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3万円近いSDカードも? スマホ購入時のオプション契約や備品購入、解除できる?

携帯ショップでスマホを購入する際、高額な契約を結ばせるケースが以前から問題視されています。サービスの契約解除や返金を求めることはできるのでしょうか。

携帯ショップでの契約、解除できるのは?
携帯ショップでの契約、解除できるのは?

 高齢者でもスマホを利用する人が増えていますが、携帯ショップの店員に言われるまま有料のオプションサービスを複数契約したり、タブレットなどを一緒に購入したりして、月々の支払いが高額となるケースが問題視されています。1月には、画像データなどを保存するマイクロSDカードを約2万8000円で買わされたという事例もSNSに投稿されました。

 このような場合、契約解除や返金を求めることはできるのでしょうか。消費生活アドバイザーの池見浩さんに聞きました。

携帯ショップの厳しい収益状況が背景?

Q.そもそも、本人の同意をしっかり取ることなく契約させるというのは、法律的に問題にならないのでしょうか。

池見さん「契約は基本的に、契約書面がなくても互いに合意すれば口約束でも成立します。店員からすすめられ、『はい』『買います』『契約します』と伝えた時点で成立してしまいます。一方で、『契約内容にうそがある』『消費者が不利益を被るような契約内容や状況だった』などの場合には、無効や取り消しの主張が可能な場合があります。

なお、契約前に契約条項や利用規約への同意を求められるケースがあります。サインやチェックを入れた時点で、『消費者は十分に確認し、理解した』と見なされます。必ず一読しましょう。

さらに、消費者契約法、電気通信関連事業者を規制する電気通信事業法では、消費者と契約する前に、契約相手の知識、経験、契約目的や理解度に十分配慮し、確認しながら説明する義務が設けられています。これを『適合性の原則』といいます。

携帯ショップでの契約を例にすると、通信契約のプランはもちろんのこと、電話機能以外必要のない高齢者に対し、Wi-Fiやデータ通信使い放題プラン、不要なルーターやタブレット、SDカードなどを契約させた場合、この適合性の原則が問われます。

また、通信契約は契約内容自体が複雑で分かりにくい面があります。そこで、事業者には利用者が契約内容をきちんと確認できるよう、契約後すぐに契約書面を交付する義務が課せられています。契約書面を渡されないときはその場で要求し、契約内容をきちんと確認してください」

Q.クーリングオフ制度を利用して契約解除を求めることはできるのでしょうか。

池見さん「特定商取引法のクーリングオフ制度は主に訪問販売や電話勧誘販売が対象で、直接店舗に出向いて契約するケースには適用されません。電気通信事業法には『初期契約解除制度』という、特定商取引法のクーリングオフに似た契約解除制度があります。

参考までに『初期契約解除制度』について説明すると、契約書面を受け取った日を初日とした8日間が過ぎるまでは、契約先事業者の合意なく書面で契約を解除できる制度で、光回線や携帯電話などの電気通信サービスが対象です。

この制度では、通信サービスに関しては違約金なしで契約を解除できる一方、通信サービス契約時に購入した携帯電話端末や関連製品の解約はできません。また、解約までの間に利用した分のサービス料金や工事費用、事務手数料は支払う必要があります。

なお、大手携帯通信会社他一部の通信会社については、『初期契約解除制度』の特例制度である『確認措置』が認められています。『電波の状態が悪い』『契約前の説明などが不十分だった』のいずれかのケースが認められた場合、通信サービスに加え、サービス契約時に購入した通信端末については事務手数料や違約金なしで解約できます。制度の詳細については、総務省のホームページをご確認ください」

Q.なぜ、携帯ショップで客が高額な契約を結ばされる事例があるのでしょうか。

池見さん「電気通信事業法の改正やその他規制の強化などで、携帯ショップの収益が厳しい状況が背景に考えられます。通信回線の契約マージンだけでなく、他の商品も販売することで利益を確保しようとする意向が働いているのでしょう。ただ、知識や交渉力の面で格差がある消費者に対して、十分な理解や説明、合意を得ずに販売することは問題があります。

なお、携帯ショップの多くは通信会社の直営店ではなく代理店です。近年の法改正などでは、代理店に対する通信会社の指導監督責任が強化されました。また、2020年4月以降は、代理店自身も総務省への登録が義務化されます。こうした規制により、今後、携帯ショップで不正な勧誘行為がなくなることが期待されています」

Q.店員が強引に有料オプションサービスの契約や物品の購入をすすめてくる場合もあります。どのように対処すればいいのでしょうか。

池見さん「不要なら『いりません!』とはっきりと断りましょう。担当販売員の対応がおかしいのであれば、店の責任者に苦情を申し出てください。それでもだめなら、通信契約や機種変更の手続きの途中であっても、手続きを中断して店から退去してください。その後、契約する携帯通信会社のカスタマーセンターに電話し、苦情を申し出るのも有効です。

なお、販売員から聞いた説明は、できるだけその場でメモを取って記録を残しましょう。後日、トラブルを解決する際の資料になります」

Q.既に携帯ショップで高額な契約を結ばされた人は。

池見さん「ショップを監督する携帯通信会社に、できるだけ早く苦情を申し出てください。その場で、初期契約解除制度や確認措置制度で解約できる場合があります。なお、ご自身で交渉が難しい場合は、地元の消費生活センターへご相談ください。『消費者ホットライン(局番なし188)』に電話すると、最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してくれます。

消費生活センターでは、解決に向けての助言や、状況によって携帯通信会社へのショップ調査依頼などのサポートを行っていますので、相談する際は契約書を用意した上で、店の担当者とのやりとりや契約内容などを箇条書きでまとめておきましょう」

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池見浩(いけみ・ひろし)

消費生活アドバイザー・消費者考動研究所代表

インテリア商社で営業・お客さま相談窓口などを歴任する中、シックハウス症候群問題で企業と消費者とのギャップに強い疑問を持つ。退社後、消費生活アドバイザー資格を取得し、保険会社の苦情対応や法テラスコールセンターなどに従事。自治体の消費者啓発担当として、消費者被害防止の地域連携や市民向け講座講師、各種広報や講座企画等を経験後、行政の消費生活相談員として消費者相談にも従事。衣食住、法律、ライフスタイルなど消費生活全般、企業コンプライアンス、SDGsまで幅広く対応可能な消費生活の専門家として、行政の専門委員や企業の消費者志向コンサルティング、各種講座・研修講師、メディアでの情報発信など活躍中。消費者考動研究所フェイスブック(https://www.facebook.com/ShouhishaKoudou/)。

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