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通信販売の「満足できなければ全額返金します」は、どこまで信用できる?

テレビの通販番組などで紹介される商品の中には「全額返金保証」をうたうものがありますが、返金の基準をはっきりと示してくれないことがほとんどです。本当に全額返金してくれるのでしょうか。

「全額返金保証」って本当?
「全額返金保証」って本当?

 テレビの通販番組などで紹介される商品の中には、「購入後、満足いただけなければ購入代金を全額お返しします」という「全額返金保証」をうたうものがあります。しかし、番組の中で「全額お返しします」と繰り返し言われても、どれくらい満足できない場合に返金に応じてくれるのか、基準をはっきりと示してくれないことがほとんどです。本当に全額返金してくれるのでしょうか。消費生活アドバイザーの池見浩さんに聞きました。

曖昧な表現や設定では返金に応じないケースも

Q.店で商品を購入するとき、「満足いただけなければ購入代金を全額お返しします」とは言われないのが一般的です。なぜ、通信販売では「全額返金保証」のような制度が生まれたのでしょうか。

池見さん「通信販売は、実際に商品を自分の目と手で確認せずに、文章や画像、販売員の説明だけで商品を選びます。そのため、届いた商品が『イメージと違う』『説明通りではない』などのトラブルが起きやすい特性がある、リスクのある取引形態です。

その上、個々の業者が定めた返品ルール(特約)があれば、それに従うことになり、商品のイメージが若干違うなどの理由では、商品の欠陥や販売業者のミスとはならず、多くの場合は返品できません。

そこで、通信販売業者は消費者により安心して購入してもらうため、一定の条件内であれば、『全額返金』する特約制度を設けました。それが『全額返金保証』の成り立ちです。

なお、業者が定めた返品ルールがない場合は、特定商取引法によって、商品を受け取った日から8日以内であれば、送料自己負担で返品できます」

Q.「全額返金保証」と言われても、どれくらい満足できない場合に返金に応じてくれるのか、分かりにくいです。基準はあるのでしょうか。

池見さん「基準は、販売業者によってまちまちです。また、消費者一人一人の“満足度”は数値化が難しく、業界内で一律の基準を作ることも困難です。

そこで、多くの販売業者は、例えば『当社が指定した通りの使い方で、30日間毎日使用し…〇キロ以上の減量効果が見られない場合』など、返金するための細かな条件を設定しています。

中には、『商品を届けた際に同梱(どうこん)したパンフレットや書類も全て返送する』という条件を設定しているサプリメント業者などもあります」

Q.「全額返金保証」をうたう商品は、満足できなかったとき、本当に全額返金してくれるのでしょうか。さまざまな言い訳をして、客に返金を諦めさせることはないのでしょうか。

池見さん「基本的には、全額返金保証ができる条件を全てクリアしていれば、返金されるはずです。なぜなら、この条件は契約上の特約なので、販売業者側も守らないと契約違反になるからです。

ただし、中には『満足が得られなかった』状況をさまざまに解釈できるように、曖昧な表現や設定で条件付けしているケースも見られます。例えば、美肌効果をうたう化粧品で、『美肌効果を実感できない場合』と言われても、その『美肌になった』かどうかは、なかなか客観的に証明することが難しいケースもあります。

こうした場合は、販売業者と消費者の解釈・見解の違いとして返金されないリスクがあり、要注意です」

Q.「全額返金保証」は、使用済みの商品が返品されることに加え、全額払い戻さないといけないなど、売る側にとってデメリットしかないように思います。メリットは何でしょうか。

池見さん「1つ目は、『全額返金保証』の安心感により、注文数の増加が期待できるからです。特に、普段使い慣れていないジャンルの商品や、高額商品の場合、注文すること自体に勇気が必要です。『条件さえ合えば返金してもらえる』のであれば、注文がしやすくなります。

2つ目は、商品・サービスの良さをアピールできる点です。『満足できなければ全額返金保証』と言われると、『よほど品質や内容に自信があるのだろう』と消費者に思わせられます。また、保証することで『売りっ放し』ではない企業だと印象付けられ、『全額返金保証』制度がない他社との差異化も可能です。

3つ目は、満足できなかった購入者に、全額返金保証で対応すれば、苦情・不満を抑制できます。対応処理もその都度、消費者と協議せずにルールにのっとって処理できるため、時間や人件費などをコストダウンできるメリットがあります」

Q.通信販売で「全額返金保証」の商品を購入しようと考えているとき、注意すべきことを教えてください。

池見さん「まず、『全額返金保証』の条件や、返品・解約などの重要な特約は、必ず確認し保存してください。インターネットや新聞など文字媒体の通販は、隅々の細かい文字までしっかり読み込むことが大切です。特に、ウェブサイトや紙面の隅、別ページなどにある『特定商取引法に基づく表示』は確認してください。法律で義務付けられた、法人登記上の事業者名と住所、確実な連絡先、解約・返品など取引する上で重要な条件が記載されているはずです。記載がない場合は注文しないでください。

テレビやラジオの通販は、注文する前に必ず業者に電話で問い合わせましょう。その内容は、メモや音声録音で記録してください。少しでも疑問や不安が生じたら注文しない判断も重要です。

そして、注文して商品が届いたとき、梱包は丁寧に開きましょう。届いたときの箱や、同梱の説明書、チラシの返送も返金条件になっている場合があります。捨てないで保管してください。

返金保証期間中は、使用状況の記録メモを作成しましょう。『満足度合い』の具体的な根拠として、交渉に利用できる場合があります。もし、トラブルが発生したら、『消費者ホットライン』の『188』番で、近くの消費生活センターに相談してください」

(オトナンサー編集部)

池見浩(いけみ・ひろし)

消費生活アドバイザー・消費者考動研究所代表

インテリア商社で営業・お客さま相談窓口などを歴任する中、シックハウス症候群問題で企業と消費者とのギャップに強い疑問を持つ。退社後、消費生活アドバイザー資格を取得し、保険会社の苦情対応や法テラスコールセンターなどに従事。自治体の消費者啓発担当として、消費者被害防止の地域連携や市民向け講座講師、各種広報や講座企画等を経験後、行政の消費生活相談員として消費者相談にも従事。衣食住、法律、ライフスタイルなど消費生活全般、企業コンプライアンス、SDGsまで幅広く対応可能な消費生活の専門家として、行政の専門委員や企業の消費者志向コンサルティング、各種講座・研修講師、メディアでの情報発信など活躍中。消費者考動研究所フェイスブック(https://www.facebook.com/ShouhishaKoudou/)。

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