夢追う“ピーターパン夫”と離婚した36歳女性が元夫と会い続ける理由
今でも一番話しやすい相手
「こんな、映画みたいなことが自分に起きるなんて、想像もしていなかったです」と話すのは麗奈さん(仮名、32歳)。美容師の彼と出会ったのは、麗奈さんが30歳のとき。麗奈さんが最初に結婚したDV夫と、やっとの思いで別れた直後でした。
「本当に大変な経験をして、男性不信だった時期に出会ったのが彼です。いつも指名しているサロンの美容師さんが、たまたま体調不良でお休みされていて、代わりに髪を切ってくれたのが彼でした。『いつもの担当者でなくて申し訳ない』ってとても恐縮してくれて、優しい人だなと思ったのが第一印象です。
次の来店時に彼を指名しようとしたら、別の店に移ったって言われて。彼にもう一度髪を切ってほしくて、新しいサロンに通うようになりました。職業柄か女子力が高いし、話しやすい。常に“俺さま”の上から目線だった最初の夫とは真逆で、男性にもこんな人がいるんだなって、好意を持ちました」
その後、半年付き合って、麗奈さんはプロポーズされました。
「『傷ついた麗奈ちゃんを僕が幸せにしたい』と言ってくれました。『もう男なんて一生いらない!』と思っていたけれど、この人だったら一緒にいて楽だし、人生をやり直せるかなと思って再婚しました」
麗奈さんにとって、彼は理想的なパートナーでしたが、唯一の不安はEDだったこと。結婚前も何度かセックスを試みたそうですが、一度もうまくいかなかったといいます。しかし、DV夫の“俺さまセックス”に耐えてきた麗奈さんにとっては、たとえ2人が一つになれなくても、一生懸命愛してくれる彼とのベッドタイムは十分満ち足りたものだったそうです。
そんな彼が結婚して1年近くたったある晩、「話があるんだけど」と真顔で切り出しました。「麗奈を幸せにしたかったけど、もう僕にはその資格がない。申し訳ない」と、いきなりリビングで土下座をしたのです。
「やっぱり…ってその瞬間思いました。その2~3カ月前から、夜遅くまで飲み歩いたり、私が話し掛けても上の空だったり、1人でものすごく落ち込んでいたりと様子が変だったんです。『もしかして、他に好きな人ができたの?』と聞くと、『そうじゃない。でも気付いたんだ。自分は男の人が好きなんだって』とボロボロ涙を流しながら彼が言ったんです。私は怒るよりもあっけにとられて、二の句が継げませんでした。
そういえば、その数カ月前に映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見たとき、妙に彼が号泣していたなとか、女子力の高さとか、一緒に暮らした際の同性同士のような居心地のよさとか、私に対してEDだったこととか、頭の中でいろんなことが一気に結び付きました」
涙の告白から2カ月後、2人は正式に離婚。元夫は現在、新しい男性パートナーと暮らしているそうです。麗奈さんの髪は今でも彼が担当。麗奈さんにとって、今でも一番話しやすい男性であることに変わりはないそうです。
「一生会わない」固定観念を捨てる
「恋人・夫婦仲相談所」で相談を受けていると、さまざまな夫婦、元夫婦に出会います。離婚したからこそ2人の風通しがよくなり、腹を割って話せるようになった人もいます。苦しい結婚生活を重ねるより、離婚して対等に向き合うことができるようになれるなら、それも選択肢の一つです。
離婚をためらう人へのアドバイスです。離婚しない理由を「生活費のため、子どものため、世間体のため…」などと並べてみて、たとえどれかを、あるいは全てを犠牲にしてでも離婚する方が「自分らしくいられる」と思ったなら、パートナーに「離婚したら、2人の気持ちはいい方に変わると思う? それとも、顔も見たくない?」と切り出してみてもいいのではないでしょうか。
離婚には悪いところといいところ、両面あります。いいところにフォーカスすれば、「離婚後も一緒に食事できる大人の関係」を築くことも可能です。まずは「離婚=一生会わない」という固定観念を捨ててみてください。
(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)
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