効なのは大きめの風船を膨らませることです。これはダイエット法にもなるほど、体幹の筋肉に負荷がかかります。首周りの筋肉を鍛えることも大切です。おでこを手で押さえつつ、自分のへそをのぞき込むように頭を下に向ける運動などがあります」

(オトナンサー編集部)

老木浩之(おいき・ひろゆき)

医師(耳鼻咽喉科専門医)、医学博士

医療法人hi−mex理事長、耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院院長。近畿大学医学部卒業、神戸市立中央市民病院で副医長を務めた後、近畿大学病院講師、生長会府中病院耳鼻咽喉科部長を経て、2001年、大阪府和泉市で、耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院を開設。現在、医療法人理事長として3院を運営。耳鼻咽喉科の地域医療を担う開業医の勉強会も主催している。耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院(https://www.oikiiin.com/)。

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