「世界恐慌以来の不況に」 当時と今の日本は何が違う? 家計守るには?
新型コロナウイルスの感染拡大による不況について、「世界恐慌以来かもしれない」という言葉も出てきました。そもそも、「世界恐慌」とは。
新型コロナウイルスの感染拡大による不況について、「リーマン・ショック以来」「バブル崩壊以来」といった言葉に続き、「世界恐慌以来の不況の懸念も」という言葉も出てきました。リーマン・ショックやバブル崩壊は経験者が多く、実感がありますが、「世界恐慌」となるとイメージがつきにくい人もいるでしょう。
世界恐慌とはどのような不況で、その中でどう家計を守るべきか、ファイナンシャルプランナーの長尾真一さんに聞きました。
米国の株大暴落、日本は昭和恐慌へ
Q.世界恐慌とは、どのような不況だったのでしょうか。
長尾さん「第1次世界大戦(1914~18年)以後、世界経済の中心となって好景気に沸いていたアメリカで、1929年に株式市場が暴落しました。当時、アメリカは世界最大の債権国でもあり、世界経済に大きな影響力があったため、その影響は世界に波及し、全世界が不況に陥る『世界恐慌』となりました。
各国は自国の経済を守るため、保護主義に走り、イギリスやフランスなど植民地を持つ国は、自国の植民地以外の国には高い関税をかけて貿易から締め出す『ブロック経済』を敷きました。一方で、植民地を持たないドイツやイタリアでは、危機が深刻化し、ファシズムが台頭しました。
そして、日本を含めた『日独伊三国同盟』にもつながり、世界恐慌は結果的に、第2次世界大戦の要因にもなったと言われています」
Q.世界恐慌時、日本はどのような状態だったのでしょうか。今の日本との比較もお願いします。
長尾さん「第1次世界大戦中は大戦景気に沸いた日本も、戦後は戦後恐慌(1920年)、銀行恐慌(1922年)、関東大震災による震災恐慌(1923年)、金融恐慌(1927年)と、1920年代は次々と不況に陥りました。
そして、極め付きが、アメリカの株価暴落を発端とした世界恐慌でした。日本経済は世界恐慌の影響により、深刻な打撃を受け、昭和恐慌(1930年)となりました。その結果、倒産や失業が増え、不安定な政治・経済状況は軍部の台頭、戦時経済体制へとつながりました。
当時と現在を単純に比較することはできませんが、今の日本は、いくら経済が不安定になっても戦争に向かうことはまず考えられませんし、恐慌が続いていた1920年代と違って、コロナショック前までは景気も悪くありませんでした。2020年3月の完全失業率は2.5%なので、これも現時点では、世界恐慌時ほど深刻な状況とは言えません。
ただし、失業者数は前年同月比で2万人増加しており、2カ月連続で増えているのも事実です。内部留保でしのいでいる企業も、経済活動の自粛による影響は日増しに大きくなるので、コロナショックの影響はむしろ、これからだと思います」
Q.リーマン・ショックについても、当時の日本の状況と今の状況との比較をお願いします。
長尾さん「アメリカの住宅バブル崩壊により、サブプライムローン問題が顕在化し、2008年9月に大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが倒産しました。それに端を発して、世界規模の金融危機に発展したのが『リーマン・ショック』です。
世界の金融市場は大混乱し、株価は急落しました。日本も、サブプライム問題前の2007年2月には1万8000円台だった日経平均株価が、リーマン・ショック後2008年10月には一時7000円を割る水準にまで下がり、非正規雇用者の雇い止めや派遣切り、新卒採用の内定取り消しが問題になりました。
ただし、リーマン・ショックは根本的には『金融危機』であったため、弱った金融機関への公的資金注入や、大胆な金融緩和や公共事業投資といった財政金融政策によって経済は回復に向かいました。
今回のコロナショックがリーマン・ショックと違うのは、政府や中央銀行が資金を注入すれば経済が回復するわけではなく、そもそも、経済活動が停止していることです。
アメリカで、失業保険の申請件数がリーマン・ショック時を大きく上回ったように、日本も経済の停滞が長引けば、企業の倒産や失業が急増し、雇用への影響はリーマン・ショックを超える可能性があります」
Q.バブル崩壊についても、お願いします。
長尾さん「1989年末に、3万8915円87銭の史上最高値(終値)をつけた日経平均株価は、それをピークに翌1990年1月から暴落に転じ、1992年末には1万6924円95銭と半分以下にまで下がりました。また、1991年からは、それまで高騰していた地価も急落し、景気が急速に悪化しました。
1991年3月から1993年10月までの景気後退期を、一般的には『バブル崩壊』と呼んでいます。バブル崩壊の影響は長引きました。1993年に2%台だった完全失業率は、1995年に%台、1998年に4%台、2001年には5%台と上昇しました。また、1993年から2005年まで有効求人倍率は1を下回り、『就職氷河期』と呼ばれました。
今回のコロナショックでは、株価は今のところそれほど大きく下がっていませんが、工場の生産停止や企業の倒産が増えています。そうなると当然、失業者の増加や就職難が想定されます。
そして、バブル期と同様に2013年以降、アベノミクスやインバウンド需要で高騰していた特に都市圏の不動産もこれから、市況が急速に悪化する懸念があると思います」
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