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厳罰化や廃止論も…「少年法」を考える上で、私たちが理解すべき基本とは

少年法は子どもに厳しい?「究極の目標」を意識しよう

 少年法によって、犯罪に当たる行為をした少年の氏名は報道で公開されず、場合によっては刑罰が与えられなかったり、軽くなったりするという認識が広くあることから、「少年法は子どもを甘やかしている」と批判されることがありますが、一方で、少年法は子どもに厳しい側面もあります。

 少年法には「虞犯(ぐはん)少年」という独特の概念が登場します。例えば、あなたは大人になってから、仕事終わりに同僚たちと夜の街を飲み歩き、日付が変わって帰宅する途中で警察官に「早く帰れ」と叱られたことはあるでしょうか。このような目に遭ったら、あなたはきっと「余計なお世話だ」と思うはずですが、このような「余計なお世話」を少年に対してはできる法的根拠がこの「虞犯少年」です。

 これは「まだ犯罪行為をしていないけど、今後やってしまいそうだな」と思われる少年に対し、事前に特別な教育や対処ができるという規定です。大人は法律上、原則として「犯罪にならなければ何をやってもいい」のですが、子どもはそうではないのです。

 ここまで、少年法の概要を改めて解説してきました。少年法改正の議論にあたっては現行の制度と理由を理解した上で、その問題点を解決したり、「究極の目標」に向かって有意義な制度にブラッシュアップしたりする観点が不可欠です。「究極の目標」とは、大人向けの刑事制度と同じで「犯罪が起きないようにすること」です。少年法には確かに、よくある批判のとおり、「子どもを甘やかす」側面があることも事実です。悲惨な事件の被害者が受けた心痛を思えば、その批判は何ら不思議ではありません。

 しかし、重要なのは「許せない」という懲罰感情のままに相手を罰することではなく、そもそも、「被害者を生まないようにするためにはどうしたらいいか」という観点で議論を進めることです。

 当然、被害者のケアという観点も重要ですが、それは加害者への刑罰がベストなのかという議論と併せて「刑罰以外にはどんなケアがあり得るか」という視点からも進められていく必要がありますし、一方で、間違っても「被害者のために厳罰を与えたら、さらなる被害者を生んでしまった」という事態は避けなければいけません。そして、もちろん、加害者の年齢や状況によっては厳罰の予告が少年犯罪の抑止に効果的なケースもあるでしょう。

 ここに挙げた一例だけでも少年犯罪を取り巻く論点は非常に多く、考えれば考えるほど混乱してきそうです。そこで議論を放り出さず考え続けるために「そもそも少年法って何のためにあるんだろう」「少年法を改正してどんな社会を実現したいんだろう」という原点を常に持っておきましょう。

(教育研究者 山崎聡一郎)

【画像】「こども六法」の少年法の説明

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山崎聡一郎(やまさき・そういちろう)

教育研究者

教育研究者、ミュージカル俳優、写真家。合同会社Art&Arts社長、慶応義塾大学SFC研究所所員。修士(社会学)。法と教育学会会員。埼玉県立熊谷高校を経て慶応義塾大学総合政策学部に進学し、「法教育を通じたいじめ問題解決」をテーマに研究活動を開始。学部3年時、英オックスフォード大学に短期留学し、単位取得。慶応大の学部卒業時、学位記授与学部総代に選出。その後、一橋大学大学院社会学研究科修士課程を修了。ミュージカル俳優としての顔も持ち、劇団四季「ノートルダムの鐘」に出演するほか、コンサート等の興行を企画運営するなど多方面で活躍。板橋区演奏家協会会員。著書に「こども六法」(弘文堂)など。8月24日午後7時、ニコニコ生放送「明日学校へ行きたくない」(https://live2.nicovideo.jp/watch/lv327277753https://live2.nicovideo.jp/watch/lv327277927)、8月26日午後7時、「いじめ問題を考えるYouTubeライブ」(https://www.youtube.com/watch?v=FtT8F8K3MJg

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