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取り過ぎで目まいや倦怠感? 「砂糖依存症」とはどのような症状か、治療法も解説

甘いものを食べ過ぎることで「砂糖依存症」と呼ばれる状態に陥る人がいるようです。どのような症状で、どうすれば防げるのでしょうか。

「砂糖依存症」とは?
「砂糖依存症」とは?

 甘い食べ物や飲み物を摂取するのが好きな人は多いと思います。一般的に、甘いものを食べ過ぎると糖尿病のリスクが高まるといわれていますが、中には甘いものを食べ過ぎることで目まいや頭痛を起こしやすくなったり、疲れや倦怠(けんたい)感が出やすくなったりする「砂糖依存症」と呼ばれる状態に陥る人もいるようです。

 砂糖依存症を発症すると、甘いものを食べたい欲求を抑えられなくなることもあるといい、ネット上では「中毒のような状態なのかな」「どのくらいの量を食べると『過剰摂取』になるの?」「甘いものが苦手なら発症の心配はない?」など、さまざまな声が上がっています。砂糖依存症とはどのような状態のことなのか、内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんに聞きました。

「砂糖依存症」は医学用語にあらず

Q.そもそも、砂糖は人体において、どのような役割や働きがあるのでしょうか。

市原さん「そもそも、砂糖とは『ブドウ糖』と果物に含まれる『果糖』とが結合したもので『二糖類』と呼ばれます。砂糖を摂取すると、小腸で分解されてブドウ糖になり、小腸の上皮から吸収され、肝臓を経由して全身に運ばれます。ブドウ糖は全身の機能を維持するために欠かせないもので、特に脳にとっては唯一のエネルギー源です。何らかの理由で体内のブドウ糖が少なくなる『低血糖』の状態になると倦怠感や冷や汗、震え、異様な空腹感、意識の低下など、さまざまな症状を引き起こします」

Q.健康を維持する上で、砂糖の1日の摂取目安はどのくらいでしょうか。

市原さん「世界保健機構(WHO)は砂糖について、大人の1日の摂取量は25グラムまでが望ましいとしています。これは1日の総エネルギーに対する比率で決められているので、子どもはこれよりも少なくなります。

といっても、砂糖などの糖質は体内で全てブドウ糖に変換されるので、たとえ砂糖の摂取量が守られていても、その他の糖質を取り過ぎると糖質過多、カロリー過多になってしまいます。例えば、『果物は体にいい』と思い込んで気にせずに食べる人が多くいますが、果物に含まれる果糖も体重の増加や血糖値の上昇に関係しているので食べ過ぎはいけません。『果物も糖質』と考えるようにしてください。

ちなみに、砂糖25グラムはコーラに換算すると200ミリリットル、スポーツ飲料なら400ミリリットル、板チョコなら1枚です。普通の食事に加えて、コーラ200ミリリットル以上や板チョコ1枚以上を毎日取っていると、長期的に見れば、砂糖の過剰摂取による弊害が起きてもおかしくありません。

短期的に考えると、コーラ500ミリリットルや菓子パン1個、まんじゅう1個など糖質の多いものを好んで毎日食べている場合、砂糖の過剰摂取による体調の変化が懸念されます。一度に大量摂取することよりもそれを継続する方が体調悪化につながります」

Q.砂糖を多く取り過ぎた場合、逆に摂取量が少な過ぎる場合は体にどのような変化・弊害を及ぼし得るのでしょうか。

市原さん「砂糖を多く摂取すると体重の増加を引き起こします。内臓脂肪が増えて体重が増加すると血糖値を下げるホルモンである『インスリン』の効き目が弱くなり、血糖値が上がりやすくなります。最初の頃は食後の血糖値が上昇し、徐々に食前の血糖値も上昇するようになり、糖尿病の状態になります。糖尿病はさまざまな病気の引き金になり得るので、砂糖の取り過ぎは避けるべきです。

一方で、摂取量が少な過ぎる場合も注意です。一時期、『糖質制限ダイエット』が流行しましたが、糖質を制限し過ぎると死亡率が上昇するという研究データがいくつか発表されました。食事の際、糖質を制限しようとするとおかずの量が増えがちになるため、タンパク質の取り過ぎや塩分過多になりやすく、腎臓に負担がかかったり、血圧が上がったりすることが考えられます」

Q.「砂糖依存症」とは何でしょうか。

市原さん「まず、『砂糖依存症』は医学用語ではありません。砂糖などの甘いものを多く摂取すると血糖値が上がるので、それを阻止しようとして、大量のインスリンが分泌されます。その大量のインスリンが体内に残ることで、甘いものを食べてから数時間後に血糖値が下がり過ぎることがあります。この低血糖の状態になると『体が危機的状況にある』と脳が判断して異様な空腹感を引き起こし、甘いものをまた食べたくなります。これが俗にいう『砂糖依存症』の状態です。

また、甘いものを摂取すると脳の中でドーパミンなどの脳内神経伝達物質が分泌され、幸福感をもたらします。『疲れたときに甘いものを食べるといい』と昔からいいますが、この幸福感が癖になって依存状態になっていることも考えられます。なお、『甘い食べ物や飲み物が好きな人』が発症しやすいというイメージを持つ人もいるようですが、個人のインスリンの分泌の機能によるので『甘いものが好きかどうか』で砂糖依存症になりやすいかどうかまでは判断できません」

Q.砂糖依存症の予兆となるサインやセルフチェックの方法はありますか。

市原さん「傾向として多いのが夕方の、おなかがすく時間帯に甘いものを食べたくなる人です。昼食時の糖質量が多いと大量にインスリンが分泌され、夕方の時間帯に低血糖になり、空腹感が出現します。このとき、甘いものを食べると血糖値が上がり、それによって体調も気分もよくなるため、空腹時に甘いものを食べるのが癖になることが考えられます。夕方におなかが異様にすく人は注意した方がよいでしょう」

Q.砂糖依存症と糖尿病は併発することもあるのでしょうか。

市原さん「もちろんあります。実際、生活習慣が関係する『2型糖尿病』の人には甘いものが好きな人がかなり多く、その嗜好(しこう)のために糖尿病になった可能性が高いのは事実です。また、残念ながら、糖尿病の治療薬の影響で食後に低血糖になり、甘いものを食べたくなることもあります」

Q.砂糖依存症はどのような治療を行うのでしょうか。

市原さん「先述の通り、砂糖依存症は医学用語ではないので、医療機関では『あなたは砂糖依存症です』といった診断をしての治療はしません。しかし、『境界型糖尿病』、いわゆる、糖尿病予備軍の人の中には食後の空腹感を訴える人がいるので、そうした場合は1回の食事の糖質量を適量にすることを指導します。また、自分で砂糖依存症だと思う人は、甘いお菓子などの1回の摂取量を控えてみる、食べる回数を分ける(時間を空けて後で食べる)など工夫してみてください」

Q.甘いものや砂糖をなるべく控えるためのポイントや摂取時の注意点とは。

市原さん「まずは甘いものや間食するものを買い込まないことでしょう。家にあるとどうしても食べてしまうためです。また、おなかがすいているときに買い物に行くと、余計なものまで買ってしまうので、食後に買い物に行くようにするのもよいでしょう。甘いものを食べるときは『小分けにされているものなら1個にする』『袋に入っているものはお皿に取り分け、一度に食べない』などの工夫をしましょう」

(オトナンサー編集部)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。

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