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履歴書はあるけど…需要少ない「退職願」なぜ販売? メーカーに聞く

会社を辞めるときの「退職願」専用の便箋と封筒を販売している会社があります。履歴書よりも需要は少ないように思えますが、なぜ、発売したのでしょうか。

日本法令(右)とマルアイの「退職願」用便箋と封筒のセット
日本法令(右)とマルアイの「退職願」用便箋と封筒のセット

 3月は年度末、転職や退職をする人も多いことでしょう。その際、書くことがあるのが「退職願」ですが、会社に入ろうとするときの履歴書が文具店や書店に多く置かれている一方で、退職願を見たことがある人は少ないと思います。ネットで「退職願の書き方」と検索して、一般的な便箋に書いている人が多いのかもしれません。

 しかし、実は退職願用の便箋と封筒のセットを売っている会社があり、SNS上でも「便利な世の中になった」「売っているのをじっと見てしまった…」といった声が出ています。履歴書に比べると需要は少ないように思えますが、なぜ、発売したのでしょうか。

 官庁への届け出用紙などを企画・販売している日本法令(東京都千代田区)と、祝儀袋などの製造・販売で知られるマルアイ(山梨県市川三郷町)に聞きました。

「初めての人」の目線重視

 まず、日本法令開発宣伝課の担当者に聞きました。

Q.退職願用の便箋と封筒のセットはいつ、発売したのでしょうか。

担当者「当社では現在、退職の手続きに関するものとして、『退職願』『退職届』計4商品を販売しています。このうち、最も早くから販売していたのが、退職時の正式な書式として主に企業で使ってもらう『退職届』で1967年発売です。こちらは同じ書式の用紙が30枚入っていますが、1982年、小規模な会社などを退職する人に使ってもらうための『退職届(個人購入用)』を発売しました。こちらは3枚入りです。

一方、退職の意思表示の際に使ってもらう退職願用の便箋と封筒のセットを発売したのは2009年9月です。さらに2019年10月には、退職時のトラブルを避けるためのアドバイスなども盛り込んだ『弁護士が教える 辞められない人のための退職願セット』も発売しました」

Q.退職願を書く機会は少ないと思いますが、なぜ、退職願用の商品を企画したのでしょうか。

担当者「先述したように当社では昭和の時代から、会社が退職の手続きをする際、社内用紙として社員に提出してもらうための『退職届』を販売していました。平成に入って、景気の動向や多様な働き方へのニーズが高まり、転職市場が活発になったことなどから、社員から退職を願い出るための用紙である『退職願』を書く機会が増えてきました。しかし、その際、『何もない便箋に書くのでは少し心もとない』というニーズがあると判断したことから、(けい線入り便箋などをセットにした)『退職願』を商品化しました。

最近では、退職代行サービスの流行に見られるように、対面でのコミュニケーションを苦手とする若者を中心に『退職願を郵送で送れないか?』など、退職への意識が変化してきています。また、人手不足から、企業が退職希望者を引き留める傾向もあるため、従来とは異なったトラブルが生じており、近年ならではのニーズを盛り込んだ『弁護士が教える辞められない人のための退職願セット』を発売しました」

Q.「退職願」の商品企画にあたって留意した点は。

担当者「退職願を書き慣れている人は多くないので、『初めて会社に退職を願い出る人』の目線を意識しました。どのように書けばいいのか迷う人もいるでしょうし、字がきれいな人ばかりでもないと思います。そのため、下敷きを置いて、その上からなぞるだけで一般的な退職願を作成することができるよう、記入例付きの下敷きをセットにしました。また、『裸で退職願を渡していいのか? それとも封筒に入れた方がいいのか?』などと悩まないように、『退職願』の表題入りの封筒をセットしました」

Q.「退職願」の中の便箋も「退職届(個人購入用)」用紙も3枚入っていますが、これは書き損じたときのためでしょうか。それとも、2回以上退職する場合に備えてということでしょうか。

担当者「こちらは書き損じを想定しています」

Q.販売場所と顧客の反応、差し支えなければ、売り上げの推移を教えてください。

担当者「当社の公式ウェブショップや全国の文具店、ネット通販サイトで販売しています。お客さまからは『とにかく、退職は初めてで勝手が分からなかったから、大変役に立った』『考えなくても、下敷きを置き、その上からなぞるだけで一般的な退職願を作成することができるので便利』といった声を頂いています。

『退職届』の売り上げは10年間、ほぼ横ばいですが、『退職願』は10年前の約10倍の売れ行きとなっています。また、2019年に発売した『弁護士が教える辞められない人のための退職願セット』も売れ行き好調です」

専用紙で丁寧、きれいに

 次に、マルアイの商品企画担当者に聞きました。

Q.「退職願専用 便箋・封筒セット」の発売時期と内容を教えてください。

担当者「2017年10月に発売しました。B5無地の便箋4枚と封筒2枚(長4無地)、下敷き1枚がセットになっており、付録として、退職願の書き方や封筒の書き方を説明した文書も付いています。なお、下敷きは表が退職願の記入例付きけい線入り、裏はけい線のみが入っています。また、この商品は基本的に手書き用ですが、便箋・封筒ともに、インクジェットプリンターやレーザープリンターでの使用も可能です」

Q.商品企画の理由を教えてください。

担当者「当時、退職願専用の商品は市場にあまり出回っておらず、店頭の情報をリサーチして、営業部と企画を練り商品化しました」

Q.企画にあたって留意した点は。

担当者「専用紙を使って、丁寧にきれいに書くことを推奨したいと思い企画しました。便箋、封筒ともに和紙の一種である奉書紙を使用しています。昔の公文書にも使われていた奉書紙を使うことで、公的なイメージにしたいと思いました」

Q.便箋が4枚、封筒が2枚入っているのは、2回退職する場合に備えてということでしょうか。

担当者「予備として、書き損じを想定しての内容です」

Q.販売場所と顧客の反応、差し支えなければ、売り上げの推移を教えてください。

担当者「文具店や書店などで販売しており好評です。売り上げの推移は社外秘のため、お教えできません。ご了承ください」

Q.「退職願専用」となっていますが、余った場合はほかの用途に使っても大丈夫でしょうか。

担当者「用紙は無地なので、用途は購入者の判断にお任せします」

(オトナンサー編集部)

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