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ぜひ受診して 耳鼻咽喉科医院で「耳掃除」、本当にできる? 費用やメリットは?

耳鼻咽喉科の医院の中には「耳掃除のために、ぜひ受診してください」と呼び掛けているところもあります。本当に、耳掃除だけで受診できるのでしょうか。

耳掃除をお医者さんで?
耳掃除をお医者さんで?

 綿棒や耳かきを使って、耳あかを取り除く「耳掃除」を多くの人は1カ月に数回程度、自分で行っていると思います。この耳掃除ですが、耳鼻咽喉科の医院の中には「耳掃除のために、ぜひ受診してください」とホームページ上で呼び掛けているところもあります。耳に異常があるわけでもなく、耳掃除をするためだけで耳鼻咽喉科を受診できるというのは本当でしょうか。耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院(大阪府和泉市)の老木浩之院長に聞きました。

思わぬ病気の発見にも

Q.耳掃除をするためだけに、耳鼻咽喉科を受診できるというのは本当ですか。耳鳴りや音が聞こえにくいなどの耳の異常がなくても、受診して問題ないのでしょうか。

老木さん「医師によって考えが違うかもしれませんが、私は受診していただいた方がよいと思います。家庭で耳掃除をやり過ぎると、耳の入り口から鼓膜までの皮膚に炎症が起きる外耳炎になったり、誤って鼓膜を突き、穴を開けてしまったりすることもあります。そのため、家庭での耳掃除は基本的に推奨できません。耳あかの除去は耳鼻科医にとって基本的な処置であり、必要があれば、耳鼻咽喉科を受診していただきたいです。

なお、耳掃除の必要性についてお話ししておきますと、そもそも、耳あかは外耳道の皮膚の代謝産物や、分泌液の固形化物で、生理的にその発生は避けられないものです。そして、生理的に発生するものなので基本的には生理的に、つまり、人間の体の働きで自然に排出されるようになっています。実は、多くの人には耳掃除は不要といえます。

ただ、耳の穴の形や耳あかの性質、外耳皮膚の状態、過去の病気などに影響され、一部の人は耳あかの自然排出が難しくなっています。このような人や耳あかがたまりやすい人は、耳あかを除去するために耳鼻科の受診をおすすめします。また、それ以外の人であっても、耳あか除去のために受診した方がよい場合があります。詳しくは後ほどお話しします」

Q.受診にかかる費用はどれくらいですか。健康保険は適用されるのでしょうか。

老木さん「耳あかがたくさん詰まって、『耳垢栓塞(じこうせんそく)』という病気と診断されれば、保険適用となります。初診で両耳を掃除する場合、自己負担額は1400円程度(自己負担率3割の人の場合)です。現在のコロナ禍での受診や乳幼児の耳掃除の場合は、やや金額が変わってきます。

また、長年放置して耳あかが固まってしまったり、外耳炎で痛みがひどかったりした場合は、1回の受診で取り切れないことがあります。耳あかを軟らかくする点耳液や抗炎症剤を使うなど、複数回の受診が必要な場合もあります」

Q.なぜ、耳掃除のためだけで受診してほしいと呼び掛けているのですか。耳あかがたまることは何らかの病気なのでしょうか。

老木さん「1つ目は先述したように、家庭での耳掃除により、鼓膜や外耳を痛める可能性があるからです。家庭で無理をするくらいなら、耳鼻科を受診いただきたいと思います。

2つ目は、耳掃除だけのつもりで受診したときに思いがけず、気付かなかった耳の病気を発見できることがあるからです。例えば、少し耳が詰まったような感覚があり、自分で『耳あかが原因だろう』と自己診断していたら、耳の穴の皮膚にカビが感染し、炎症を起こす『外耳道真菌症』という病気だったり、『低音障害型感音難聴』という内耳の病気だったりという場合があります。自己診断は禁物ということです。

また、耳あかがたまりすぎると耳の穴(外耳道)をふさいでしまい、聞こえが悪くなることがあります。これは先述した耳垢栓塞という病気で受診が必要です。耳あかでふさがれた状態を放置すると、外耳炎になったり、さらにひどい炎症の『外耳道真珠腫(がいじどうしんじゅしゅ)』という病気になったりすることもあります。それらの病気の早期発見のため、受診していただく必要があるのです」

Q.耳掃除のためだけで受診するのは恥ずかしいと思う人も多いと思います。実際に、どのような人が耳掃除のためだけで受診しているのですか。

老木さん「例えば、乳幼児の場合、保護者が耳掃除をしようとしても難しいことが多いと思います。そのため、乳幼児の耳に耳あかがたまっていることがあり、そのような場合は定期的な受診をおすすめしています。大人の場合、受診間隔は個人差が大きいのですが、一般的には3~4カ月に1回程度です。他にも、過去に自分で耳掃除をしていてひどい外耳炎を患った人はそれを教訓に、耳あかの除去を耳鼻科で受けるケースが多いです」

Q.耳掃除は自分自身でもできますが、できるだけ行わない方がよいのでしょうか。

老木さん「『耳掃除は自分でできる』と過信しない方がよいと思います。特に、耳かきが竹や金属といった硬い材質のものでは、外耳炎などの病気を引き起こすことが多くなります。そのため、耳あかのたまり具合を医療機関で定期的にチェックしてもらったり、耳あかの除去で受診する間隔を相談したりすることが大切です」

Q.とはいえ、「耳掃除くらい自分でしたい」という人もいると思います。耳の中を傷つけず、きれいに耳あかを取り除くことができる耳掃除のコツがあれば教えてください。

老木さん「最初に述べたように、通常は何もしなくても、耳あかは耳の穴から出ていきます。多くの人には耳掃除は不要といえますので、耳掃除を癖にしない方がいいのですが、どうしても家庭でしたい場合は『綿棒で軽く耳掃除をする』ことが耳の中を傷つけない唯一のコツです。綿棒でも、強い力で耳の中をこすると外耳炎を起こす恐れがあります」

(オトナンサー編集部)

老木浩之(おいき・ひろゆき)

耳鼻咽喉科専門医、医学博士

医療法人hi-mex理事長、耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院院長。近畿大学医学部卒業、神戸市立中央市民病院で副医長を務めた後、近畿大学病院講師、生長会府中病院耳鼻咽喉科部長を経て、2001年、大阪府和泉市で、耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院を開設。現在、医療法人理事長として3院を運営。耳鼻咽喉科の地域医療を担う開業医の勉強会も主催している。

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