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動悸、震え、発汗も…「電話恐怖症」になりやすい人は? 治療法など解説

電話での応対に苦手意識を持つ人の中には、震えや動悸といった身体症状が現れるなど、「電話恐怖症」に悩む人もいるようです。どう対処すべきか、医師に聞きました。

「電話恐怖症」への対応は?
「電話恐怖症」への対応は?

「自分から電話をかけるのが苦手」「電話がかかってくると『出なきゃ』と思って憂鬱(ゆううつ)になる」。このように、電話での応対に苦手意識を持つ人もいると思います。こうした人は年代問わずいるようですが、中には不安な気持ちによって、発汗や動悸(どうき)といった身体的な症状が現れるなど、「電話恐怖症」に悩む人もいるようです。

 ネット上では「電話をかけるとき、不安すぎて、いつも吐き気が止まらなくなる」「病院を受診した方がいいサインが知りたい」「治せるの?」などさまざまな声が上がっています。仕事や日常生活にも支障を来しかねない電話恐怖症について、精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

着信音で驚いてしまうことも…

Q.「電話恐怖症」にはどんな症状がみられるのでしょうか。

田中さん「一口に電話恐怖症といっても、さまざまな状態・病態があります。例えば、電話を使ったコミュニケーションが苦手で、いざ電話で話すとなると緊張が高まり、動悸や震えが出るもの、電話でひどく怒られたことがトラウマとなって、電話が鳴ると動悸や震え、発汗、呼吸の苦しさ、吐き気などの身体症状や不安感、恐怖感などの精神症状が出現するもの、そして、聴覚が過敏で、着信音に飛び上がるほど驚いてしまうもの(もちろん、動悸、震え、不安感なども伴う)などです」

Q.なぜ、電話恐怖症になってしまうのですか。

田中さん「電話恐怖症の状態・病態によって、原因もさまざまです。『そもそも、(対面でも電話以外のツールを使っても)コミュニケーションが得意ではない』ことが原因となって、電話恐怖症を発症することがあります。病名でいうと『社交不安障害』です。また、電話でのひどい叱責やいわゆる、『オレオレ詐欺』などのトラブルが原因となって発症することもあります。この場合、病名でいうと『PTSD(心的外傷後ストレス障害)』です。

さらに、最近話題になることが増えた『HSP(highly sensitive person)』と呼ばれる敏感すぎるタイプの人の場合、聴覚過敏が原因で電話恐怖症を発症することがあります。他にも適応障害、うつ病、統合失調症などに伴って発症することがあるでしょう」

Q.「(電話や対面含め)そもそも、コミュニケーションが得意ではない」ケースの発症プロセスについて、さらに詳しく教えてください。

田中さん「先述のように、電話恐怖症の人の多くが『対面でのコミュニケーションなら大丈夫』というわけではありません。たまたま電話越しで会話したときにコミュニケーションの困難さが発覚しただけで、実はオンライン会議でも対面での会話でも、ちょっとした雑談の場面でも、もともと、『それほどコミュニケーションが得意ではない』という人が多いように思います。

ただ、電話を受ける場合は何の準備もなしに、相手の話・雰囲気・ノリに合わせなければなりません。対面でのコミュニケーションよりも想像力を要しますし、臨機応変な対応力が求められるため、電話越しのコミュニケーションに対して苦手意識を持つ人が増えてきているのかもしれません。若年者の中には固定電話を使うどころか、見たこともないという人がいます。就職して電話を使う仕事を任せられ、電話恐怖症を発症してしまうケースもまれではありません」

Q.電話恐怖症を発症しやすい人の特徴はありますか。

田中さん「コミュニケーションがもともと苦手な若年者に多いと思います。男女差はないでしょう。ただ、電話での対人トラブルが原因となって電話恐怖症を発症するケースは、若年者から高齢者まで幅広い年齢層の人にみられると思います」

Q.「自分は電話恐怖症かも」と判断するためのポイントはありますか。

田中さん「電話恐怖症をセルフチェックする、広く知られているツールはありません。そのためひとまず、『電話がとても苦手である場合』と『電話の音が鳴ると動悸や震え、不安感など心身の症状が出現する場合』を区別し、後者であれば、電話恐怖症である可能性が高いと考えてよいと思います。そして、家族や周囲の人にも相談し、電話を使ったコミュニケーションの苦手さの程度がどれくらいなのかを評価してもらうのもよいでしょう」

Q.電話恐怖症は治すことができますか。

田中さん「状態・病態によって対応・治療は異なると考えられます。もともとコミュニケーションが苦手で、たまたま電話越しでのコミュニケーションの困難さが発覚した場合、しかも、今後も電話を使用する頻度が高い場合は、社交不安障害に準じた治療が行われます。薬物療法を行う場合もありますが、まずは認知行動療法、行動療法によって、電話でのコミュニケーション場面に慣れてもらうようにしていきます。

電話での対人トラブルが原因で発症した場合は、しばらく、電話の使用を中止しながら、PTSDに準じた治療が行われる可能性があります。心身の症状が頻繁に、かつ強く出現する場合には、一時的に薬物療法を併用することがあるかもしれません。聴覚過敏がひどくて電話恐怖症を発症した場合は、『電話にカバーをかけるなどして音量を小さくする』『着信音を変更する』『家には電話を置かないようにする』などの対策が考えられます」

Q.電話恐怖症に自覚がある場合、病院を受診した方がよい目安となるサインはありますか。

田中さん「電話恐怖症の自覚があり、さまざまな身体症状や精神症状が数カ月以上続くようなら、精神科や心療内科の受診を検討してください」

Q.電話恐怖症の人、また、その周囲の人はそれぞれ、どのようなことを意識するとよいでしょうか。

田中さん「電話恐怖症の人は電話越しのコミュニケーションが困難なまま、悪循環を起こして、気分がどんどん落ち込んでしまわないように、早めに家族や上司など周囲の人に相談し、必要に応じて病院を受診するのがよいと思います。職場であれば周囲の人が配慮し、電話恐怖症を持つ人に電話対応をさせないようにしたり、電話機の前に定型文を列挙したマニュアルを用意したりするなど工夫してみましょう。

いずれにしても、電話恐怖症はよほどのものでなければ、回復可能、ないし克服可能なものと思われます」

(オトナンサー編集部)

田中伸一郎(たなか・しんいちろう)

医師(精神科専門医)・公認心理師

1974年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。赤光会斎藤病院、東京大学医学部付属病院精神神経科、杏林大学医学部精神神経科学教室などを経て、現在は、獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科准教授。「誰もがこころの問題を理解し、互いに助け合うことのできる社会づくり」を目指し、精神医療の最前線で老若男女の患者を日々診療しながら、メディアを通じて正しい知識を普及すべく活動の場を広げている。

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