親の「ちゃんとやらなきゃダメ」という否定が子どもに及ぼす3つの弊害
職場の同僚には優しくても、家族、特に子どもには、つい厳しい言葉を投げてしまうことがあります。悪気はなくても、ささいなことの積み重ねで親子関係は冷え切ってしまいます。

もし、職場で誰かがコップを落として割ったら、あなたは「大丈夫? けがはない?」と聞いて、コップのかけらを拾ってあげるでしょう。でも、もし家庭で子どもや夫、妻がコップを割ったら、「何やってんの! 気をつけなきゃダメでしょ」と言ってしまう人が多いのではないでしょうか。
職場の人間関係より家族の方が重要
もし、職場の同僚が「企画書なんて、ああ、やる気が出ない」と愚痴ったら、「面倒くさいよね。ホント、嫌になっちゃうよね」と共感するでしょう。でも、子どもが「宿題なんて、ああ、やる気が出ない」と愚痴ったら、「どんどんやらなきゃダメでしょ」と門前払いする人が多いのではないでしょうか。
そして、夫や妻が「仕事の書類が面倒くさくてたまらない」と愚痴ったら、「仕事なんだからしょうがないじゃん」と同様に門前払いする人が多いと思います。
もし、職場の誰かがエクセルをうまく使えなかったら、あなたは教えてあげるでしょう。たとえ、同じことを何度聞かれても気持ちよく教えてあげるはずです。でも、子どもが勉強で分からないことがあって何度も同じことを聞いてきたら、「さっき教えたでしょ。ちゃんと聞いてなきゃダメでしょ」と言ってしまうかもしれません。
このように、私たちは職場の人間関係は大事にするのに、親子や夫婦の関係はそれほど大事にしていません。でも、これは間違っています。なぜなら、職場の人間関係より家族の人間関係の方がはるかに大切だからです。
家族とは、例えば親子、夫婦、兄弟、祖父母などです。職場の人間関係は一過性のものに過ぎず、しかも一面的です。それに比べて、家族の人間関係はより長く、かつ多面的です。
家族は、長い人生の大事な時間を共に過ごす極めて大事な人たちです。人生の喜びも悲しみも分け合って生きていく、かけがえのない同伴者です。中でも、親子関係は大事です。なぜなら、親子関係の善しあしは子どもに多大なる影響を与えるからです。
子どもは親の言葉から多大なる影響を受けます。親が「また○○してない。なんで○○しないの。ちゃんとやらなきゃダメでしょ」などと否定的な言葉で叱っていると、子どもには数多くの弊害が出てきます。
1つ目。
子どもは「自分はダメな子だ」と感じて自己肯定感が持てなくなります。すると、勉強、運動、生活習慣など、何事においても「できるはずだ。頑張ろう」と思えなくなり、向上心や努力する心が失われてしまいます。
2つ目。
子どもは「お父さん、お母さんは自分のことをダメな子だと思っているみたいだ。もうこんなダメな自分は大切にされていないな。愛されていないんだ」と感じてしまいます。そして、親の愛情を確かめるために、危険なことや反社会的なことをするようになります。それによって親が心配する姿を見て、「心配してくれている。まだ愛されている。よかった」と感じたいのです。これが愛情確認行動です。
3つ目。
親が否定的な言葉で叱ってばかりいると、子どももそういう否定的な言葉を身につけてしまいます。親が関西弁なら子どもも関西弁になり、親が東北弁なら子どもも東北弁になります。同じように、親が否定語弁なら子どもも否定語弁になるのです。否定的な言葉が多いと、いろいろな人間関係がうまくいかなくなります。
肯定的な言葉が多いと、周りの人から好かれて人間関係が良くなります。子どもが良い人間関係を築けるようにしてあげたいなら、親自身の言葉遣いを直すことから始める必要があります。
3つの事例を挙げましたが、この他にも数多くの弊害が出ます。詳細については、以前筆者が書いた記事(「忙しい朝に『何してるの!』 親の“不愉快な言葉”が子どもにもたらす7つの弊害」2019年10月14日掲載)で紹介しています。
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