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「くるみ」の栄養とさまざまな調理方法

独特の風味や渋い後味が特徴的な「くるみ」。普段は食べる機会がほとんどない、という人も多いかもしれませんが、その豊富な栄養から近年、にわかに注目が高まっています。さまざまな調理法とともにお伝えします。

栄養豊富なスーパーフード「くるみ」

くるみはどこから来たのか

 栄養満点のスーパーフード「くるみ」。独特の風味や渋い後味が特徴で、元々含まれている豊富な栄養素を生のまま手軽に摂取できる「ローフード(raw food)」としても注目を集めています。今回は、くるみの隠れた魅力について、料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

 くるみは、クルミ科の植物の総称で、別名「ウォールナッツ」とも呼ばれます。パンやお菓子に練り込んだり、そのままお酒のおつまみにしたりと、日常生活にもなじみ深い木の実です。そんなくるみを人間が食べるようになったのは紀元前7000年ごろ。「ナッツ」の語源にもなった人類最古の木の実といわれます。

 くるみの原産は古代ペルシャ。一般に「ペルシャグルミ」と呼ばれる代表的な品種は、神父たちの手によって欧州に持ち込まれ、その後、中国・朝鮮を経由して日本にやって来ました。日本では元々「和グルミ」と呼ばれる固有種が自生しており、「鬼ぐるみ」や「姫ぐるみ」などが古くから食用として活用されてきました。海外のくるみに比べて殻が固く、実が小さいのが特徴です。この和グルミと、ペルシャグルミを含む洋グルミとの交配によって、テウチグルミ(カシグルミ)やシナノグルミが生まれました。

 現在、日本で流通しているくるみのほとんどはカリフォルニア産や中国産ですが、国内でもくるみの生産は続いています。くるみの栽培には、日照時間が長く雨が少ない温暖な気候が適しており、長野県の北信~東信部、とりわけ東御市はくるみの栽培にふさわしい土地です。同市では、シナノグルミを「信濃くるみ」のブランド名で特産品として売り出し、その魅力を広く発信しています。

くるみに含まれる栄養素

 体の悪い部分と形が似ているものを食べることで、悪いところを補って元気にする「似類補類(にるいほるい)」という考え方があります。たとえば小豆や黒豆は、腎臓に形が似ていることから、腎臓の働きを促進する食材として扱われることが多くあります。また、貧血時には、動物のレバーを食べることで肝臓の働きを補うとされています。

 この似類補類において、くるみが活性化させると考えられているのは「脳」。隋や唐時代の中国では、科挙の試験前に食べられていたという説もあるほどです。一見、ただ形が似ているという理由だけの迷信に思えますが、くるみに含まれている栄養分を見てみると、実際に根拠があります。

 ココナッツやアーモンドなどのナッツ類は脂肪分を多く含んでおり、くるみの成分も70%近くが脂質です。ナッツ類の中でもくるみは、良質な脂肪分を豊富に含む木の実として、健康業界でも注目を集めています。組成の中でも注目したいのは、食物からの摂取が必要な「必須脂肪酸」であるリノール酸とα-リノレン酸がバランスよく含まれていること。α-リノレン酸は「オメガ3脂肪酸」の一つで、善玉コレステロール(HDL)を増やして悪玉コレステロール(LDL)を減らす役割があり、脳の発達を促して記憶力を向上させる働きもあります。

 また、くるみには老化を防ぐとされている抗酸化物質(ポリフェノール、メラトニン)のほか、ビタミンやミネラル、食物繊維といった不足しがちな栄養素も含まれており、まさに優等生的なスーパーフード。ただし脂肪分が多いため、100グラムあたりおよそ670キロカロリーとカロリーは高めです。くるみ単独での大量摂取は避け、そのまま食べる場合は1日30~40グラムを目安にしてください。

 サプリとしても人気の高いα-リノレン酸には、血流改善による脂肪燃焼、生活習慣病の予防、アンチエイジングのサポートなど、体にうれしい効果が多く見込まれています。食事と同じタイミングでα-リノレン酸を摂取すると、ほかの食品の脂質と一緒に体内に吸収されやすくなります。くるみを食べる際は食事の一環として、肉や野菜などの食材に合わせて食べるのがオススメです。

くるみを選ぶポイント

 市販されているくるみは、生の剥きくるみや殻付きくるみ、ローストや素焼きのくるみに大別されます。くるみは生でも食べられるため、ビタミン類を壊さずに摂取するためには生が最も適していると言えます。殻付きの場合は、殻が空気から実を守ってくれますが、生の剥きくるみは水分が出やすく、カビが生えやすいのが難点。くるみの実だけを保存する際は、ジッパー付きの保存袋などで密閉し、冷暗所で常温保存してください。すっぱい臭いや表面にカビが見られる場合は傷んでいるため処分しましょう。

 ローストや素焼きで加工されたくるみは加熱されて水分が失われているため、楽に保存できます。塩いりやキャラメリゼしたくるみはコンビニのお菓子コーナーでもよく見られ、手軽でヘルシーなおやつとして女性に人気があります。ただし、加熱するとビタミンの減少やタンパク質の凝固、脂質の酸化といったデメリットも生じます。栄養と保存性のバランスをよく考慮して、自分に合った方を選んでください。

 なお、くるみの脂質は空気に触れているだけでもどんどん酸化します。剥きくるみを購入する際は、細かく砕かれていない、元々の形に近いものを選ぶのがオススメです。

くるみを使ったメニュー

 そのまま食べる以外にも、くるみには多くの調理方法があります。料理やお菓子として食べれば、くるみが苦手な方でも食べやすくなります。

【くるみゆべし】 

 くるみと白玉粉、黒砂糖、しょう油などを火にかけて作る伝統的な和菓子。甘塩っぱく、もちもちとした食感が特徴です。

【くるみおはぎ】 

 砕いたくるみを塩、またはしょう油で味付けし、表面にまぶしたおはぎ。信州の郷土料理として親しまれています。

【くるみそば】 

 長野県や埼玉県で見られる郷土料理。すったくるみとそばつゆを合わせ、つけ汁としています。

【くるみみそ】 

 細かく砕いたくるみ入りのみそは、シンプルにつけみそとして使えるほか、ふろふき大根や焼きおにぎり、湯豆腐のタレとしても活躍してくれます。

【くるみと鶏肉の炒め物】 

 中華料理の炒め物にはくるみがよく使われます。オイスターソースとも合うため、肉と絡まって箸が進む香ばしい味に仕上がります。

【くるみ入りパスタソース】 

 イタリアンでは食感のアクセントとして、ミートソースやトマトソース、ジェノベーゼの中にくるみを入れることも。自宅で作る際にも取り入れやすいアレンジです。

【くるみパン】 

 くるみやドライフルーツ、オーツなどをふんだんに練り込んだパンは、ドイツやフランスなど欧州の伝統食です。

【ブラウニー】 

 くるみを使ったお菓子の代表格。濃厚なチョコレートの生地に、くるみの食感と香ばしさがアクセントを添えます。

【くるみサラダ】 

 くるみは、キノコやベビーリーフ、トマトなどの野菜とも相性抜群。くるみを使ったドレッシングも市販されています。

【くるみ入りチーズ】 

 くるみはクリームチーズともよく合う素材。ワインのおつまみやサンドイッチの具にピッタリです。

【くるみの蜂蜜漬け】 

 おしゃれな瓶に入ったナッツの蜂蜜漬けは近年、デパ地下などでたくさん販売されています。ヨーグルトや紅茶に入れたり、バゲットに乗せたりすれば、おもてなしにも使える一品に。

【くるみ入りアイスクリーム】 

 くるみと、メープルシロップやチーズを合わせたアイスクリームも市販されています。自分でハニーローストしたくるみをバニラアイスに混ぜるのもオススメ。

【ユルム茶】 

 くるみやアーモンド、松の実などを、ハト麦の種子とブレンドした韓国のお茶。ナッツ感たっぷりのクリーミーな味わいです。

【くるみの酒】 

 くるみを漬け込んだ酒や、熟す前のくるみを使ったリキュール、ペースト状にしたくるみを日本酒と混ぜたものなど、さまざまな種類があります。

くるみをさまざまな料理に活用しよう

「くるみは工夫次第でさまざまな料理に活用できます。お菓子に混ぜたり、ペースト状にしたりすれば、子どもでも抵抗なく食べることができます。食材の新たなレギュラーメンバーとして、くるみを普段の食生活に取り入れてみてください。ただし、たくさん食べるほど効果的というわけではありません。食べすぎには十分注意し適量を心掛けましょう」(関口さん)

(オトナンサー編集部)

関口絢子(せきぐち・あやこ)

料理研究家・管理栄養士・インナービューティースペシャリスト

米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー。企業やウェブサイトなどの各種メディアで、レシピやコラム、企画提案などを行う。斬新なアイデアやニーズを捉えた企画が人気を博し、CM用のフードコーディネートやフードスタイリング、商業施設のフードプロデュースなど多岐にわたり活動。「毎日続けられること」をモットーに簡単・おいしい・おしゃれ、かつ美容と健康に直結したレシピを発信。自らの体調不良を食で克服した経験から執筆した著書「キレイになる!フェロモンレシピ」で「食から始めるアンチエイジング」をテーマに、女性が一生輝き続けるための食事法を紹介。セミナーや女性誌の特集で人気を集めている。

■オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/ayako-sekiguchi/
■YouTubeチャンネル「管理栄養士:関口絢子のウェルネスキッチン」(https://www.youtube.com/channel/UC6cZRYwUPyvoeOOb0dqrAug

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