駆け込み増える? 違反したら? 有給5日義務化もうすぐ1年、専門家に聞く
有給休暇の最低5日取得が義務化されて間もなく1年。3月31日に向けて「駆け込み取得」が増えそうですが、実は「3月末が期限ではない」人もいるようです。
有給休暇の最低5日取得が義務化されて間もなく1年を迎えます。3月31日に向けて「駆け込み取得」が増えそうですが、有休付与の基準日は人それぞれなので、実は「3月末が期限ではない」人もいるようです。
一方で、「3月が期限だから」と社員に無理やり有休を取らせようとしたり、もともと社休日だった土曜や祝日を形式的に出勤日にしたりして、その日に有休を取らせる会社もあるようです。
「有給取得義務」の実際と施行1年を控えた動きについて、社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。
4月以降が期限の人も
Q.有休5日取得義務について、改めて教えてください。
木村さん「国は『働き方改革』の中でワーク・ライフ・バランスの実現を推進していますが、その具体策の一つが、年次有給休暇(以下「有休」)の取得率向上です。2018年現在、企業における有休取得率は約50%にとどまっており、取りにくい状況となっています。
そこで、労働基準法の改正を行い2019年4月から、すべての企業において、年10日以上の有休が付与される労働者を対象に、有休の日数のうち年5日については使用者が時季を指定して取得させることが義務となりました。
なお、労働者自身が希望して有休を取得した場合や、労使協定で計画的に決めた有休(計画年休)がある場合は、それらの日数と合わせて5日になれば、取得義務を果たしたことになります。
ここでいう『企業』とは法人、個人事業所すべてを指すものであり、また、従業員数や資本金などの規模は関係なく適用されます。『労働者』とは、正社員だけでなく、管理監督者(管理職)やパート、アルバイト等の非正規社員や派遣社員も含まれます。
この法律は、違反をした場合罰則があり、対象となる労働者1人につき30万円以下の罰金が企業側に科せられるという厳しい内容となっています」
Q.改正法施行から3月31日で1年がたつため、「駆け込み取得」の動きがあるようです。すべての従業員が3月31日までに、5日間有休を取らないといけないのでしょうか。
木村さん「法律には、使用者は労働者ごとに、有休を付与した日(基準日)から1年以内の5日について、取得時季を指定して有休を取得させなければならないとあります。
改正法は2019年4月に施行されましたが、その後、最初の基準日から、有休を取得させる義務が発生します。例えば、4月1日入社の人で10月1日が有休付与日(基準日)の場合は、翌年9月30日までに5日間の時季を指定して有休を取得させればよいことになります。2019年7月1日が基準日の人の場合は、2020年6月30日が期限です。
従って、5日間の有休を取得させる義務の期限は、すべての従業員が3月31日というわけではありません」
Q.中途採用が多い企業の場合、有休付与日がまちまちだと企業側の管理が大変ではありませんか。
木村さん「労働者ごとの有休管理の煩雑さを軽減するため、基準日を年始や年度初め、月初に統一する方法があり、多くの企業で採用されています」
Q.有休消化のため、実際は勤務しているのに有休扱いにしてタイムカードを押させないようなことを会社が行った場合、どうなるのでしょうか。3月を前に、そういう企業は増えているのですか。
木村さん「実際は勤務しているのに、有休扱いとするために出退勤記録を残さない行為は、実態として有休を与えていないため法律違反です。3月を前にして、従業員に5日の有休を与えていない企業が、そのような方法で有休の駆け込み取得を行わせることも考えられますが、2019年4月に施行されたばかりの改正法なので、実態は2020年4月以降に判明してくると思います」
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