オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

履歴書の「賞罰欄」、懲戒処分やスピード違反歴を書く義務はある?

履歴書に「賞罰欄」という欄がある場合、懲戒処分やスピード違反の経験などを書く義務はあるのでしょうか。

履歴書の「賞罰欄」に書く義務は?
履歴書の「賞罰欄」に書く義務は?

 萩生田光一・文部科学相が7月22日、教員免許法の見直し方針を表明し、児童生徒へのわいせつ行為で教員免許を失った場合の免許再取得を厳しくする考えを示しました。現行法では、わいせつ行為で懲戒免職となり、教員免許を失っても、3年経過すれば再取得できるためです。

 民間企業でも、不祥事で懲戒解雇となったり、解雇までいかなくても停職、戒告などの懲戒処分を受けたりする人がいますが、そのような経歴のある人は再就職や転職時の履歴書に、処分を受けた履歴を書く義務があるのでしょうか。社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

「罰」は有罪判決による「罰」

Q.「賞罰欄」のある履歴書に記入する際、賞罰欄にはどのようなことを書くべきなのでしょうか。

木村さん「履歴書の賞罰欄ですが、ここでいう『罰』の定義は一般的に、刑法上の犯罪による懲役刑、禁錮刑、罰金刑といった有罪判決を受けて科された『罰』(刑事罰)のことです。

賞罰欄に『罰』として記入する場合は、検察官に起訴されて罰金刑以上が確定した刑罰のみが対象となります。逆に、警察および検察が捜査した刑事事件であっても、不起訴処分や起訴猶予になった場合は刑事上は無罪であり、また、裁判中の事件の場合は刑が確定していないため、『罰』の対象外となり、履歴書への記入は必要ありません。この基準は法律で決められたものではありませんが、裁判例などから慣習化しています。

なお、裁判が確定していても、刑期を終えて10年が経過したり、執行猶予期間が経過したりした場合も刑事罰として記入しなくてかまいません。刑法34条の2に、一定の条件の下で刑の言い渡しが効力を失うことが定められており、それに準じた基準と考えられます。

一方の『賞』については『罰』と違い、明確な定義はありません。一例として、全国大会や国際大会、あるいは希望職種に関係した業界内で認知されている大会などの受賞や表彰といった、自分がアピールしたい履歴を記入します」

Q.では、賞罰欄に以前の勤務先での懲戒解雇や懲戒免職、その他の懲戒処分は書かなくていいのでしょうか。「スピード違反で反則金を払った」などの場合は。

木村さん「民間企業に勤めていた場合、懲戒解雇をはじめとする懲戒処分はあくまでも企業の内規により下された処分であり、刑事罰ではありません。従って、処分を受けたことを賞罰欄に書く必要はありません。公務員だった場合、懲戒免職などの懲戒処分は法律に定められた事由に基づくものですが、こちらも刑事罰ではないので、賞罰欄に書く必要はありません。

また、軽度な交通違反(例えば、駐車違反など)で反則金(行政罰扱い)を納付した場合は刑事罰を受けたことにならないので、履歴書の賞罰欄への記入は必要ありません。ただし、重大な交通違反を犯した場合(例えば、酒気帯び運転や一般道路で違反速度30キロ以上のスピード違反など。この場合の納付金は「反則金」ではなく「罰金」なので刑事罰となります)や、道路交通法違反等で逮捕され、刑が確定した場合は賞罰欄への記入が必要になります。

なお、運転を必要とする職種(タクシーやトラック運転手など)に転職する場合は履歴書への記入は必要でなくても、企業との面接で交通違反歴を質問されます。その場合は正直に申告する義務があります」

Q.賞罰欄のある履歴書に刑事罰の履歴を書かなかった場合、何らかのペナルティーはあるのでしょうか。

木村さん「法律違反的なペナルティーを科すことは、一般的にはできないと思われます。しかし、経歴詐称で入社した場合、発覚すれば、会社の就業規則などの定めにより解雇されるといったペナルティーを受けることになります」

Q.賞罰欄がない履歴書の場合はどうでしょうか。

木村さん「市販の履歴書やインターネットでダウンロードした履歴書を使用する場合、昨今では賞罰欄がない履歴書がほとんどです。そのため、あえて罰について記載しなくてもかまいません。ただし、転職先の企業によっては市販品ではなく、独自仕様の履歴書を提出するよう求められることがあります。その履歴書に賞罰欄があれば、正直に記入しなくてはなりません」

面接で処分歴を聞かれたら?

Q.履歴書に処分歴を書いていなかったものの、面接で過去の処分歴を聞かれた場合、正直に答えないと問題が生じるのでしょうか。

木村さん「履歴書に記載する必要がなくても、企業側が面接で犯罪歴や処分歴を確認することがあります。また、前職の退職理由を尋ねられた場合は、懲戒解雇されたことを正直に話す必要があります。それを伝えないまま採用され、入社後に犯罪歴や懲戒解雇などの事実が露見した場合、経歴詐称として解雇される可能性があります」

Q.過去の処分歴を、面接する側が聞くことは問題ないのでしょうか。

木村さん「企業が採用時の面接を行う場合、相手に対して聞いてはいけない項目があります。それは『本人に責任のない事柄』(例:本籍地や出生地、家族に関する事柄など)と『本人の自由であるべき事項』(例:宗教や支持政党、思想に関する事項など)です。これらの項目は職業安定法や国の告示により、個人情報の収集が認められていません。

面接で過去の犯罪歴や処分歴を尋ねることについてですが、企業側としては、採用後のトラブルを避けるためにも確認しておきたいところでしょう。しかし、いきなり質問を投げ掛けると応募者に不信感を与え、さらにはプライバシーの侵害と取られる可能性もあります。そのため、企業独自の履歴書に賞罰欄を設けて記入させたり、中途採用の場合は職務経歴書の提出を求めて、記載内容をもとに質問を重ねていったりします。

また、応募者の担当する業務の内容によっては犯罪歴の確認が必要な場合があり、その際は応募者に理由をよく説明した上で確認を行うようにします」

Q.過去に懲戒解雇の経歴や犯罪歴がある場合、それを明らかにしての再就職は難しいイメージがあります。

木村さん「一般的には、過去の犯罪歴や懲戒解雇処分の経歴を明らかにした上での再就職は難しいケースが多いと思われます。特に、職務に関連した原因で刑事罰や懲戒処分を受けた場合(例:経理担当が経費を使い込む、トラックの運転手が自己の重大過失で事故を起こしたなど)、同一職種での再就職は困難を極めると思います。

一方で、犯罪歴があった人を採用している企業の事例が、日本財団が運営する『日本財団職親プロジェクト』のホームページで紹介されています。過去にマスコミで紹介された企業もあり、ご存じの人もいるかもしれません」

(オトナンサー編集部)

木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

コメント