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「自由」と「放任」の違い 放置され育った子はレジの前にお菓子を食べる

「自由に伸び伸び育てる方針だから、うるさく言わないようにしているの」という家庭があります。しかし、「自由に伸び伸び」と言いながら、「放任・放置」してはいないでしょうか。

食事のマナーや社会のルールは、親が教えるもの
食事のマナーや社会のルールは、親が教えるもの

 過保護・過干渉の親が増えている中、「うちは自由に伸び伸び育てる方針だから、うるさく言わないようにしているの」という家庭もあります。しかし、「自由に伸び伸び」と言いながら、実際は「放任・放置」してはいないでしょうか。

マナーやルールは親が教える

 放任・放置の子育てをしていると、次に挙げるような子どもになってしまうかもしれません。例えば、「スーパーの売り物のお菓子を、レジを通る前に食べる」「ママ友の家に遊びに行ったとき、勝手に冷蔵庫を開けてジュースを飲む」「図書館で借りてきた絵本に落書きをしたり破ったりする」「食事の好き嫌いをし、お菓子ばかり食べている」――。

 生後間もない赤ちゃんは「こういうふうにお乳を吸うんですよ」と誰から教わったわけでもないのに、おっぱいを吸って空腹を満たすことができます。

 首が据わる、寝返りを打つ、立つ…などの行動も「隣の赤ちゃんのまねをしよう」と思って奮起したわけではなく、親が「首が据わるように頑張りなさい!」「寝返りの練習をしましょう」と特訓したわけでもないのに、時期が来れば自然とできるようになります。本能に組み込まれた「生まれつきのシステム」です。

 一方で、「食卓の上に足をのせてはいけない」「いつまでも手づかみで食べていてはいけない」など、社会のマナーや文化、ルールは、しつけとして教えていかなくてはなりません。

「スプーンや箸などの道具を使って食べる。ただし、おにぎりやサンドイッチは手で食べてもよい」というのが日本における食事の文化ですが、実は世界の約4割の人々は「手食文化」であるといわれています。中には、「食べ物は神から与えられた神聖なものだから、食器を使わずに手で食べる」という国もあります。

 日本では、4歳を過ぎても手で食べていると「しつけができていない子」とみられ、本人が恥ずかしい思いをする上、周りの人も不快にします。そのため、2歳近くになってくるとスプーンやフォークを使う練習をさせます。このように、人間は社会のルールや国の文化を本能的に持って生まれてくるわけではなく、親が教える必要があります。「放っておけば自然に学ぶ」ということはありません。

求められる「見守る忍耐力」

 もし、本能の赴くままに「何をしても自由」とほったらかしていると、物事の善悪が分からない“野獣のような子”に育ってしまいます。ルールのないゲームが「ゲーム」として成り立たないように、一定の枠組みのない自由は社会では認められません。

 幼稚園や保育園でも、「一斉保育」を主とする園、「自由保育」を主とする園がありますが、どちらの園も、給食の時間は椅子に座らせ、朝や帰りの会のときは部屋にとどまるように教えます。自由時間には、子どもたちのけんかも頻繁に起こります。保育者には、子どものコミュニケーション能力を育むために、介入し過ぎないように見守る忍耐も求められます。

 家庭でも同じです。子どもを自由にさせることは、親が手取り足取り指示を出す過保護・過干渉の、何倍もの忍耐力が求められます。なぜなら、子どもが失敗しそうなときも、自ら考えさせるために手や口を出さずにじっと観察し、見守っていなければならないからです。

 遅刻しそうなときも「早く、早く」と言わず、子どもに「遅刻する」という失敗体験をさせて時間管理を学ばせたり、着る服一つ選ぶときも子どもの意思を尊重したりするなど時間がかかります。親が「こうして、ああして」とあれこれ指示をした方が早い上、親の思い通りになるのですから、その方がずっと楽かもしれません。

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。著書は「1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ」「はずれ先生にあたったとき読む本」「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」など多数。ノンフィクション「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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