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苦しい…「大きく口を開けて」と医者が口の中に入れる“棒”の正体は?

病院などで「はい、大きく口を開けて」と言われて口を開けると、棒のようなものを舌の辺りに入れられた経験はないでしょうか。「棒」の正体について、医師に聞きました。

子どもの頃経験した「棒」の正体は?
子どもの頃経験した「棒」の正体は?

 子どもの頃、風邪をひいたり、おなかが痛くなったりして病院や診療所に行った際、お医者さんに「はい、大きく口を開けて」と言われて口を開けると、棒のようなものを舌の辺りに入れられた経験はないでしょうか。喉の近くまで棒が来て苦しくなってしまい、中には、吐き気を催してしまう人もいたようです。あの“棒”の正体は何なのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

正体は「舌圧子」、不要な人も

Q.医師が患者の口の中を見る際、舌の辺りに入れる棒のようなものは何なのでしょうか。

市原さん「『舌圧子』と書いて、『ぜつあつし』と読みます。私が子どもの頃は、病院の舌圧子は金属製が多かったと思います。使用後に毎回、滅菌・消毒して再利用するものです。いつからか、1回使ったら処分するタイプの木製の舌圧子が登場し、消毒の必要がない利便性から、今は木製の使い切りタイプが主流になっているようです。金属製も木製もどちらも機能は同じなので、コストや利便性から、それぞれの病院が選択していると思います」

Q.なぜ、舌圧子を診察に使うのでしょうか。子どもだけでなく、大人にも使うことはありますか。

市原さん「喉の奥、具体的には『へんとう』(一般にいう『へんとう腺』)の辺りの状態を診るために使用します。子どもは舌圧子を嫌がりますが、喉の奥まで、うまく広げて医師に見せることが子どもには難しいので、舌圧子を使って舌を押さえ、喉の奥を見やすくするのです。

基本的に、子どもの診察は胸の聴診に加えて、舌圧子を使って、喉の奥を診るというのがお決まりです。風邪症状があるときやワクチン接種前の診察などは、この2点は必ず確認します。子どもは喉を見せることが苦手なので、ほとんどの小児科医が舌圧子を使っているはずです。

一方、大人にも使うことはあります。大人は、舌の根元で喉の奥が隠れてしまうことも多いので、そうした際は舌圧子を使って喉の奥を見るのです。ただ、大人は口を大きく開けて『あー』と声を出すと、喉の奥がきれいに見える人もいるので、子どもに比べたら使用頻度は少ないと思います」

Q.舌を押さえられて、吐き気を催すことがあります。なぜでしょうか。

市原さん「嘔吐(おうと)反射が起こっているからです。口に入った異物を出そうとする反射のことで、歯ブラシを喉の奥に入れた際、舌圧子と同様に嘔吐反射が出る人もいるかと思います」

Q.舌を押さえられた際の反応の強さは人によって違うのでしょうか。

市原さん「個人差が大きいです。全く平気な人ももちろんいます。一般的には、若い人の方が反射が強いといわれています。理由は詳しくは分かりませんが、若い人の方が敏感に反応するという感じなのかもしれません。ちなみに、胃カメラ検査のときも、若い人の方が喉をカメラが通過するときの反射、苦痛は大きいです」

Q.舌圧子を入れられても、吐き気を催さないコツがあれば教えてください。舌圧子が嫌で、医者嫌いになっている子どもや大人もいると思います。

市原さん「心因的な要因も嘔吐反射に影響するので、なるべくリラックスして臨みましょう。子どもの場合は『大丈夫、痛くないよ』など優しい言葉を大人が掛けて、安心させてあげるといいでしょう。大人の場合は口を大きく開けて、『あー』と声を出すと、舌圧子を使わなくても、喉の奥が見やすくなることがあります。私自身が他の医師に診てもらうときはいつもそうしており、舌圧子は不要です」

(オトナンサー編集部)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。

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