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ガラケーからスマホへ 「実際に使うと、思っていたのと違う!」、クーリングオフできる?

ガラケーを使っていた中高年の人が、「スマホに買い替えたけど、思っていたのと違った」という場合、クーリングオフはできるのでしょうか。

スマホをクーリングオフできる?
スマホをクーリングオフできる?

 新年度が始まる4月は、スマホを買い替える人が、1年の中でも多い時期です。特に今年は、「ガラケー」と呼ばれる従来型の携帯電話端末の一部が、使用停止となり始め、まずKDDIが3月末に電波送受信を停止したことから、例年よりもスマホに買い替える中高年以上の人が増えると思われます。そうした人はスマホを使い慣れておらず、「説明を受けてスマホを購入したけど、使ってみると思っていたのと違った」というケースもありそうです。「スマホに買い替えたが、思っていたのと違った」という場合、クーリングオフはできるのでしょうか。消費生活アドバイザーの池見浩さんに聞きました。

店舗購入の場合は原則不可能

Q.「クーリングオフ」について、改めて、具体的にどのような制度か教えてください。

池見さん「『クーリングオフ』とは、消費者が事業者と『不意打ちを食らって契約した』『複雑で分かりにくい取引の契約をした』場合に、熟慮期間を設けて、一方的に申し込みを撤回し契約を解除できる制度です。

一般的に、特定商取引法のクーリングオフ制度を指していて、突然の訪問販売や電話勧誘販売・訪問購入での契約、一定期間以上続けてサービスを受ける契約、具体的には、エステティックサロン、美容外科、家庭教師、学習塾、英会話、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの契約をした場合に、法律で決められた契約書面を受け取ってから8日間以内に書面を発信すれば、契約を解除できる制度です。内職商法やマルチ商法の契約は、同様に20日間以内の発信となっています。

クーリングオフの場合、事業者は返金・返品の費用を負担し、損害賠償や違約金を消費者に請求できません。使用中の商品や、既に受けたサービスがあっても、消費者はその対価を支払う必要はありません。

なお、店舗購入や通信販売は『不意打ち』ではないので、クーリングオフ制度自体がありません」

Q.「スマホに買い替えたけど、思っていたのと違った」という場合、クーリングオフはできるのでしょうか。

池見さん「今回、KDDIの3G回線の停波により買い替える人は、スマホ端末の購入と、4Gまたは5Gの通信回線の契約が必要です。端末は物品なので、突然の訪問や電話の勧誘で購入した場合、特定商取引法のクーリングオフが可能です。

ただし、店舗での購入や通信販売には適用されません。先ほど述べたように、店舗購入や通信販売は『不意打ち』ではないからです。通信回線の契約は、電気通信事業法が適用され、特定商取引法の対象外となり、クーリングオフ制度はありません。

なお、電気通信事業法には、クーリングオフに似た『初期契約解除制度』があります。消費者は、契約書面を受け取った日から8日間は、通信回線契約を書面で一方的に、違約金なしで解除できます。端末や関連製品などの物品は対象外です。

また、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクの3社と一部の通信会社については、初期契約解除制度に代わる『確認措置』があります。これは、『電波状態が悪い』『契約前の説明等が不十分』『契約書面を交付していない』のいずれかの問題があり、通信会社が認めれば、サービス提供開始から8日間以内なら、契約した通信回線と端末などの物品を違約金なしで解約できる制度です」

Q.契約後、スマホが思っているものと違った場合、我慢して使い続けるしかないのでしょうか。

池見さん「クーリングオフができない、ショップや通信販売でスマホ端末と通信回線を同時に契約した場合、8日間以内なら、初期契約解除制度で通信回線契約を解約するか、確認措置を行っている通信会社なら通信回線と端末の解約が可能です。

ただし、初期契約解除制度だと、端末の解約はできません。基本的には、購入したスマホを使っていくか、新たに買い直すことになります。確認措置も、3つの原因以外の問題の場合は、確認措置での解約はできません。消費者がよく確認しないまま契約し、自分自身の思い違いが原因の場合、特に端末は解約できないので注意が必要です。

なお、『店員に強く勧められ、強引に買わされた』など、販売側に問題がある場合は、別の方法で交渉も可能です。お近くの消費生活センターに相談してください。また、確認措置は、通信会社によって解約などの基準が異なる場合があります。契約書の説明書きやホームページなどで、必ずその通信会社のルールを確認しましょう」

Q.思っているものと違ったスマホの契約を解除できるとなったとき、契約から解除まで数日経過してその間も通話などでスマホをやむを得ず使った場合、そうした料金は支払わないといけないのでしょうか。

池見さん「初期契約解除制度の場合は、契約から解除までの通信料やオプション料金、SIMカード提供手数料や事務手数料、ナンバーポータビリティーの転出手数料を支払う必要があります。確認措置の場合も、契約から解除までの通信料や利用したオプション料金の支払いが必要です。ただし、事務手数料を通信会社が請求することはできません」

Q.スマホを買い替えるとき、どのような契約内容に注意すべきでしょうか。

池見さん「まず、契約するサービス・商品の内容をしっかり確認しましょう。端末の種類や機能、通信プランの種類と料金などは事前に調べて、自分の使い方と照らし合わせる考えることが大切です。例えば、電話の通話とeメール、SNSやウェブ検索を少し楽しむ程度なら、基本スペックのスマホと必要最小限の通信プランでも十分楽しめます。

そして、端末代金を分割払いにするか、一括払いにするかも、慎重に検討すべきです。分割払いは、支払期間の途中で機種変更しても残りの代金を支払わねばなりませんが、月々の負担は軽くて済みます。一方で、滞納すると個人信用情報へ記録されるリスクもあります。一括払いは、分割払いのような制約やリスクがありませんが、初期費用が高額になり、分割払いの場合に適用される割引サービスは利用できません。

最後に、他社との契約に乗り換えるときや、機種変更するときなど、解約や変更時のルールはとても重要です。必ず自分で確認し、理解してから申し込みましょう。総務省の『携帯電話ポータルサイト』では、消費者が質問などに答えながら、自分に合った端末のタイプや通信プランを調べることができます。今後、スマホの契約を考えている人は、ぜひお勧めです」

(オトナンサー編集部)

池見浩(いけみ・ひろし)

消費生活アドバイザー・消費者考動研究所代表

インテリア商社で営業・お客さま相談窓口などを歴任する中、シックハウス症候群問題で企業と消費者とのギャップに強い疑問を持つ。退社後、消費生活アドバイザー資格を取得し、保険会社の苦情対応や法テラスコールセンターなどに従事。自治体の消費者啓発担当として、消費者被害防止の地域連携や市民向け講座講師、各種広報や講座企画等を経験後、行政の消費生活相談員として消費者相談にも従事。衣食住、法律、ライフスタイルなど消費生活全般、企業コンプライアンス、SDGsまで幅広く対応可能な消費生活の専門家として、行政の専門委員や企業の消費者志向コンサルティング、各種講座・研修講師、メディアでの情報発信など活躍中。消費者考動研究所フェイスブック(https://www.facebook.com/ShouhishaKoudou/)。

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