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飛沫感染防ぐ「ソーシャルディスタンス」、会話以外でも距離を置く意味は?

新型コロナウイルスの飛沫感染を防ぐために「ソーシャルディスタンス」が叫ばれていますが、人と話をするとき以外でも、距離を保つ必要はあるのでしょうか。

レジ待ちで間隔を空けるよう求める店の掲示と目印(2020年4月、時事)
レジ待ちで間隔を空けるよう求める店の掲示と目印(2020年4月、時事)

 新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、人と会話したり、近づいたりする距離を約2メートルにする「ソーシャルディスタンス」が叫ばれています。欧米では、実践する人が増えているそうですが、日本ではまだ、浸透していないように見えます。

 会話をすると飛沫(ひまつ)が飛ぶため、ソーシャルディスタンスが有効だと理解できますが、なぜ、会話をするとき以外も距離を空けた方がよいのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

本来は風邪やインフルでも必要

Q.「ソーシャルディスタンス」とは何ですか。

市原さん「ソーシャルディスタンスとは『社会的距離を保つ』という意味合いで、人と人との物理的な距離を保つことで、感染症の接触感染や飛沫感染を防ごうとする手段のことです」

Q.話すとき以外であっても、ソーシャルディスタンスは必要でしょうか。

市原さん「話すとき以外であっても、ソーシャルディスタンスは必要です。咳(せき)やくしゃみが急に出たときに、近くに人がいると感染を広げてしまう可能性があるからです。常に距離を保つことでそれを防ぐことができます。

また、思いがけず他人に近づいてしまったり、他人から近寄られたりすることもあります。そうすると接触感染や飛沫感染の可能性があるので、距離を保つことは大切です。自分が感染しないためだけではなく、自分が感染させないためにも、思いやりの心で距離を意識しましょう」

Q.約2メートル離れることが理想とされていますが、けっこうな距離だと思います。なぜ、2メートルなのでしょうか。

市原さん「咳やくしゃみをしたことで生じる飛沫は、1メートルから2メートル先で落下するためです。約2メートル離れれば、飛沫を浴びて感染する可能性は低くなります」

Q.風邪やインフルエンザもウイルスによって人にうつる病気ですが、ソーシャルディスタンスは聞いたことがありません。風邪やインフルエンザでも、本来であればソーシャルディスタンスが必要なのでしょうか。

市原さん「本来であれば、風邪やインフルエンザでもソーシャルディスタンスは必要です。しかし、風邪は、インフルエンザや新型コロナと比べると重症化の可能性は低いです。また、インフルエンザにはワクチンがありますし、タミフルなどの治療薬もあります。

これに対し、新型コロナウイルスにはワクチンがなく、治療法も確立していません。新型コロナウイルスでソーシャルディスタンスの必要性を指摘されるようになったのは、予防・治療法が確立していないことの他、強い感染力があること、また、致死率の高さが心配されることから、ウイルスへの感染を少しでも広げまいとする意識からだと思います」

Q.欧米に住んでいる日本人のネット上の投稿や報道を見ると、ソーシャルディスタンスを意識している人が多いように思います。日本では、ソーシャルディスタンスは浸透しないのでしょうか。

市原さん「日本文化やしきたりの専門家ではないので、あくまで個人的な経験です。診察時でいうと、年齢が上がるにつれて、椅子を近づけるなどして近い距離で接しようとする人が多いと思います。他人と距離を保つことが失礼と思う傾向があるのかもしれません」

Q.日本でソーシャルディスタンスを物理的に実践するのが難しい場合、何か他の対策はあるのでしょうか。

市原さん「距離を保てないのであれば、他の人が近くにいる場所では、マスクをする、しゃべらない、飲食をしないことでしょうか」

(オトナンサー編集部)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。

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