ウィズコロナ時代に変わらない、変われない「居酒屋」は消滅するのか【#コロナとどう暮らす】
緊急事態宣言解除後も、居酒屋の経営状況は厳しいままです。「ウィズコロナ」時代に合わせて変わらなければ、日本から居酒屋が消滅する可能性もあるのでしょうか。

サラリーマンが仕事帰りに立ち寄る憩いの場の一つに「居酒屋」がありますが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、多くの店の経営が苦しくなっていると伝えられています。全国で緊急事態宣言が解除されたとはいえ、いまだに、来客数や売り上げを取り戻したケースはほとんどありません。
また、ワクチン接種や治療法が確立するまでは、新型コロナの感染拡大を防止するために、いわゆる3密を避ける「新しい生活様式」が求められており、密閉空間で人が密集し、密接に人と関わる居酒屋は、新型コロナ以前と全く同じ形で運営するのは厳しいと思われます。
「ウィズコロナ」時代に合わせて変われなければ、数年後には、日本から居酒屋が消滅する可能性もあるのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。
運転資金に関する多数の相談
Q.報道などで、居酒屋の経営状況が厳しいことが伝えられています。業界団体が行う調査など、客観的な数字があれば教えてください。
成田さん「新型コロナウイルスによる営業自粛要請後の2020年4月に、帝国データバンクが公表したデータでは、居酒屋チェーンのワタミの既存店売上高は前年同月比91.9%減、鳥貴族は96.2%減など、居酒屋を運営する企業がかつてない異常事態に見舞われています。国内で、新型コロナ感染者が増加し始めたのは2月に入ってからですが、わずか3カ月で業界をゆるがす大惨事になりました」
Q.実際の居酒屋の現状は、どれくらい深刻なのでしょうか。
成田さん「居酒屋を含めた飲食業は人件費や家賃などの固定費が高く、薄利のため、企業の貯蓄である内部留保も少ないのが現状です。そのため、売り上げが激減するとすぐに、運転資金が枯渇して廃業になってしまうケースが多いのです。
現状、中小企業の居酒屋は、その月の売り上げで前月分の支払いや従業員の給料などを支払っているところも多く、飲食店のコンサルティング事業も行う当社にも、『持続化給付金など行政の支援が遅過ぎて、現金が入金される前につぶれてしまう』といった、運転資金に関する相談が多くのお客さまから寄せられています」
Q.緊急事態宣言解除後も、来店客が新型コロナ以前のように戻らない状況が続くと、数年後には、日本から居酒屋が消滅する可能性もあるのでしょうか。
成田さん「デートや飲み会、歓送迎会など“コミュニケーションの場”として顧客を獲得してきた居酒屋は、緊急事態宣言が解除された現在も、新しい生活様式の要請により、お客は戻ってきていません。
中小規模の店舗ではすでに閉店が相次いでおり、大規模チェーン店でも大幅な店舗数削減、『居酒屋』から『食堂』などへの業態変更を発表しています。居酒屋が完全に消滅することはないと思いますが、店舗数が減り、大きく再編されることは間違いないと思います」
Q.日中のお弁当販売やテークアウトを開始するなど、経営努力をする居酒屋もあります。こうした経営努力は、売り上げの維持に役立っているのでしょうか。
成田さん「もちろん、何もしないよりはよいですが、多くの居酒屋で利益がほとんど出ていないのが現状です。以前から、お弁当販売やテークアウトをしていた居酒屋ならともかく、今回、新たにそれらを始めた居酒屋では、容器や紙材の仕入れ、システムの導入などで販売開始前に、すでに多くのコストが費やされました。さらに、ウェブ媒体やチラシなどで大々的に宣伝しないと認知されず、お客は少ないままです」
Q.今後、居酒屋が生き残るためには、どのようにすればよいと思われますか。
成田さん「今後もずっと、新しい生活様式が続いていくようなら、“コミュニケーションの場”の提供を重視した低料金の居酒屋は採算が取れなくなり、店の数は減っていくでしょう。生き残るためには、コミュニケーションの場を求めるお客から、“よりおいしい食事”を求めるお客へと、ターゲットを変える必要があります」
Q.「居酒屋は3密になるから避けよう」という雰囲気が世の中にはあると思います。私たちは今後、居酒屋をどのように利用すればよいのでしょうか。
成田さん「私たちが利用しなければ、居酒屋は確実につぶれます。居酒屋が一度つぶれてしまえば、よほどのことがない限り、私たちはその居酒屋に二度と行くことはできません。お気に入りの居酒屋があれば、来店客となる私たちも今、本当に考えなければならないときが来ています。
世の中では『居酒屋は3密になるので避けよう』とステレオタイプに決めつける傾向もあると思いますが、感染予防策をこれでもかと徹底して、お客を迎えようとする居酒屋もあります。来店客になり得る私たちは、そうした対策が安心できるのかどうか、自ら判断して、お気に入りのお店を応援したいものです」
(オトナンサー編集部)
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