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和歌山の医師が感染…医療現場の新型コロナウイルス対策は? 感染者にどう対応?

新型コロナウイルスの感染が拡大し、医師が感染したケースも。医療現場では、どのように感染症対策をしているのでしょうか。

医師の感染症対策は?
医師の感染症対策は?

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、2月13日には、和歌山県の医師が感染していることも判明しました。和歌山県によると、医師は50代男性で、最近の海外渡航歴はないとのことです。また、1月31日から発熱していたものの、その後も患者の診察にあたったことがあったそうです。

 医師の感染は院内感染の拡大につながる恐れもありますが、医療現場ではどのように感染症対策をしているのでしょうか。新型コロナウイルス対策などについて医療機関を取材している、医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

地域の中核病院でもマスク不足に…

Q.新型肺炎の流行後、医療機関の医師はどのような感染症予防策を取っているのでしょうか。

森さん「一般の病院やクリニックでは、新型肺炎の流行後であっても基本的にはインフルエンザ流行期の予防策と同じです。

取材した首都圏のクリニックの院長は、医師と職員のこまめな手洗い▽手指消毒▽マスクの着用▽クリニック内の加湿と空気清浄(換気)を徹底しているとのことです。別のクリニックの医師も、患者に接する前と後の手指消毒や、聴診器をアルコール綿で拭くなど消毒の管理を徹底しているそうです。

感染症の予防策として、インフルエンザを含む感染の疑いがある患者が来院した場合は、別室に通す▽せきの症状があり、マスクがない患者に対しては受付でマスクを渡すということを実施している医療機関がほとんどですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染数増加とともに、医療機関であってもマスクの購入が難しくなり、対策が十分に取れなくなっているそうです。

地域医療の中核を担う400床規模の病院でもマスク不足になっており、限られた数のマスクを、不特定多数の人と接触する受付スタッフ、医師、外来看護師、重症患者と接触する病棟看護師などから優先して着用しているとのことでした」

Q.新型コロナウイルスの感染が疑われる場合、国は各都道府県の「帰国者・接触者相談センター」に相談した上で医療機関を受診するよう広報していますが、直接、医療機関を受診する人がいるかもしれません。感染の疑いのある人が来院した場合、一般の医療機関ではどのような対応するのでしょうか。

森さん「感染が疑われるような患者が実際に来院したクリニックでは、数回の診察、胸部エックス線撮影の結果から新型コロナウイルス感染症を疑い、所轄の保健所へ連絡。別のクリニックでは、症状と問診結果に加え、中国から来日した患者だったため、やはり所轄の保健所へ連絡したとのことです。

いずれも、現時点では、新型コロナウイルスの陽性陰性を調べる『PCR検査』の対象がかなり限られているため保健所での検査対象とならず、自主的に外出を控える自宅待機をお願いしたり、肺炎の重症化が心配される場合は入院可能な病院を紹介したりしているそうです。

今後、この検査の対象は拡大される方針であり、『湖北省への渡航歴がある』などの要件に限定されることなく各自治体の判断で検査可能となる見通しです」

Q.感染が疑われる人が来院した場合、医師や看護師、医療事務スタッフ、別の患者などはどのような対応を取るのでしょうか。

森さん「取材したクリニックでは、受付から一般患者との導線を分け、個室で待機してもらった後、他の患者と接触しないルートでエックス線検査室に入り撮影、診察。会計は後日対応にして、来院時と同じルートで帰宅してもらうそうです。診察する医師は、感染が疑われる患者と接触する前にマスク、ゴーグル、帽子を着用。手指や接触した部分の消毒の徹底はインフルエンザ患者の場合と同様です。

別のクリニックの医師は、駐車場の車内で待機してもらい、そこで診察することも検討したいと話していました」

Q.医師が発熱やせきの症状を自覚した場合、通常の時期(インフルエンザの流行期以外)はどのようにしているのでしょうか。インフルエンザの流行期や今回のような新型肺炎の流行期はどうですか。

森さん「軽いせきだけで発熱がなければ、マスクをした上で勤務することが一般的のようで、発熱があれば基本的には『休むべきだ』と考えている医師がほとんどです。実際は、医師が複数いる病院の勤務医と個人診療所の開業医とで多少の差があるようです。

病院勤務の場合は、発熱があれば診療業務を代わってもらえる環境にあることが多く、マスク、手指消毒等の管理をした上で、最低限の引き継ぎをして帰宅するなどの対応を取っている模様です。個人開業医の場合は、受診予定の患者に大きな影響が出るため、薬を飲み、最大限の感染制御をした上で診察を継続することが多いようです。

ただし、インフルエンザが陽性であれば、診療は停止となります。新型コロナウイルス感染症については、『かかったと感じたら診療を自粛すると思うが、インフルエンザと異なり、簡単には検査ができない上に潜伏期間もあるため、どの時点で保健所に連絡したり休診の判断をしたりするのかが難しい』という医師がほとんどでした」

Q.医師が感染症にかかっていることが判明した場合、二次感染を防ぐためにどのようなことをするのでしょうか。また、発症から感染判明までに診療行為をしていた場合、その間診療した患者にはどう対応するのですか。

森さん「感染が判明した時点ですぐ個室に入り、他の人との接触を避け、受診歴から受診者全員に電話連絡し、感染がないことが確認されるまで外出をしない、症状が少しでもあれば家族とも接触を避けるよう説明するそうです。

インフルエンザ感染が判明した場合、医師と接触する機会の多かった看護師らにインフルエンザ薬を予防投与(保険適用ではなく全額病院の費用による投与)することもある、と話した医療機関もありました。今回の新型コロナウイルス感染症については『多くの医師は保健所に相談し指示に従う』とのことです」

(オトナンサー編集部)

森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

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